「第9回尼崎ボウル」(以下尼崎ボウル)が、6月23日(日)にベイコム陸上競技場で開催されることが決定。競技だけでなく演出面にまでこだわった、アマ(=兵庫県尼崎市)のアメフト祭りが今年もやってくる。 昨年までの同大会実行委員長で今季からクラブ…

「第9回尼崎ボウル」(以下尼崎ボウル)が、6月23日(日)にベイコム陸上競技場で開催されることが決定。競技だけでなく演出面にまでこだわった、アマ(=兵庫県尼崎市)のアメフト祭りが今年もやってくる。

 

昨年までの同大会実行委員長で今季からクラブGMとなった川口陽生氏に、同イベントの更なる進化について語ってもらった。

 

「順調なら来年は10回目の記念大会を迎えるので、勢いを付けるためにも色々と考えています」と川口GMは自信を感じさせる。

SEKISUIチャレンジャーズとなって初の尼崎ボウルだけに、例年以上のこだわりがある。

~尼崎ボウルを通じてアメフトの社会的価値を生み出す

尼崎ボウルはアメフト・XリーグSUPER(1部)所属のSEKISUIチャレンジャーズ(以下チャレンジャーズ)が主催する無料イベント。2014年に第1回大会が始まり、途中コロナ禍での中止もあったが22年からスケールアップして戻ってきた。今年は京都大学ギャングスターズを迎え、社会人と学生の交流試合が行われる。

 

「ベイコム陸上競技場は関西アメフト人にとって聖地的場所だったが、近年はアメフトでの使用頻度が激減していた。『将来的に本拠地にしたい』と中長期スパンで考え、尼崎ボウルを始めた部分があったと聞いています」

 

「10年以上の時間をかけて尼崎市との関係性も強固になりました。行政、企業、市民の多くの方々から協力していただいています。同時にチームとしての方向性も明確になっています」

GM川口陽生氏(前列左から2番目)は尼崎の方々との良好な関係を第一に考える。

地域イベント参加や小学校でのフラッグフットボール教室等、継続的な活動を続けた結果、2020年10月にチャレンジャーズと尼崎市は包括連携協定を締結した。幅広い分野で協力して地域活性化や市民サービス向上を目指す提携は市として3番目のケース。実質の本拠地となったことでより深い関係性となった。

 

「地域貢献を通じての社会的価値を生み出すことが大事で、尼崎ボウルはそのための重要なイベントです。アメフトをやれることは当たり前ではなく、何かしらの存在価値がないといけない。そのためにも常に挑戦を続ける必要があります」

 

「プロチームはお金を払ってくれるファンのため、企業チームは親会社のためにプレーする。どちらでもないクラブチームは、何らかの形で地域還元しなければならないと思います。そこは普段からチーム全員にしっかり理解してもらうようにしています」

アメフトを通じて非日常を感じてもらうことは地域貢献活動の1つだ。

~アマで体感できるホンモノのアメフト

尼崎ボウルも地域貢献活動の1つだ。アメフトを通じての娯楽を提供することで、会場に集まってくれた人々を笑顔にすることを目指す。コロナ禍後からは「見たくないか?ホンモノを。」を大会スローガンに掲げている。

 

「最初に決めたのは米国さながらのエンタメ性にあふれた試合演出を行うことでした。本場に匹敵するスケールのものをアマで無料で楽しめる。日頃のストレス解消ができると同時にチャレンジャーズに興味を持って欲しいからです」

 

「尼崎市の生活保護受給率などは全国的に見ても高い状態でヤングケアラーの問題も多く存在すると聞きます。厳しい状況下にあるホームタウンに対し、まずは『アメフトを通じて楽しい時間を過ごしてもらうことから始めよう』と思っています」

フィールド脇に設置された大型ビジョンは尼崎ボウルの名物となっている。

フィールド脇に220インチのビジョンを設置、特殊効果演出を用いて派手な選手入場を演出。尼崎双星高吹奏楽部の演奏とアマ出身のお笑い芸人・矢野兵動の矢野パイセンがマイクで場内を盛り上げる。そしてローカル(地元)のレゲエ・アーティストTHUNDER(トンダ)のパフォーマンスでは会場内ボルテージは一気に高まった。

 

「エンタメを充実させてから、2年続けて2,500人以上のお客さんが集まってくれました。それだけ多くの観客の中での試合はできるものではないので選手たちも感動していた。そしてアマの皆さんが楽しんでくれているのが我々にも届いてきました」

尼崎双星高吹奏楽部の演奏は大会を一段と盛り上げてくれる。

~ようこそ積水化学工業、ありがとうアサヒ飲料

今季開幕前にはチームにも大きな変化があった。メインスポンサーがアサヒ飲料から積水化学工業となり、「SEKISUIチャレンジャーズ」が誕生した。

 

「まずは1993年から30年に渡りスポンサーを務めていただいたアサヒ飲料様には感謝しかありません。強かった時代もありますが近年ではXリーグAREA(2部)だったシーズンもありました。どんな時も手厚いサポートをしてくれて今後も側方支援をしていだけます」

 

「積水化学工業様には頭が上がりません。日本全体が不景気でアメフト人気自体も低迷している時代に手を挙げていただけた。『広告的価値を超える社会的価値を感じた』と言ってくださったのも心に沁みました。尼崎市でやっていることの重要性を改めて感じています」

 

チャレンジャーズが地道に行ってきた地域貢献活動を見ている人がいた。アスリートとしてのプレーはもちろん、ロールモデル(=社会的規範)でいることの重要性を改めて感じさせる。

 

「欧米のプロスポーツチームで選手が尊敬されるのは社会貢献の意識を持っているからです。地元チームの活躍に憧れを感じてスポーツに打ち込むことで道を踏み外さない子供もいます。チャレンジャーズはアマの人たちが憧れる存在になりたい。挑戦を続ける姿勢を見て何かを感じてもらえれば嬉しいです」

チャレンジャーズは尼崎の子供たちが憧れるロールモデル(=社会的規範)でありたい。

~アマには阪神とチャレンジャーズがある

「SEKISUIチャレンジャーズ」となって初の尼崎ボウルへ向けて準備は着々と進んでいる。

 

「皆さんが喜んでくれたことは継続しながら、新しいものも取り入れて挑戦したいと思います。演出やイベント内容等、詳細がわかり次第、チャレンジャーズSNS等で最新情報をお知らせしますので、ぜひご確認ください。初夏の1日を楽しんでいただけるはずです」

尼崎ボウルでアメフトの楽しさやチャレンジャーズの存在を知って欲しい。

地域密着と言うのは簡単だが、実際に形にするのは困難を極める。チャレンジャーズが地道に行っている活動は、間違いなくアマの街に根付き始めている。

 

「アマにはNPB・阪神のファーム施設がまもなく完成します。でもチャレンジャーズがいることも忘れないでください。野球とは全く違った楽しさがアメフトにはあるので、両方を楽しんで応援してくれるような魅力あるチームを目指します。まずは尼崎ボウルに期待してください」

 

6月23日(日)は尼崎市・ベイコム陸上競技場に集合だ。アメフトを通じて一足早い夏を楽しめるのは間違いない。そしてチャレンジャーズが挑む新たな価値の創造、あらゆる分野に「挑戦」し続けるというチームカルチャーを感じられるはずだ。

 

(取材/文/写真・山岡則夫、取材協力/写真・SEKISUIチャレンジャーズ)