「明日へのエールプロジェクト」の一環で、学生とアスリートが今とこれからを一緒に語り合う「オンラインエール授業」。第9回の講師は、プロサッカー選手で日本代表、2019年のJリーグ得点王・最優秀選手賞受賞の仲川輝人選手。全国高校サッカー部の現役部員や顧問の教員など約40名が集まり、今のリアルな悩みや質問に答えた。

速さを強さに切り替える力を

「最近部活動うまくいってますか?」仲川選手の投げかけから配信はスタート。「わからないことも多いので、ディスカッションして貴重な時間を過ごしたい」と高校生に挨拶した。「自粛していたので、体力の面が不安」と返す高校生に「僕ももうすぐ試合だけど不安です」と共感する一面もあった。

まずは仲川選手の高校時代の話題に。「背が小さく、フィジカル面で苦労した」と振り返りながら「スピード、アジリティ(敏捷性)を強化することを目指して練習していた。速さを強さに変えたら、自信がついてプレーできるようになった」と、自身の持ち味を模索していたことを紹介。また、大学生の時に大ケガをし、長期離脱を余儀なくされたエピソードにふれ、「落ち込んだのはケガをした次の日だけだった。目標を切り替えて、1日でも早くサッカーができる体になることを優先した。失敗を次の成功にどう活かすか、それが大事だと思う」とメッセージを送った。

「(仲川選手は)ドリブルが武器ですが、意識していることはありますか?」という生徒からの質問には、「相手の重心がどちらにかかっているか」とコメント。「自分は一瞬のスピードなら負けないので、逆をつくことを意識している。判断のスピードも、大学からプロに上がった時に学んだこと。高い意識を持って相手の重心を見ておくと、Jリーグの選手としても通用する人になれると思う」とアドバイスした。

「海外のプレーを見て参考にするが失敗する。どこを見ればよいか?」という質問には、「リオネル・メッシ選手(アルゼンチン代表)など、足の速い選手と小さい選手のプレーをよく見ている。選手のストロングポイントや、自分に似ているプレーを見たら、何が海外で通用しているのかを分析するといいかもしれない」とコメント。「自分のよさと、吸収したものを掛け合わせてプレーすることを意識するといいと思う」と伝えた。

日常にサッカーがある喜びを感じてほしい

後半は、プライベートな内容に踏み込んだ質問も聞かれた。

161cmという、最も身長が低いJリーグMVP選手である話題にふれ、「コンプレックスはあったか?」という質問には、「中学は感じていた時がありました」と振り返り、「ただ、一瞬のスピードは負けない、そこをいかに磨くかを毎日意識していた。小さい分、懐に入りやすいので、自分の思い通りにプレーできる長所も発見した。チャレンジするのは悪くない、むしろいいと思う。しなければ成長はない。自分も失敗してきた。失敗してもいいからポジティブに変えることが大切」と力強くアドバイスした。

うって変わって「オフの日の過ごし方は?」という問いかけには「今このような状況だとなかなか外に出られないけど、海外ドラマを見たり、それでもやはり毎日サッカーのことを考えたりすることが多いです」と反応。「試合のハイライトもいいけど、1試合90分を通して全部見ることも大事。チャンス前のプレーや組み立て、ビルドアップ、選手の流動的な動きは、ハイライトでわからない。そういうことを、1日や半日かけて見ていることが多い」と実践で役立つイメージトレーニングを紹介した。

最後に明日へのエールを求められると、「なかなかサッカーがうまくいかないで、モチベーションが上がらないのもよくわかる」と共感しながら、「再開すると、サッカーができる喜びを感じられると思う。日常にサッカーがあることに感謝して、打ち込んでほしい。ポジティブに目標に向かって、サッカーを楽しむことを忘れずに過ごしてもらえたら。高校生の本音も聞けたし、質問に答えるのも新鮮だった」と、オンラインの授業に手応えを感じたようだった。「仲川選手のゴールパフォーマンス」として、得点シーンで両人差し指を掲げるポーズを全員でイメージし、記念撮影。強いマインドが高校生にも伝わり、最後には大きな拍手が起こった。

授業後の「アフターセッション」でみんなの本音を語り合う

仲川選手とのオンラインエール授業後に、高校生と先生たちだけの「アフターセッション」を開催。授業でのエールを受けて、今のリアルな想いを自由に語り合った。今回は、東京都の高校で、普段部活動において一緒に活動している生徒と教員が残り、意見を交換する展開となった。

まずは教員の感想が聞かれた。「特に3年生はインターハイが中止になって、体が動かせない中、プロの選手が実際にどういうことに気をつけながら生活し、サッカーをしているのかを知れたことで、これを日々のサッカー人生に活かしていってほしいと思った」と振り返り、「普段の授業の様子を知っているので、ちゃんと喋れるか不安だったが、想像以上に部員のみんなは考えながら、質問していた。日々課題を感じてしっかりと表現してくれたことに関してはすごく頼もしいし、成長を感じた」と満足げに話した。

また、それを受けて高校3年生の意見も多く聞かれた。「家でだらけてしまうことがあったので、サッカーの動画を見ることや、どのようなことを考えて家で過ごし、練習に臨むのか、いろいろ変えていきたいと思った」と抱負を語る生徒や、「実力はあると思う。あとはそれを100%発揮できるような連携を練習からできるようになりたい」と目標を語る生徒の声もあった。

最後に先生のコメントとして、「まずは実力をつけなさいということですね」と前置きしながら、「やはり期待するところは、精神面での成熟が大きいと思う。サッカーだけができる大人になってほしくないということで、サッカーの技術と精神的な成熟は同時並行だと思うので、(指導は)両方進めていきたいところ」と、教員にも新たな目標が生まれた様子だった。

今後もさまざまな競技によって配信される「オンラインエール授業」。

これからも、全国の同世代の仲間と想いを共有しながら、「今とこれから」を少しでも前向きにしていけるエールを送り続ける。