鷲見玲奈連載:『Talk Garden』 第8回ゲスト:三浦大輔(横浜DeNAベイスターズ監督)第7回(対談の前編)はこ…


鷲見玲奈連載:『Talk Garden』

 第8回
ゲスト:三浦大輔(横浜DeNAベイスターズ監督)

第7回(対談の前編)はこちら>>

鷲見玲奈さんの連載企画。第8回は、前回に引き続き、横浜DeNAベイスターズの三浦大輔監督がゲスト。ズバリ「優勝へのカギ」と考えていることなどを聞いた。



鷲見玲奈さんが横浜DeNAベイスターズの三浦大輔監督に今季の意気込みなどを聞いた

鷲見 現役を25年間過ごし、これまでいろいろな監督と出会ったと思いますが、影響を受けるなど印象に残っている指揮官はいますか。

三浦 全員、印象深かったですし、僕としてはいいとこ取りをして『監督・三浦大輔』という自分なりのモノをつくり上げていけたらと考えています。まあ出会った監督で衝撃だったといえば、1998年の日本一の時に監督だった権藤博さんですよね。

鷲見 「衝撃」というと?

三浦 前年まで投手コーチというのもあったのですけど、監督になったら権藤さんは「監督と呼ぶな」って言うんです。そんな人、初めてだったので驚きましたね。権藤さんはユニフォームを着ているとすごく熱くなるんです。いつだか逃げのピッチングをして、めちゃくちゃ打たれて、めちゃくちゃ怒られた。あー、これはもうしばらく口を聞きたくないし、向こうも話したくないだろうなって思っていたんです。けど試合が終わりロッカーや風呂場で会うと、普段と変わることなくフラットに話しかけてくれるんですよ。

鷲見 引きずらないし、切り替えが早かったわけですね。

三浦 あんなに怒っていたのに、グジグジと言われなかったので、こっちとしてもやりやすかったし、次に向かってやってやろうって気持ちになれたんです。そういった部分は参考にしたいですよね。

鷲見 権藤さんは監督と呼ばせなかったと言っていましたが、三浦監督はまわりから何て呼ばれたいと思っているんですか。

三浦 よく聞かれるんですけど、何でもいいですよ(笑)。

鷲見 「番長」でもですか (笑)?

三浦 もちろんです(笑)。でも、去年ファームの監督をやった初めの頃は、「監督」と呼ばれても気づかなかったことが多かったんです。やっと慣れましたけどね。

鷲見 さて今シーズン、三浦監督率いるDeNAは23年ぶりの優勝を目指すわけですが、戦っていくうえでカギになることは何でしょうか。

三浦 やはり得点力でしょうね。昨季、チーム打率はリーグ1位でしたが、得点に結びつけられなかった印象でした。

鷲見 持ち前の打撃力を効率的に生かさなければいけないということですね。

三浦 はい。佐野恵太、ネフタリ・ソト、宮﨑敏郎、タイラー・オースティンと打つほうの軸は揃っていますから、大事なのは彼らの前後を打つつなぎの選手たちですよね。主軸で打ち勝つことを目指しても143試合もあるとそうはいきません。やっぱり、いかにつなぐ野球ができるか。ヒット1本でも、いやノーヒットであってもいかに得点するかが求められてくる。結局、野球は相手よりも1点でも多く得点していれば勝つスポーツなので、時としては長打力よりチームバッティング、たとえば足を使うなど、そういったプレーが必然的に必要になってくると思います。

鷲見 やはり打線の中心は昨季から4番・キャプテンを務め、首位打者になった佐野選手でしょうか。

三浦 筒香嘉智が抜けたあと、大役を任され大変だったと思いますが、結果を出してチームメイトやファンの信頼を勝ち取りました。今季もキャプテンとして引っ張っていってもらいますし、非常に頼りにしています。

鷲見 先発陣はエースの今永昇太投手がケガで出遅れそうですが、ローテーションの中心は誰になりますか。

三浦 まずは大貫晋一に期待ですね。昨年、チームでただひとりの2ケタ勝利投手ですし、今季も調子を維持してもらえればと思っています。あとはやはり新しい戦力に出てきて欲しいですね。若い選手はもちろん、故障や不調で苦しんだ選手もコンディションを整えてチームの戦力になって欲しい。チーム全員が戦えないと、やはり優勝はできませんから。

鷲見 新しい戦力といえばドラフト1位の大卒右腕・入江大生投手に注目しているのですが、三浦監督の評価はいかがですか?

三浦 まだ彼のピッチングは映像でしか見ていないのですが、非常に馬力のある印象です。キャンプやオープン戦で見るのを楽しみにしていますが、ルーキーなので未知数の部分もある。無理はさせられませんし、そこはしっかりと見極めたいですね。入団会見などで数回会いましたが、非常にひょうきんで明るい選手だったので、すぐにチームに馴染んでくれると思いますよ。自然体でマウンドに立ってほしいですね。

鷲見 今季も対巨人戦が大事になってくると思うのですが、その巨人が昨年の日本シリーズでソフトバンクに2年連続4連敗を喫しました。三浦監督はこの要因をどのように見ていますか。

三浦 やっぱりソフトバンクは徹底していましたよね。とくに第1戦、相手エースの菅野智之投手を序盤から重量打線で攻め込み、さらにバッテリーは坂本勇人選手、丸佳浩選手、岡本和真選手の第1打席をしっかりと抑えました。意識づけというのか、立ち上がりをどう抑えるかチームとして徹底できていたのが大きかった。

鷲見 最初の最初が肝心ということですね。

三浦 はい。だから、すごく参考になりましたよ。ペナントにおいてもカード3連戦の初戦の入り方はその後の流れを考えても大事だと思いましたし、しっかり考えていきたいですね。

鷲見 では当然、開幕戦は1年を占う意味でも重要になりますね。

三浦 そうですね。僕は7回開幕投手をやらせてもらって、一度も勝てなかったから言いづらいところもあるのですが......開幕戦は独特の空気があって、何度やっても慣れませんでした。思いどおりに体が動かなかったり、とくに1球目なんかイメージどおりになかなかいかない。ベストな経験ではありませんが、いずれ開幕投手が決まったら僕の経験を伝えたいと思います。

鷲見 それは選手たちにとって貴重なお話しですね。それから、度々話題になるセとパの違いについても伺いたいのですが、DH制の是非も含め、三浦さんの考えを聞かせて頂けますか。

三浦 パ・リーグのほうが球場は広いので、力と力の勝負ができるといった面はあると思います。逆にセ・リーグは球場が狭いのでピッチャーは低く厳しく攻めていかなければいけない。どっちがいいというわけではないし、日本シリーズでパ・リーグが強いから優れていると見られがちですが、セ・リーグはセ・リーグならではのよさがあると思います。投手が打席に立つことも野球の面白さだし、ファンの人たちも理解してくれているのではないでしょうか。

鷲見 あとひと月もすると、キャンプインになります。三浦監督の人生のバイブルが矢沢永吉さんなのは有名ですが、監督として矢沢さんの教えを生かすとすれば何でしょうか。

三浦 現役時代から変わりませんが、「ブレない」「貫く」「すべて矢面に立って受け止める」ですね。とくに監督ですし、責任はすべて僕にありますから、強い気持ちでやっていきたい。

鷲見 カッコいいですね!!

三浦 いやいや実際、負けたりしたら落ち込むこともありますし、けどそれを表に出すことなく、しっかりと自分のなかで切り替えながら前を向いてやっていきたいですよね。

鷲見 三浦監督がどんな采配をするのか、今から楽しみです。

三浦 優勝から遠ざかっていますし、先程も言いましたが1998年のようにファンの方々はもちろん横浜の街全体が盛り上がるよう、チームとして結束していきたいと思っています。ですから、鷲見さんも応援のほう、ヨ・ロ・シ・ク!