頂点まであと3試合となった。準々決勝となるこの日、早大は近大を相手に迎えた。多彩なトスワークから展開される攻撃や相手守備を乱すサーブ、組織的なブロックで押し切り、セットカウント3-0(25-13、25-15、25-18)でストレート勝利。…

 頂点まであと3試合となった。準々決勝となるこの日、早大は近大を相手に迎えた。多彩なトスワークから展開される攻撃や相手守備を乱すサーブ、組織的なブロックで押し切り、セットカウント3-0(25-13、25-15、25-18)でストレート勝利。明日の準決勝へと駒を進めた。

 セッターの中野倭(3年)が多彩な攻撃を組み立てる近大に対し、サーブでレシーブを乱して思うように攻撃を展開させないという対策を立てて臨んだ。そのためこの試合もサーブの効果ははっきり出た。1セット目は大塚達宣(スポ2=京都・洛南)の強烈なジャンプサーブで幕を開ける。その威力に押され乱れたレシーブを見てブロックの的を絞った上條レイモンド(スポ3=千葉・習志野)と水町泰杜(スポ1=熊本・鎮西)の2枚がすかさずスパイクをシャットアウト。幸先よくスタートを切り、序盤から大差をつけた。これに相手は流れを止めるべくタイムアウトを取ったが、お構いなしに次々と得点した。水町の強烈なジャンプサーブと村山豪副将(スポ4=東京・駿台学園)のブロックの連係プレーで2連続得点をあげ22-12とすると、鋭いサーブを武器とする水町は裏をかき、緩く打ちコート前方へ落としてサービスエースを奪った。サーブとブロックのシステムがよく機能し、25-13と圧勝した。

 


サーブが好調な水町

 2セット目は序盤からサイドアウトを取り合い拮抗する。2メートルを超える大型ミドルブロッカー、ムヤ・フランシス(1年)のブロック等で一時2点のリードを許すが、すかさず取り返す。一進一退の攻防が続いたが、15-13でのブロックポイントを皮切りに、村山副将のサービスエース、宮浦健人(スポ4=熊本・鎮西)主将のバックアタック等で6点差まで広げた。それからは大塚、水町の攻撃で突き放し25-15で奪った。3セット目は粘りを見せる近大に対抗する形に。ブロックの上から放たれるフランシスのクイックやブロックアウトを狙ったサイド陣のスパイクで追われるも、リードを保ち続けた。最後は水町に代わり出場した山田大貴(スポ1=静岡・清水桜が丘)のバックアタックで25-18としゲームセット。これにメンバーは歓喜の輪を作った。

 


3セット目、水町に代わり出場した山田(右)

  今回も武器であるサーブとブロックのシステムが遺憾なく発揮された。さらに高い壁を相手にしていたが、シャットアウトされたスパイクは3セットを通して2本だけだった。「相手のミドルブロッカーをよく見て、Aクイックだと思わせてサイドにトスを展開するというのを考えていた」とセッターの中村駿介(スポ4=大坂・大塚)。中村のトスワークが相手ブロッカーを惑わすことにより、一層スパイカー陣の高いポテンシャルが発揮されることもまた早大の強みである。明日の舞台は準決勝。前人未到の四連覇に向け持ちうる力をすべて出し切る。

(記事 西山綾乃、写真 橋口遼太郎)

 
(※1)サイドアウト…サーブ権を持っていない側が得点すること

★Today’s Feature 第3回 荒尾怜音

  第3回目の『Today’s Feature 』は荒尾怜音(スポ1=熊本・鎮西)。セッターへ正確に返るサーブレシーブや並外れた反射神経から、高校ナンバーワンリベロと称されてきた。早大に入部し正リベロに定着するも、大会に恵まれず。だがこの度、ステージが変わってからやっと大きな大会を迎えられた。そんな荒尾が辿ってきた道のりに『Feature』する。

 


荒尾は入部早々正リベロの座に定着した

 その名が知れ渡ったのは高校1年時の全日本高等学校選手権大会(春高バレー)。荒尾は1年生ながら名門、鎮西の守護神としてチームを日本一に導いた。だがそれからはどの大会でも優勝にはあと一歩及ばず、2回戦で敗退することもあった。そして3年生を迎え、日本一の称号を取り返したいという思いはより強くなった。「最終学年ではものすごくバレーに懸けていて。『これくらいでいいだろう』と慢心することなく、休みすらも惜しんで365日ずっと追い込んでいました」と荒尾。最後の春高で日本一になるべく、自分にも周りにも厳しく当たった。だが最後の大舞台では準々決勝でフルセットの激闘の末敗れ、2年前の再来とはならなかった。

  引退後、新人戦に出場する後輩の手伝いをするも、バレーボールに身が入らなくなり燃え尽きてしまった。思うようにモチベーションを保てないまま、舞台は大学へ。新しいステージに移ったものの、入部して早々、新型コロナウイルスの感染拡大により練習さえもできなくなった。だがこれが荒尾の転機になる。「時間ができたから、自分が出ていた高校の試合を見ていたんです。自分が楽しそうにバレーやっている姿を見たら、もう一度頑張ってみようと思いました」。そのモチベーションは、自粛期間が明け大会の中止が続いても変わらなかった。全日本大学選手権の開催を信じ、ギアを上げた。

  ようやく本格的な大学バレーの試合を迎えられた。まだ大学のプレースタイルに慣れきれず苦になることもある。だが「周りのすごい選手たちが自分のミスをカバーをしてくれるという甘い考えはしたくない」という。自分が崩れてはいけない状況を作り出すべく、実力で証明したい。その確固たる意志が荒尾を突き動かしている。そしてもう一つ、バレーボールに打ち込める原動力がある。「大学でもう一度日本一の景色を見る」。高校時代、無我夢中で追い求めてきたが届かなかった、あの景色をもう一度ーー。頂点へと一歩一歩近づいている。

(記事・写真 西山綾乃)

 

セットカウント
早大25-13
25-15
25-18
近大
スタメン
レフト 大塚達宣(スポ2=京都・洛南)
レフト 水町泰杜(スポ1=熊本・鎮西)
センター 村山豪(スポ4=東京・駿台学園)
センター 上條レイモンド(スポ3=千葉・習志野)
ライト 宮浦健人(スポ4=熊本・鎮西)
セッター 中村駿介(スポ4=大坂・大塚)
リベロ 荒尾怜音(スポ1=熊本・鎮西)
コメント

中村駿介(スポ4=大坂・大塚)

――大会を迎えられて率直にどう思いましたか

無事に大会ができて安心したのと、試合ができて楽しいなと思いました。

――今日の試合の感想をお願いします

相手のブロックが高いなか、スパイクやブロックを落ち着いてできていたので、今まででいいゲームだったなと思います。

――対策は立てていましたか

僕の対策としてはトスの配球ですね。真ん中でクイックを見てきたので、相手のミドルブロッカーをよく見て、Aクイックだと思わせてサイドにトスを展開するというのを僕の中では考えていました。チームとしては、相手チームのセッターが良い選手なので、彼にトスをいい形で上げさせないように、サーブで攻めてブロックとディグを意識してやっていました。

――今日もサーブで崩せていましたね

そうですね。今日は特に気合が入っていました。

――ブロックとトスの配球の話が出ましたが、どのスパイカーもあまりブロックに引っかからずに打てていたと思います。

ブロックが1枚になると、うちにはサイドにいい選手がたくさんいて、1枚くらいになると簡単に決めてくれるので楽ですね。

――準決勝に向けて意気込みをお願いします

今までやってきたことを全力でやるということと、ここまで勝ってきたチームのためにもいい結果を残せるように、まずはチームのみんなと協力してやっていきたいと思います。

上條レイモンド(スポ3=千葉・習志野)

――大会を迎えられて率直にどう思いましたか

今年初めての大会なので、無事に開催できたことをチームとしても自分としてもすごくうれしいですし、ここまで勝ち上がれたことに安心すると同時にまたこれから頑張ろうという気持ちもあります。

――対談で絶好調だとおっしゃっていましたが、今の調子はいかがですか

変わらず絶好調です!

――ブロックで活躍されていましたもんね

最低限の仕事はしないとなと。ブロックが1本でも決まれば絶好調かなと思います。スパイクもそうですし、自分の得意なプレーで引っ張っていきたいと思っているので、スパイクとブロックが絶好調のポイントです。

――準決勝に向けて意気込みをお願いします

ここまで1年間苦しかったですがチームで戦ってきました。準決勝もそのお披露目の舞台だと思っているので、決勝につなげるのはもちろんですが、まずは準決勝を突破するのを目標にして頑張りたいと思います。

水町泰杜(スポ1=熊本・鎮西)

――大会を迎えられて率直にどう思いましたか

チームの目標として、楽しんで試合をするというのを4年生はずっと話していました。それを意識して試合を楽しんでやれているから、けっこういい状況なのではないかなと思います。

――サーブで点を稼いでいるという印象を持ちましたが、サーブの調子はいかがですか

今日はわりとサーブが走って良い形でプレーできたと思いますが、ミスもその分あるのでそこを少しずつ修正しながら明日も決勝もしっかり頑張っていけたらいいなと思います。

――今のところ宮浦主将とのサーブの勝負はどんな感じですか

(笑)。まだ健人さんの方がリードしていると思うので、しっかりついていけるように頑張りたいと思います(笑)健人さんは1本1本の質がいいんですけど、自分はまだ波があるので常にいいサーブが打てるようにしたいと思います。

――チームとしてサーブの調子が良いですよね

今すごくいい形で試合ができていると思います。

――最後に準決勝に向けて意気込みをお願いします

4年生と一緒に戦えるのがあと2試合になったので、悔いが残らないように4年生とバレーボールを楽しんでやっていけたら自然といい結果がついてくると思います。明日も試合を楽しみたいなと思います。