「全豪オープン」決勝で第4シードのダニール・メドベージェフ(ロシア)を7-5、6-2、6-2のストレートで下し、自身が持つ大会最多優勝記録を9に伸ばしたノバク・ジョコビッチ(セルビア)。彼の試合後の記者会見の内容は以下の通り。【関連記事】ノバク・ジョコビッチ 全豪OP決勝後 (後編)

Q:決勝のスコアは7-5、6-2、6-2でしたが、9度の「全豪オープン」優勝の中で今回のものが一番困難だったと思いますか?

「一つひとつ違うから、比べるのは難しいね。でも、怪我やコート外でのこと、それに隔離とか、今回起こったこと全てを思えば、間違いなく気持ちの面では今まで経験した中で一番困難なグランドスラムだったよ。控えめに言ってもジェットコースターみたいな4週間だった。

隔離期間について言えば、もちろん僕だけがそれを経験したわけじゃないから、不満を言うことはできない。中には15日や20日の間ずっと部屋から出られず、トレーニングできなかった選手もいるわけだから、他の選手と比べたらたぶん一番いい環境にいたんだろう。

コートでも言ったように、たくさんの感情が入り混じっているよ。メディアのこともあったし、パンデミックの最中にテニス選手がここにやってくるにあたって、多くの苦悩や犠牲があった。テニス選手や彼らがここにいることについてメディアが書いていたことから判断すると、最初はあまり歓迎されていないと感じたよ。

最終的に判断すると、この大会はオーストラリアテニス協会や“全豪オープン”、そしてオーストラリアという国にとって大きな成功だったと思う。僕らはみんな、この先も今回のような大会を経験したいと望んでいる。ここ以外で観客を見られることはほとんどなさそうだけどね。もしかしたら数か所で実現するかもしれないけど、今の状況を見ると、まだしばらく同じ状態が続きそうだ。

だから、スタンドに観客が入れるようにしてくれたオーストラリア政府やオーストラリアの人々にはとても感謝している。僕たちは観客がいる時の感覚をほとんど忘れてしまっていたからね。

正直、気持ちを穏やかに保って、一番大事なことに集中し続けるのはすごく困難だった。トロフィーと共にここに座るために、チームと一緒にたくさんのエネルギーと時間を費やしてきた。だから、オーストラリアで過ごしたこの1ヶ月から、たくさんの前向きなことを持ち帰ることができる。残りのシーズンがどんなものになるか楽しみだよ」

Q:9度目の「全豪オープン」制覇、そして通算18度目のグランドスラム優勝にはどんな意味がありますか?(会見の冒頭で祝杯として渡されたシャンパンを飲んでいないので)シャンパンはお好きでないのですか?

「若いテニス選手、というかラケットを手に持った子どもたちのうち、思うに99.9%くらいは、将来達成したいことを夢見始める。それはグランドスラムで優勝することだ。

だからもちろん、これがどれほど重要なことか、自分をつねって言い聞かせているよ。僕はグランドスラムでたくさん優勝し、たくさんの決勝に出るという幸運に恵まれてきたけど、毎回その成果をしっかり味わっているし、喜びは毎回増している。時間が経つほどグランドスラムの優勝トロフィーを手にすることは難しくなっていくからね。それはもちろん、自分と同じか、もしかして自分以上に貪欲な若い選手たちが現れて、ここ15年グランドスラムのほとんどを支配してきた僕やロジャー(・フェデラー)やラファ(・ナダル)に挑んでくるからだ。

言っておくけど、自分が年老いたとか疲れたとかそんなことは一切感じていないよ。でも、生物学的にも現実的にも、自分の状態が10年前とは違うことはわかっている。より賢くスケジュールを組んで、正しいタイミングでピークを持ってこないといけない。グランドスラムこそが、自分にできる最高のパフォーマンスをしたい大会なんだ。

世界ランキング1位在位期間の史上最長記録を達成することになったことは安心材料だよ。これからは、ほとんどグランドスラムだけに集中することになるだろう。世界ランキング1位になることを目指していると、シーズン中ずっとプレーしていなければいけないし、いい結果を出していなければいけない。そして全ての大会に出場しなければいけない。

僕の目標は状況に合わせて変わるし、今までとは少し変わるだろう。これは出場予定を調整する必要があるということでもある。そうしなければいけないわけではないけど、そうすることを選べるということだね。父親として、夫として、これは本当に楽しみなんだ。

世界で今起こっていることから判断すると、家族を連れてツアーを回るのはとても難しそうだ。世界を旅して回る時は、コーチたちから何から全て連れていかなければいけないけど、今はグランドスラム以外の大会では選手に同行できるのはたしか2人までとか、そういう規定があるからね。

だから、僕のスケジュールがどんなものになるかは時間をかけて考えるよ。実際、オーストラリアを離れた後のことはまだ何も決めていないんだ。今はただ今回の成功に驚嘆しつつ、できる限りこの成果を味わおうと思っているよ」

Q:大会で優勝したので、もう他の選手に隠すこともないでしょう。怪我のことと、優勝するために(怪我をしてからの)過去9日間の間にしたことについて教えてもらえますか?

「筋肉の断裂だよ。腹斜筋のね。3回戦での(テイラー・)フリッツとの試合中に起きて、その時すぐに感じたよ。その試合後のインタビューで言った通りさ。あの時は推測みたいなものだったけど、音がしたし、その後の感覚からしても肉離れだと感じた。

その後でたくさんの憶測が飛び交っていたのは知っているよ。本当に怪我をしたのかとか、なぜそんなに早く回復できるのかとか、そんなの不可能だとか、疑問が飛び交っていた。わかるよ。いいかい、誰だって自分の意見を持つ権利があるし、誰だって自分の言いたいことを言ったり、他人を批判したりする自由と権利がある。ただ、時々少し不公平だと感じることがあった。でも、そんなの初めてのことじゃないし、これで最後でもないんだ。

ここ9日か10日の間にやったことについては、たぶん今年の終わりにドキュメンタリーが公開されるから、その中で詳しく見ることができるだろう。ここでやってきた多くのことを撮影していたんだ。それだけじゃなくて、ここに来る前の6ヶ月の間にしていたこともね。それをドキュメンタリーにして今年の年末に公開する予定なんだ。回復に向けた日課とか、カーテンの後ろで起きていたことについて詳しく見られるだろう」

Q:今のメドベージェフと同じ年齢(25歳)の頃、あなたはグランドスラムで6度優勝し、さらに2度、決勝でロジャーとラファに敗れて準優勝していました。先程、若い世代は貪欲だと仰いましたが、あなたが同じ年齢の頃に突破していたのと同じ壁を彼らが突破できていないのはなぜでしょう?

「彼らは間違いなくグランドスラム優勝の高みに達する資質を備えているし、それを証明してきた。ドミニク(・ティーム)は(昨年の)“全米オープン”で優勝したしね。おそらく、ロジャーやラファや僕が、グランドスラムで常に自身の最高のテニスを実現してきたんだと思う。僕たちには経験があって、何をすればいいか、色々なサーフェスでの5セットマッチをどうやったら勝てるかがわかっている。このことが、台頭しつつある次世代の選手たちにとっての更なる壁になっているんじゃないかな。

実際、ドミニクはグランドスラムで優勝するまでに何度か決勝までは進んでいた。例えば(アレクサンダー・)ズベレフや(ステファノス・)チチパスやメドベージェフが同じことを達成するまでに、どのくらいかかるかな?わからないけど、間もなくだと思える。メドベージェフは間違いなく今日負かすべき相手だった。20連勝中だったからね。チチパス、ズベレフ、メドベージェフはみんな“ATPファイナルズ”で優勝したし、マスターズの大会でも複数回優勝して、ランキングも上位だ。そして全員、グランドスラムでも準決勝や決勝まで進出している。だから、ただの時間の問題だ。でも、できればあまりすぐでないといいね」

Q:批判について少しお話がありましたが、ゴラン・イバニセビッチコーチにその件について聞いたところ、彼自身はかなり重く受け止めたと仰っていました。あなたは、見えないところでどう思っていたのでしょうか?どの程度辛く、試合に出る時はどのようにそれを脇に追いやっていたのですか?

「僕にとっては、自分の思考や注意やエネルギーを全て、一番大事なことに向けることが第一だった。大事なことというのは、回復しようと努めること、全てを適切にこなすこと、日課を継続すること、気分を落ち着くようなことをすること、そして、試合に勝つために自分を可能な限り最高の状態に持って行くことだ。

僕がしたのはそういうことだよ。言うだけなら実行するより随分簡単だね。実際にはたくさんのエネルギー、特に精神的なエネルギーを費やしたよ。

チームとは家でここ数週間一緒に過ごしていて、みんなでテニスを見ていたけど、ニュースとかそういうのは見ていなかった。少なくとも僕が彼らと一緒にいた時はね。僕がいない時には見ていたかもしれないけど。それに、ニュースに触れて推測したり議論したり、誰かがメディアで発言したことについてチーム内で会話するようなこともなかった。

なぜって、そんなことは僕にはまるっきり必要ないとわかっているからね。もちろん耳に入るものもあったよ。どうしても防ぎきれない時はあるからね。つまり、一部の人の発言の中には、テニスの試合を見ている時に解説者や誰かが言及するものなんかもあるから、あちこちで耳に入ってくる。何らかの形でこちらに届くんだ。

もちろん、そういうのを耳にするのはいい気分ではない。それだけじゃなく、一部の人が事前によく調べもせずに批判したり判断を下したりするのは不公平に思える。でもさっきも言ったように、こういうのは別に初めてのことではない。ずいぶん経験してきた。僕の人生やキャリアの中で、こういう経験をする機会は何度となくあったからね。おそらく今回で最後でもないだろう。

いいかい、つまるところ、発言力のある人は誰だって自分の言いたいことを言う権利がある。それに反応するかどうか、そしてどんな風に反応するかは、僕の問題だ。僕はそういうことに僕のパフォーマンスの邪魔はさせなかった。トロフィーを獲得できたことが、ある意味で僕の答えだろう」

Q:あなたには常に批判がつきまとっているように思いますが、そのような絶え間のない批判はあなたを傷つけますか?

「(肩をすくめて)ああ、もちろん傷つくさ。君や他の誰とも同じように、僕も人間だからね。僕には感情があるんだ。メディアで誰かから公然と攻撃されているのは気持ちのいいものではない。もちろん、どうだっていいとかそんな風には言えないよ。当然傷つくさ、正直に言えばね。

でも、ここ何年かで、そういうことをうまくかわせるだけの面の皮の厚さが身に付いたように思う。おかげで、自分にとって一番大事なことに集中できるんだ」

Q:イバニセビッチコーチの会見では、2020年「全米オープン」の一件(失格)、同年「全仏オープン」決勝での手痛い敗戦、そしてここでの辛い数週間を経て、あなたはどうしてもこの大会で優勝する必要があったというお話がありました。その点には同意しますか?自分の子どもたちのうち誰をより愛しているかを選ばせるつもりはありませんが、ここのコートは「ウィンブルドン」のセンターコートよりも好きですか?

「コーチの話には同意するよ、もちろんさ。自分のコーチとは同意しないといけない。そうだね、6ヶ月前、シーズンが再開した時に時間を戻すと、僕はニューヨークの“ATP1000 ウェスタン&サザンオープン”で優勝して、続く“全米オープン”で例の失格を食らった。あの失格は当然僕に心理面や感情面で影響したよ。好調の時にあんな形で大会を去るなんてね。年間を通してあの時点まで試合で負けていなくて、最高の気分でいたわけだから。

もちろん、あの件はシーズンのその後にも影響した。僕のパフォーマンスにはムラがあった。でもシーズンの終わりには世界ランキング1位を確保できたし、それが目標だった。スタンドに観客がいない中でプレーするのはちょっと変な感じだったし、そのせいでちょっとモチベーション不足だったかもしれないけどね。

だからもちろん、今年はできる限りいい形でシーズンを始めたかったんだ。オーストラリアに来ることは、いつも僕にいっそうの自信をもたらしてくれる。ここでの成績やオーストラリアでのプレーのおかげさ。このことは、もう一つの質問につながるね。

子どもの頃、僕は“ウィンブルドン”で優勝して世界ランキング1位になることを夢見ていたけど、それは2011年に達成した。“ウィンブルドン”は多くの意味でとても特別なイベントだ。すごく特別な大会で、すごく特別なコートだよ。でも、僕のキャリアで積み重ねてきた結果という観点から言えば、やっぱり(“全豪オープン”の)ロッド・レーバーが一番のコートだ」

                                  後編へ続く                           

(テニスデイリー編集部)

※写真は「全豪オープン」でのジョコビッチ

((Photo by TPN/Getty Images)