2009,10,14,15と、ボルダリング・ワールドカップ年間総合優勝を4度達成したプロフリークライマーの野口啓代に、第一線で戦うアスリートを取材してきたスポーツライターの田中夕子が独占インタビューを敢行。4回に分けてお送りする。第一弾では…

2009,10,14,15と、ボルダリング・ワールドカップ年間総合優勝を4度達成したプロフリークライマーの野口啓代に、第一線で戦うアスリートを取材してきたスポーツライターの田中夕子が独占インタビューを敢行。4回に分けてお送りする。

第一弾では、ワールドカップ年間総合優勝4回の秘訣、そして世界女王の卓越した能力に迫る。

野口啓代(のぐちあきよ):TEAM au所属のプロフリークライマー。小学6年生でクライミング始め、わずか1年で全日本ユース選手権優勝。その後も2008年度から新設されたリード・ボルダリング・スピードの総合成績でランク付けを行う、クライミングワールドカップ・オーバーオール部門で初代女子チャンピオンに輝く。更には2009,10,14,15と、ボルダリング・ワールドカップ年間総合優勝を4度達成。誰もが認める世界女王だ。

 

田中>
はじめまして、こんにちは
 
野口>
はじめまして、こんにちは。よろしくお願いします。
 
(握手をする)
 
田中>
痛い、痛い、痛い!!
 
野口>
ごめんなさい。笑
 
田中>
やっぱり、すごいですね。見た目は華奢ですけど。
 
(野口選手の握力は55kgで、一般女性のおよそ2倍)
 
野口>
強く握りすぎちゃった。笑
 
田中>
さすが世界のあアスリートの握力でしたね。
 

 

クライマー野口啓代のワールドカップ年間総合優勝4回の秘訣

田中>
ワールドカップで年間4回優勝されてるんですけども、ご自身で自分の強さっていうのがどういうところに理由があると思いますか?
 
野口>
2009年10年と14年15年にワールドカップを取ってるんですけど、その間の11年12年13年はずっと年間ランキングが2位で、またその後優勝できるようになったという感じなんですが、何かやっぱり一番はワールドカップとか、大会が一番好きです。
 
田中>
大会が一番好き?
 
野口>
子供の頃からずっと国内大会に出ていて、高校1年生になる16歳から世界の大会に参戦しはじめたんですけど、やっぱり大会が楽しくて大会に出るためにとか、大会で優勝するために、毎日練習を頑張れるっていうのがあったので、やっぱり大会が一番好きなことがだと思います。
 
(日本山岳協会選手強化委員会ボルダリング日本代表ヘッドコーチの安井博志に聞いた。)
 
安井>
彼女の凄さはいつもモチベーションを上げて来られることですね。シーズン前になると。これはやはりクライミングという競技そのものが本当に好きだと思うんですね。
多くの同世代の選手達っていうのはもう一線から退いていまして、彼女が世界の中でも一番ベテランになるんですが、それでもまだ進化し続けているというところは、本当に素晴らしいと思います。
これは本当に繰り返して言いたいところですね。
 

 

野口啓代が語るクライミング競技3つの魅力

田中>
クライミングの競技を野口さんの方から詳しく教えていただきたんですけど。
 
野口>
現在は、ワールドカップでは3種目行われてまして、一つ目は高さ15メートル位の壁を登るリード種目というもので、そちらは全選手がハーネスを履いて、ロープを自分でカラビナと呼ばれる安全を確保する器具にかけながら登っていきます。
高さを競うので、本当にいかに上まで登れたかで順位を決めます。
ボルダリング種目の方は、大体高さ5メートル以下の壁で行われるんですが、決勝であれば4課題を登って、その4課題中、何課題登れたかで順位を競います。
全然違う課題が用意されているので、色んなムーブとか色んな動きをこなせないと、なかなか登れないですね。
もう一つはスピード競技と言って、本当に単純に15メートルの壁を速さを競うんですが、全世界、同じホールド、同じ壁、同じ傾斜でホールドの向きまで決められているので、陸上競技とか水泳競技と同じで、普段練習したのを本番で全く同じ壁で、良いタイムを出せた人が勝てるっていう本当に速さを競う競技です。
 
田中>
改めて聞くと面白いですね。
 
野口>
全部できないとトップになれないので、本当に速さもそうですし、長さとか持久力もそうですし、あとは課題の難しさであったり、攻略、全部求められます。
 

 

クライミング世界女王野口啓代の卓越した能力

田中>
指懸垂、実際に見せていただいてもよろしいでしょうか?
 
野口>
はい、もちろんです。
 
安井>
やはり身体能力は突出している部分があります。特に指先の力は類い稀なところがあります。
しかも彼女は普通3本位かかれば、結構安定するって言われるものに対して、2本になっても、ましてや1本になってもしっかりと捉えてるんですね。驚きます。
 
(時には指先に全体重をかけることを要求されるクライミング。指先がホールドにかかれば体を安定させることのできる彼女の指先の力は驚異的である。)
 
野口>
これ自体が第一関節だけで、ぶら下がって。
 
田中>
すごいですね、指だけですもんね。
 
野口>
そうですね、指だけを鍛えるものなので。例えばここから。
 
田中>
これ皆できるものなんですか?
 
野口>
やっぱりある程度やってないとできないですし、ちょっとずつやっていかないと指も怪我しちゃうので。
 
田中>
そうですよね、普通の懸垂とまた違う。
 
野口>
そうですね、本当に第一関節しかかかっていないので、指の力ともちろん、背中とか肩とか全部使うんですけど。
 
田中>
見せていただくと本当にすごいですね。やられている方からしたら普通のことかもしれないですけど。
 
野口>
そうですね、なかなか指の本当第一関節とか、指先まで使うスポーツって、クライミング以外ないので、クライミングの何か特徴だと思います。
 
田中>
手ってちなみに見せて頂いても良いですか?
 
(野口が手を出す)
 
田中>
指紋がないんですか。
 
野口>
そうですね、トレーニング中なので指皮がないですね。
 
田中>
さすが、世界で戦う手って気がしますね。でもこっちだけ見てるとアスリートですけどやっぱい女性らしく、赤がお好きな。
 
野口>
赤は勝負カラーなんです。