巨人の一員になるには実力だけではダメ。eスポーツで必須の力とは>>

 eスポーツ界に二刀流ならぬ、三刀流プレーヤーがいる。『ゲーム配信』を生業としながら、『実況パワフルプロ野球(以下パワプロ)』『スプラトゥーン』と2つのゲームタイトルでプロ選手として活躍する「たいじ」こと吉田友樹だ。

 吉田は2018年、スプラトゥーン2の世界大会で優勝。翌年にはパワプロを用いたプロ野球eスポーツリーグ「eBASEBALL プロリーグ」で、読売ジャイアンツの代表選手として日本一獲得に貢献した、人気と実力を兼ね備えた選手だ。



読売ジャイアンツの代表選手として活躍するたいじ

 ここで簡単にゲームの紹介をしよう。

 スプラトゥーンは敵を倒した数は競わず、ヒト型になれるイカたちが水鉄砲のような「ブキ」を使って、より広範囲にマップを塗る、インクをぶちまけることが勝利の条件。本格的なシューティングアクションでありながら、親しみやすいポップなビジュアルとキャラクターで、コアゲーマーはもちろん女性や子供たちにも人気のゲームだ。17年発売のスプラトゥーン2は、発売3日間で67.1万本を国内で販売し、当時のNintendo Switch向けタイトルとして過去最高の累計売上本数を記録したことでも話題となった。

 パワプロは1994年に家庭用ゲームとして誕生して以来、 25年以上にわたり楽しまれてきた野球ゲーム。二頭身の体、丸い手、巨大な足など大胆にデフォルメされたキャラクターながら、実際のチームや選手のデータを収録することでリアルな野球を疑似体験でき、多くの野球ファンに親しまれてきた。17年からは国体の文化プログラムとしてパワプロを使ったeスポーツ大会が行なわれている他、18年からは「eBASEBALL プロリーグ」が開催されている。

 これらスプラトゥーンとパワプロの選手として活躍し、ゲームにすべての情熱を傾けてきた吉田は、何を思いゲームをプレーしているのか話を聞いた。

──吉田選手はeスポーツ選手としての活動に加えて、ゲームをライブ配信する活動もされています。普段の生活サイクルはどのようなものですか。

吉田 公式戦などの予定がない場合は月間で合計200時間くらい、日数で言えば365日中360日は配信をしています。ゲームが好きなので、配信以外でもかなりの時間プレーしています。あと自分の配信は必ず見返して、どんな内容が盛り上がっていたかチェックもしています。我ながら自分の配信が面白いと思って始めた習慣なんですけど(笑)。

──練習はいつ行なっているのですか。

吉田 チームメイトの都合もあって、練習は配信後の深夜から早朝に行なうケースが多くなるので、どうしても夜型の生活になります。今シーズンのプロリーグ期間(※)も恐らくそうなるでしょうね。配信の時間については夜間がゴールデンタイムだと思っているので、そこは変えられません。
※『eBASEBALL プロリーグ』2020シーズンは12月開幕予定。プロテストは8月24日(月)からオンラインで開始され、これを勝ち抜いた選手はeドラフト会議の候補者となり、プロ野球12球団からの指名を受ける権利を得る。

──ゲーム配信で人気を集めた吉田選手ですが、eスポーツの大会などへの出場を始めたきっかけは何でしたか。

吉田 当初は一人プレーのゲームが中心だったのですが、友人からFPS(主人公本人視点のシューティング)に誘われてプレーしてみたら意外と上手くできたんです。それでチームを組んで大会に出たら、上手い人とチームを組むこと、上手い人と戦うことの面白さを感じて、いつか大会に出て活躍したいなと思うようになりました。

──その「いつか」が『スプラトゥーン』の発売のタイミングだったんですね。

吉田 ほかのゲームではどうしても経験の差が生まれてくるのですが、元々ゲームの上達スピードには自信がありましたから、新規タイトルならチャンスがあると思っていました。発売されたばかりのスプラトゥーンをプレーしてみたら手応えもあったので、「これだ!」と思ってかなりの時間やり込みました。

──スプラトゥーンとパワプロ。似ているのは「狙いを定めて撃つ(打つ)」ことくらいですよね。操作性や戦略性がまったく異なると思いますが。

吉田 そうですね。パワプロはゲームの研究も進んでいて、すでに上級者の間ではテクニックが確立されていました。だから挑戦を始めた段階ではプロになれるとは思ってもみませんでした。ただ、プロテストのオフライン予選では上級者相手にも上手く戦え、なんとか合格できたんです。

──その頃はスプラトゥーン界では著名なプレーヤーになっていましたよね。それでも、「eBASEBALL プロリーグ」に挑戦しようと思ったきっかけは何ですか。

吉田 一番大きな出来事は、後にソフトバンクホークス代表選手となる三好航太郎選手が、自分の配信を見てアドバイスをくれたことです。当時から三好選手はパワプロの大会で結果を残されていた選手だったので、彼のアドバイスが上達につながり、「プロを目指して真剣にプレーしてみよう」と思うようになりました。

──初年度から読売ジャイアンツの代表選手として活躍されていますが、eドラフト会議では第一志望だったんでしょうか。

吉田 実は第二志望でした(笑)。プロリーグではゲーム内でも選ばれた球団を使用しなくてはならず、パワプロにおいて勝ちやすい別の球団を第一志望に書いていたんです。ただ、親がジャイアンツファンでよく試合を見ていて、ぼくは当時、松井秀喜さんの大ファンでした。指名されたときは素直に嬉しかったですね。

──吉田選手はNPB主催のプロ野球12球団が参加するもう一つのeスポーツリーグ『NPB eスポーツシリーズ スプラトゥーン2』でもeドラフト会議に参加し、ジャイアンツから「予告指名」も受けましたね。

吉田 その頃にはすっかり「ジャイアンツが良いな」と思っていたので嬉しかったですね。結果的にホークスとして戦うことになったのですが、「eBASEBALL プロリーグ」を通して再びプロ野球を観るようになって、「ホークスの柳田悠岐選手って華があってカッコいいな」と思っていたタイミングだったので、不思議な縁を感じました。

──ジャイアンツのチーム名を背負ってプレーすることへのプレッシャーはありましたか。

吉田 「ジャイアンツは勝たなければいけない」というイメージはありました。特に当時はパワプロのキャリアが浅く、絶対的な自信はなかったのでプレッシャーは感じましたね。ただ、最終的には吹っ切れた気持ちで臨むことができたと思います。

──実際の試合を見ていても、そこまで緊張した様子は見受けられませんでした。ほかの選手からも「吉田選手は本番に強い」と評されていますが、ご自身ではその理由についてどう分析されていますか。

吉田 普段どおりできることですね。自分がいつもどおりのプレーをしているだけで、相手が勝手に緊張してパフォーマンスが落ちることもありますから。試合では常に「自分が一番うまい」と思って落ち着いてプレーしているのが良いのかなと思います。

──逆に、吉田選手がジャイアンツ代表としての活動で緊張した経験はありますか。

吉田 昨年、ジャイアンツの試合中に東京ドームで「eBASEBALL プロリーグ」の代表選手として紹介していただいたことですね。当日は阿部慎之助さんの引退試合ということもあり超満員でした。eスポーツの選手がジャイアンツファンの皆さんに受け入れてもらえるのか不安で、さすがに緊張しました。しかし温かい拍手で迎えていただきましたし、その光景をグラウンドから見られたのは貴重な経験でした。

──吉田選手は2つのタイトルでの活躍に、配信者としての活動も加えると「三刀流」と言える存在だと思います。今後に向けての意気込みをお願いします。

吉田 自分は試合が盛り上がっている時の会場の雰囲気が大好きなので、当面はオフライン大会の開催が難しそうで本当に残念です。ただ、それと同時にリモートでできるというeスポーツの可能性が注目されているので、プロとして常に楽しんでプレーしている姿を見せたいですね。

ⓒNippon Professional Baseball ⓒ Konami Digital Entertainment