日本時間3月8日(月=アメリカ時間7日)にジョージア州アトランタで開催される第70回NBAオールスター・ゲームは、例年とは異なる意味合いを持ちあわせた祭典となる。試合進行は昨年の流れを踏襲するが、今年はイベント開催を通じて…

 

 日本時間3月8日(月=アメリカ時間7日)にジョージア州アトランタで開催される第70回NBAオールスター・ゲームは、例年とは異なる意味合いを持ちあわせた祭典となる。試合進行は昨年の流れを踏襲するが、今年はイベント開催を通じて歴史的黒人大学(Historically Black Colleges and Universities =以下HBCU)と、新型コロナウイルスのパンデミックで他のコミュニティーと比べ不釣り合いなほど強い影響を受けている有色人種のコミュニティーへの支援を表明しているのだ。
 NBAはさまざまなコミュニティーに向けた尊い支援を長年行ってきたが、コロナ禍の昨年から今年にかけて全米各地で勃発した人種差別をはじめとした社会的不正とそれに対する抗議運動の広まりの中で、今回NBAはオールスター・ゲームを上記の支援に注力する意思表示のプラットフォームとして明確にしたのである。同時に今回のNBAオールスター・ゲームは、バスケットボールを通じて社会的正義とは何かを考える機会をファンに提供している。
 しかもそのような特別な意味合いを持つオールスター・ゲームが、今年もまた非常に見ごたえのあるイベントになりそうなのだ。それぞれのイベントにおける勝負が社会的支援の額に直結する仕組みになっており、プレーヤーたちが本気で勝ちにいくような構成になっている。以下、それぞれのイベントをコミュニティー支援の観点からまとめてみたい。

 

2021NBAオールスター・ゲームのフォーマットとルール

 

〇最初の3つのクォーター
1) 12分間のクォーターそれぞれで勝敗を競う。多く得点した方が勝ちチームとなる。
2) 各クォーターとも0-0から始まる。ただし3つのクォーターの合計得点も意味を持つ。
3) 各クォーターの勝者は150,000ドルのチャリティー基金を勝ち取る。
4) 同点だった場合は75,000ドルずつ両チームで分ける
5) 各クォーターともジャンプボールによって開始される
6) 各クォーターの最後の2分間は通常の試合における第4Qのルールが適用される。
7) 各クォーターで両チームに2つずつタイムアウトが与えられている(使わなかった場合次のクォーターに持ち越されない)。
8) 各クォーターとも6分59秒、2分59秒を過ぎた段階でいずれのチームからもタイムアウトの請求がない場合、その後最初に試合が止まった時点でオフィシャル・タイムアウトとなる。
9) このほかは通常の公式戦同様のルールが適用される。

 

〇最終クォーター(第4Q=ファイナルターゲットスコア制)
1) ターゲットスコアに最初に到達したチームが試合の勝者となる
2) ファイナルターゲットスコアは、最初の3つのクォーターの点数合計で上回っていたチームの合計点に24点を加えた点数とする(仮にチーム・レブロンが100-95でリードして最終クォーターを迎えたとすると、ファイナルターゲットスコアは124点となり、どちらかのチームが124得点に達した時点で試合終了となる)。
3) 最終クォーターは両チームとも最初の3クォーターの合計点からスタートする。
4) 最終クォーターには時間制限はない(24秒ショットクロックは適用される)。
5) 試合全体の勝者には300,000ドルがチャリティー基金として与えられる。
6) 最終クォーターの始まりは、最初の3つのクォーターの合計点が少なかったチームがボールを保持し、インバウンドで開始される。もしも同点だった場合にはジャンプボールで開始される。
7) タイムアウトは両チームに2つずつ与えられ、オフィシャル・タイムアウトはない。
8) リードしているチームがファイナルターゲットスコアまで8点となった時点以降には、通常の試合における第4Qの最後の2分間ルールが適用される。
9) この時点以降、成功したフィールドゴールが2点だったか3点だったかを判断するインスタント・リプレーの権限と、ショットクロック違反のインスタント・リプレー権限を持つのはコート上のレフェリーだけとする。
10) このほかは通常の公式戦同様のルールが適用される。

 

 上記のフォーマットとルールで進行されるオールスター・ゲームとその他のアトラクションを通じて、以下のような形で総額3,000,000ドル(1ドル108.4円換算で約3.25億円)のチャリティーが行われる。支援はサーグッド・マーシャル・カレッジ基金(Thurgood Marshall College Fund =TMCF)、黒人大学基金連合(United Negro College Fund=UNCF)、全米機会均等協会(National Association for Equal Opportunity =NAFEO)、そしてダイレクトリリーフ(Direct Relief、社会的弱者への医療サービス提供を支援する非営利団体)の公正医療基金(Fund for Health Equity)を通じて、冒頭で記したHBCUと大きな課題に直面しているコミュニティーに向けて行われる。

☆NBAオールスター・ゲームによる社会的支援の内訳

・チーム・レブロンが勝ち得たチャリティー基金はTMCFに、チーム・デュラントのそれはUNCFに贈られる。
・TMCFとUNCFはどちらも、試合開始前の段階で500,000ドルずつの寄付を受け取る。試合の最初の3クォーターでそれぞれ勝った方のチームが支援する団体に150,000ドルずつ(合計450,000ドル)が贈られ、最終的に試合に勝った方の団体はさらに300,000ドルを受け取る。その総額は1,750,000ドルとなる。


例)試合前段階で両団体に500,000ドルずつ寄付(合計1,000,000ドル)
 第1Qチーム・レブロン勝利→TMCFに150,000ドル寄付(合計1,150,000ドル)
 第2Qチーム・デュラント勝利→UNCFに150,000ドル寄付(合計1,300,000ドル)
 第3Qチーム・レブロン勝利→TMCFに150,000ドル寄付(合計1,450,000ドル)
 試合にチーム・デュラント勝利→UNCFに300,000ドル(合計1,750,000ドル)

 このケースならばTMCFに800,000ドル、UNCFに950,000ドルが寄付されることになる。

 

 NBAオールスター・ゲームと当日のその他のイベントに出場するプレーヤーの顔ぶれは、故障などのため当初の発表内容から若干の変更が出ている。3月5日に行われたドラフトとその後の故障欠場対応後の最終的なロスターは以下のとおりだ。

 

チーム・レブロン
スターター: レブロン・ジェームス(ロサンジェルス・レイカーズ/選出17回目)、ヤニス・アデトクンポ(ミルウォーキーバックス/選出5回目)、ステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ/選出7回目)、ルカ・ドンチッチ(ダラス・マーベリックス/選出2回目)、ニコラ・ヨキッチ(デンバー・ナゲッツ/選出3回目)

リザーブ: ディミアン・リラード (ポートランド・ブレイザーズ/選出6回目)、ベン・シモンズ(フィラデルフィア・セブンティシクサーズ/選出3回目)、クリス・ポール(フェニックス・サンズ /選出11回目)、ジェイレン・ブラウン(ボストン・セルティックス/初選出)、ポール・ジョージ(ロサンジェルス・クリッパーズ/選出7回目)、ドマンタス・サボニス(インディアナ・ペイサーズ/選出2回目)、ルディ・ゴベア(ユタ・ジャズ/選出2回目)
※サボニスはケビン・デュラント(ネッツ/選出11回目)に代わる選出

 

チーム・デュラント
スターター: カイリー・アービング(ブルックリン・ネッツ/選出7回目)、ジョエル・エンビード(フィラデルフィア・セブンティシクサーズ/選出4回目)、カワイ・レナード(ロサンジェルス・クリッパーズ/選出5回目)、ブラッドリー・ビール(ワシントン・ウィザーズ/選出3回目)、ジェイソン・テイタム(ボストン・セルティックス /選出2回目)
※テイタムはキャプテンのデュラントが故障欠場のためリザーブからスターター入り

リザーブ: ジェームス・ハーデン(ブルックリン・ネッツ/選出9回目)、マイク・コンリー(ユタ・ジャズ/初選出)、ザイオン・ウィリアムソン(ニューオリンズ・ペリカンズ/初選出)、ザック・ラビーン(シカゴ・ブルズ/初選出)、ジュリアス・ランドル(ニューヨーク・ニックス/初選出)、ニコラ・ブチェビッチ(オーランド・マジック/選出2回目)、ドノバン・ミッチェル(ユタ・ジャズ/選出2回目)
※コンリーは故障欠場のアンソニー・デイビス(ロサンジェルス・レイカーズ)に代わって選出されたデビン・ブッカー(フェニックス・サンズ)も故障欠場となったことにより出場決定


☆AT&Tスラムダンク


・出場する3人のパフォーマーたちは、それぞれがパンデミックによる悪影響と直面している特定のHBCUと紐づけられている。
・それぞれパフォーマーが代表するHBCUは50,000ドルの寄付を得、優勝したパフォーマーのHBCUにはさらに100,000ドルが贈られる。
・AT&Tは上記と別に100,000ドルを用意し、優勝者が代表するHBCGに40,000ドル、それ以外の2人に紐づくHBCUに30,000ドルずつを寄付する。

 

 AT&TはNBAオールスター・ゲームの試合中のすべてのダンク1本につき5,000ドルの寄付を、TMCFを介して行う(この企画には英語の“Five Grand(5,000ドル)”と通信業界用語の“5G”とをかけ、「5G」というタイトルが付けられている)。

 

出場プレーヤー: アンファニー・サイモンズ(ポートランド・トレイルブレイザーズ)、キャシアス・スタンリー(インディアナ・ペイサーズ)、オビ・トッピン(ニューヨーク・ニックス)

 

☆TACO BELL® スキルズチャレンジ

 ドリブル、パス、ショットのテクニックを競う6人のプレーヤーは特定州のHBCUとその学生を代表して競争する。イベント開始時点でそれぞれが35,000ドルを与えられる。優勝者はさらに40,000ドルの支援基金を与えられる。

 

出場プレーヤー: ロバート・コビントン(ポートランド・トレイルブレイザーズ)、ルカ・ドンチッチ(ダラス・マーベリックス)、クリス・ポール(フェニックス・サンズ)、ジュリアス・ランドル(ニューヨーク・ニックス)、ドマンタス・サボニス(インディアナ・ペイサーズ)、ニコラ・ブチェビッチ(オーランド・マジック)

 

☆MTN DEW® 3ポイントコンテスト

 マネーボール(通常のボールが1点なのに対し2点を得られるカラーボール)でショットが成功するたびに3,500ドルの寄付が行われる。“MTN DEW® Zone”として従来の5つのスポットと別に設定されたディープスリーエリア(従来の3Pラインから6フィート後方で、成功すると3得点)からのショットは1本あたり5,000ドルの寄付につながる。これらの寄付はマウンテンデューからダイレクトリリーフの公正医療基金を介して、パンデミック対応で資金不足に陥っている全米のコミュニティーに対して行われる。マウンテンデューはこれと別に、100,000ドルを用意し、ペプシコと提携しているHBCUから2人の学生に対しMTN DEW® All-Star Scholarshipsというタイトルで奨学金を提供する。

 

出場プレーヤー: マイク・コンリー(ユタ・ジャズ)、ジェイレン・ブラウン(ボストン・セルティックス)ステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)、ザック・ラビーン(シカゴ・ブルズ)、ドノバン・ミッチェル(ユタ・ジャズ)、ジェイソン・テイタム(ボストン・セルティックス)

※コンリーは故障欠場のデビン・ブッカー(フェニックス・サンズ)に代わる出場

 

文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)