伊藤園レディス(千葉・グレートアイランド倶楽部)で今季4勝目(ツアー通算5勝目)を挙げた山下美夢有が、残り2戦を残して年間女王の座に就いた。今年から賞金額ではなく、メルセデス・ランキングによって女王が決まるレギュレーションに移行したが、2…

 伊藤園レディス(千葉・グレートアイランド倶楽部)で今季4勝目(ツアー通算5勝目)を挙げた山下美夢有が、残り2戦を残して年間女王の座に就いた。今年から賞金額ではなく、メルセデス・ランキングによって女王が決まるレギュレーションに移行したが、21歳103日での戴冠は史上最年少である。

「この試合は、本当に優勝したい、という気持ちが強くあった。だけど、その気持ちは抑えて、しっかり切り換えて楽しめた。(年間女王は)プロテストに合格してから目標ではあったので、達成できてよかった。

(最近は)たくさん応援してくださる方が増えたなと思っている。今後も技術のレベルアップという目標はありますけど、ファンを増やしたい。たくさんのギャラリーのみなさんに応援されると、私自身も強い気持ちで戦えるので」



伊藤園レディスを制して、年間女王に輝いた山下美夢有

 通算13アンダーで単独首位に立っていた上田桃子、プロ11年目の岸部桃子と最終組で回った最終日は、通算11アンダーでスタートしたものの、14番までスコアが動かず我慢のゴルフが続いた。そして、15番のロングホールで岸部とともにバーディーを奪って上田に並び、16番パー4で上田が、17番パー3で岸部がスコアを落として脱落する。

 迎えた最終18番、山下は3mのパーパットを残したが、上りのフックラインを見事に決めて逃げきった。

「風が強かったので、耐えてチャンスがくるまで待とうと思って今日はラウンドしました。(ウイニングパットは)本当に緊張しました。今日のラウンドではショートすることが続いていたので、最後は思い切って打とうと」

 今季序盤には3戦連続予選落ちを経験したが、直後にワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップを制して国内メジャータイトルを獲得した。以降は好調を持続し、さらに3勝を上乗せした。その要因として、山下が第一に挙げたのが体重管理だ。

「後半戦に入ってからも、開幕戦と変わらない体重で戦えたことが一番大きい。食べる量はもちろん、何を食べたらいいのか、考えながら食事をしています。後半に入って栄養士さんにしっかり見てもらっていたので、(疲労なく)強い体で戦えた」

 大好きだった揚げ物やラーメンを、試合前には控えるようになった。

「栄養士さんに『プレーに影響する』と言われたので、『わかりました』と(笑)。でも、しっかり量は食べていました」

 練習でも質にこだわった。

「去年までは長く時間を使って、あまり意味のない練習も結構やっていた。今年はスタッツをしっかり見て、ラウンド後に悪かったところを父と分析しながら、課題を持って練習に臨むことができた。オンとオフをしっかり切り換えて、やるときはやる、休むときは休む。それが好結果につながったと思います」

 5歳の頃に一緒にゴルフを始めた父・勝臣さんの存在も大きかった。ゴルフの研究に熱心で、誰よりも山下のゴルフを理解するコーチの役割も担っている。

「自分が悪くなった時に明確に指摘してくれて、修正してくれる。昔からお父さんがいなくても、しっかり自分で修正ができるような教え方もしてくれていた。お父さんがいることで、私も安心できるし、これからも親子で頑張りたい」

 今季の年間獲得賞金も2億円を突破したが、「自宅に家族がそろうことがなかなかない。(オフには)みんなでゆっくりしたいです」と家族思いの素顔をのぞかせる山下。女王となっても自然体で戦い続ける――、タイガー・ウッズに憧れ続けてきた21歳の言葉には、そんな決意が込められていた。