NHL入りを目指す17歳、来年のドラフト候補に挙がる安藤優作の原動力とは 最高峰の北米アイスホッケーリーグ(NHL)入り…
NHL入りを目指す17歳、来年のドラフト候補に挙がる安藤優作の原動力とは
最高峰の北米アイスホッケーリーグ(NHL)入りを目指して、17歳の日本人フォワード(FW)が前進を続けている。U20(20歳以下)日本代表の安藤優作。10月末にNHLのスカウティング部署が発表した2021年のドラフト候補にリストアップされ、指名が有力視されている。安藤はオンライン取材に応じ、「(リスト入りは)励みになりますし、少し緊張が増したりしていますね。去年とは違って今年はドラフトの年なので試合前に色々と考えちゃったり。ドラフトにかかることは夢なので、一歩目のスタートという感じですね」と心境を語った。
北海道苫小牧市出身の安藤は子どもの頃からの夢だったNHL入りを目指し、中学の頃に単身カナダに渡り、本場のリーグで腕を磨いてきた。昨季から16~20歳を対象とする米国ジュニア最高峰のホッケーリーグ(USHL)で、オハイオ州を拠点とするヤングスタウン・ファントムズでプレー。チーム最年少ながら40試合に出場し、25ポイント(8ゴール、17アシスト)と結果を残した。
173センチ、69キロと小柄だが、「自分の長所は周りを見れてパスを出せるところ」というスタイルを貫き、ゴール数を大きく上回るアシスト数を記録。スピードと判断力を武器に周りを生かすプレースタイルはチームから高い評価を受けた。
以前はFWとして得点にこだわった時期もあったというが、「カナダにいたときはゴール、ゴールという意識があったんですけど、レベルが上がるにつれてゴールするのは難しくなっていくので」。意識を変えて高いレベルに順応した。オフに筋力トレーニングに励み、体重5キロ増で迎えた2年目の今季は、開幕から3試合で2アシストを挙げ、「去年より体負けをしていない」と手応えを感じている。
2年目のUSHLで得た“特権”とは…
現在は米国人の家庭でホームステイをしており、「ご飯も美味しいですし、全然困ることがないです」とアイスホッケー漬けの日々を送る。時々、寿司が食卓に出るのが一番の楽しみだ。
カナダに留学した当初はフランス語圏だったため言葉が全く理解できずに苦労したそうだが、「大好きなホッケーがそばにあったので楽しく生活はできました」。今は英語でのコミュニケーションにも慣れ、「生活は本当に楽しいですし、(日本が恋しくなることは)全然ないです」と夢に向かってまい進している。
また、USHLでは2年目の特権を得たことも励みになっている。このリーグは夜間に長距離移動して、翌朝に遠征先に到着するハードなスケジュール。そのため、チームバスには簡易ベッドが設備されているが、全員分はないため、ルーキーだった昨年は床で寝ていたという。
「去年は1年目で年下だったので床で寝ていたんですけど、今年からは2年目でベッドが当たるようになった。少しは寝やすくなりました」と笑う。周りが聞けば苦労とも取れる環境も、前向きに捉えることができるのは異国で戦う上で強みとなる。
八村も通った登竜門で腕磨く覚悟「今はまだ体も小さい」
来年のドラフト候補にも挙がる有望株だが、指名されてもNCAA1部の強豪、ミネソタ州立大マンケート校へ進学することを決めている。NHLでプレーする選手の約3割がNCAA1部の大学で腕を磨いてからプロ入りするという統計もあり、登竜門とも言える。「今はまだ体も小さいですし、この体ではNHLに行けないと思うので、まずは大学へ行って成長してから最終的な目標に向かっていきたい」と足元を見ている。
決断の裏には、大学バスケットボールで活躍後、米プロバスケットボール(NBA)、ウィザーズにドラフト1巡目指名された八村塁の存在もある。「八村塁選手がドラフトで指名された動画を見たりして、すごいなって思っています」。1年目から活躍し、日本のファンを沸かせた姿に将来の自分自身を重ねている。
2007年にGK福藤豊が日本選手で初めてNHLでプレーした後、続く日本選手は出ていない。日本人で初めてFWとして最高峰の舞台に立てば、大きな注目を浴びることは間違いない。「NHLで活躍することは一番の目標ですが、活躍して名前が知られて日本でもアイスホッケーがもっと注目されるようになれば」。夢の根底にある熱い想いが、前に進む原動力となっている。(岡田 弘太郎/Kotaro Okada)