-Future Heroes 一覧はこちら-   全日本大学野球選手権で初の決勝進出を果たした佛教大で主力投手の一角として活躍している中山塁(4年・岡山南)。ストレートの球速は130㎞/h台だが、ストレートと同じ握りで投げるカットボールを武…

-Future Heroes 一覧はこちら-  

 全日本大学野球選手権で初の決勝進出を果たした佛教大で主力投手の一角として活躍している中山塁(4年・岡山南)。ストレートの球速は130㎞/h台だが、ストレートと同じ握りで投げるカットボールを武器に活躍を続ける遅咲きの右腕だ。

 チームメイトに龍谷大平安や近江など甲子園常連校の出身選手がいる中で中山の経歴は少し特殊だ。岡山南高では県大会3回戦が最高成績で、中山自身は4番手投手と全くの無名選手だった。

 佛教大には一般入試で入学。3年春に1度だけリーグ戦に登板してアウト1つを取った以外はベンチに入ることすらなく、昨年までの実績は皆無に等しかった。

 それでも「ストイックで周りに影響されない」と田原完行監督が認める努力家がこの春に飛躍した。オープン戦で結果を残して自信を深めると、リーグ戦で2回戦の先発を任されるようになる。リーグ戦では4試合に先発して全勝。28回を投げて自責点1という神がかり的な活躍を見せ、田原監督に「救世主」と言わしめた。

 躍進の裏には同じ岡山県出身である山本由伸(オリックス)の存在がある。中学時代には後にプロで活躍する投手と練習試合で対戦した経験があった。当時は山本の存在を知らなかったが、山本がドラフト指名された時に試合をしたことがあることを知り、意識するようになったという。

 武器とするカットボールは山本の投球動画を参考にして磨いてきた。「客観的に見て本当に素晴らしいピッチャーで、将来は日本を背負うピッチャーになると思います。年上、年下関係なく参考にできる部分は盗んでいきたい」と1つ年下の同郷投手から動画を通じて貪欲に学んでいる。

 初の全国大会となった今大会でも「リードしている展開だったので、落ち着いたピッチングが出来たと思います」と2回戦の愛知工業大戦に先発して1失点完投と力を発揮した。

 卒業後については「声がかかればやりたい部分はありますが、上のレベルは僕自身がやりたいと思ってできるわけではないので」と明言を避けたが、全国の舞台で活躍したことは大きなアピールになったことだろう。

 これまで脚光を浴びることのなかった無名投手がもうすぐ大学最高峰の舞台に立とうとしている。大学ラストシーズンで大輪の花を咲かせるか。

文・写真=馬場遼