宮司愛海連載:『Manami Memo』第13回

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フジテレビの人気スポーツニュース番組『S-PARK』とweb Sportivaのコラボ企画として始まった宮司愛海アナの連載『Manami Memo』。第13回は、前回に引き続き、番組で同じくメインキャスターを務める中村光宏アナとのフィギュア対談。3月中旬にモントリオールで行なわれる世界選手権の見どころなどを語ってもらいます。



世界フィギュアの見どころなどを語った宮司アナと中村アナ

宮司 前回の続きで四大陸選手権の話から始めて、今回は世界選手権(3月16日~22日)の見どころまで行きたいのですが、その前に気になることがあって。西岡(孝洋)さんと話す内容は、やっぱり実況アナウンサー同士の情報交換なんですか?

中村 もはや交換というレベルじゃない。西岡さんとはフィギュアだけではなくて、サッカーでもバレーボールでも柔道でも一緒だからね。

宮司 そうですよね、西岡チルドレンですもんね。

中村 いやいや、右腕だね。まあ、西岡さんと僕の2人しかいないんだけど(笑)。

宮司 そもそも西岡さんのお眼鏡にかなう人は、なかなかいないですからね。ただ、前回の西岡さんとの対談ではミツさんの話題はひとつも上がりませんでした(笑)。

中村 マジで!? あれを読んだとき、僕の箇所はカットされただけだと思っていたのに……。

宮司 たまたまですよ。西岡さんには過去を振り返ってもらう話が多かったから。

中村 いやいや、その過去に僕がいたことも多かった(笑)。

宮司 フィギュアの取材現場ではスタッフ全員でご飯を食べながらいろいろ話をして、その後は男子チーム、女子チームで分かれてしまうことが多いじゃないですか。あの後、西岡さんとどんな話をするんですか?

中村 反省会。めちゃめちゃ長いよ。しかも、ふたりだけで。「ここよかったです」とか「あの言葉選びは僕にはできない!」とか(笑)。西岡さんからは丁寧にいろいろとアドバイスをもらって。

宮司 西岡さんを褒めてるだけじゃないですか(笑)。

中村 宮司だって前回の対談で西岡さんのことをものすごく褒めていたよね。

宮司 事実ですから。

中村 それを僕にもやってくれよ。

宮司 日々、尊敬していますって(笑)。でも、わかる気もするんです。西岡さんというフジテレビのフィギュアスケート史を築いてきた方と一緒に仕事をしているといろいろな学びがあります。

中村 宮司はいい後輩だけどさ、僕には冷たいな(笑)。

宮司 ところでミツさんはフィギュアスケートに携わったのはいつからなんですか?

中村 ソチ五輪の終わった後の2014ー15年シーズンからだから、いま6年目だね。

宮司 最初は大変だったんじゃないですか? 私も昨シーズンからフィギュアスケートの担当になって、ほかの現場とは勝手が違うことが多くて戸惑いました。取材への姿勢も含めたところから問われる仕事なので、いまだにその難しさは感じているんですよね。さらに言うと、ミツさんの場合は、実況担当なので常に西岡さんと比較されることもある。相当なプレッシャーがあったんじゃないですか?

中村 ここだけの話、体調崩したもん。プレッシャーがすごくて。

宮司 ミツさんは西岡さんと同じで、真面目で、ずっと勉強されていますよね。

中村 フィギュアスケートは何が難しいって、宮司も感じているだろうけど、自分もテレビで楽しく見ているときは「美しいな」「上手だな」「惜しかったな」でいいのだけど、実況になると演技終了後の自分の発言が、視聴者にとってその演技に対する評価の分岐点になるってこと。最初は、自分の発言が正しかったのかまったくわからなくなって、自信喪失状態になった。

宮司 西岡さんも同じようなことを言っていました。実況アナウンサーはそれが大変ですよね。

中村 勇気を持って言葉を発しないといけなくて。樋口新葉選手が初めて全日本選手権に出場して3位になったとき、「衝撃の全日本デビューです」と言ったんだよね。すごい演技をしたから強く言い切ったのに、その一言を発するのにかなりの重圧があったね。

宮司 その第一声が正しかったどうかの判断は、どうやってするんですか?

中村 正解はわからない。同じ単語を使って喋っても、テンションや音程で印象が変わるのが日本語だし。だから、喋るのは重圧になるんだけど、やっぱり楽しんで演技を見ないと言葉は出てこないんだよね。その狭間たるや…痩せるよね。

宮司 独特の緊張感ですね。ただ、私、ミツさんの声はすごくいいなと思っていますよ。聞きやすいなって。

中村 そうやってもっと褒めてくれよ(笑)。昔は声が高かったんだけど、意識して低くしているんだよね。同じ言葉でも、声の大小や高低だけで印象が変わるからね。

宮司 私はこの四大陸選手権で、やっと一歩進めた感じがしているんです。これまでずっと足踏みしていて、楽しむことよりも先に、「頑張らなきゃ」「ミスしないように」が先に来ていて。そこをようやく乗り越えられた気がしていて。

中村 吹っ切るには、数をこなして経験を積むしかないからね。僕は試合会場でたくさんの演技を見たし、映像でも繰り返し何度も見たよ。取材して試合を見る。これを繰り返していると、どんどん好きになるから言葉が出るようになる。

宮司 私のリポーターという仕事で言えば、選手の歩んできたストーリーを知ることで、言葉に思いが乗るようになりました。そのやり甲斐を強く感じられるようになってきましたね。これってフィギュアスケートに限らず、どのスポーツにも通じるところですよね。目で確かめて、耳で聞いて、感じ取る。

中村 そう。僕たちの感性が試されているよね。大事な部分だよ。

宮司 四大陸選手権の男子の話もしましょうよ。女子の実況を担当されているミツさんが、男子をどう見ていたのか教えて下さい。

中村 やっぱり優勝した羽生結弦選手だよね。

宮司 大会直前でのプログラム変更。ビックリしました。

中村 変更っていうだけでも驚いたし、変更後のプログラムが『バラード第1番』と『SEIMEI』。

宮司 2016年の平昌五輪で五輪2連覇を達成したときの伝説のプログラムですからね。

中村 四大陸選手権のショートプログラム『バラード第1番』を生で見て、久しぶりに『特別』っていう言葉が頭に浮かんだよ。フリープログラムの『SEIMEI』は、『S-PARK』の生放送対応があったから日本に帰っていたので、生で見られなかったのが残念で仕方ないよ。

宮司 素晴らしい演技でしたよ。

中村 去年12月の全日本選手権で宇野昌磨選手に負けて、その直後のフジテレビのインタビューでは羽生選手の表情が疲れ切っていて。コメントにも苦悩が表れていたんだよね。そうしたら、プログラムを『SEIMEI』に変えた。きっと羽生選手も『変更した』ではなく、『戻した』と思われる可能性を理解していたと思う。だけど、あの四大陸選手権の演技で、そういう考えを一切合切吹き飛ばす演技をしてくれた。まさに、オンリーワン。スペシャル。震えたよ。

宮司 ジュニアとシニアの主要国際大会を完全制覇する『スーパースラム』達成ですからね。むしろ、四大陸選手権のタイトルを獲っていなかったのは意外でした。

中村 すごすぎるよね。もっとも印象的だったのは、羽生選手の「スケートはやっぱりいいよね」という内容のコメント。その時の表情も含めて。羽生選手がそう発言したことで、四大陸選手権がアジアやアメリカ、オセアニア、アフリカの国と地域から参加する国際大会のひとつではなく、特別な選手にとっての特別な大会になったと思うな。

宮司 羽生選手への大会後のインタビューを担当させていただいたのですが、「人間として安定してきた」という内容のことを話されていて。ある意味、スケートを極めた人物が、スケートだけではなく、人としてさらなる高みに行こうとしている。その姿に比類ない一面を見た気がしました。 

中村 先駆者がいて、そこを後から歩むことはできるよね。でも、羽生選手は誰もやったことがないことをやる。そこがすさまじいし、特別だと感じてしまう理由だろうね。

宮司 羽生選手にとっては、「自分のスケートを取り戻す」をテーマに臨んだ大会でしたが、ショートは「納得のいく出来」と言っていました。フリープログラムの『SEIMEI』は、世界選手権でさらにいい演技が見られると思うとワクワクします。

中村 四大陸選手権では鍵山優真選手がシニア国際大会に初出場で3位になった。友野一希選手も7位と頑張ったけど、やっぱり16歳で3位はすごかったね。

宮司 鍵山選手は見るたびに大人っぽくなっていきますよね。あの年齢であれだけの安定感のある選手はほかにはいないと思うんです。だけど、インタビューのときは16歳らしい面も見せてくれたんですよ。

中村 どんな風に?

宮司 インタビューって演技後と、順位確定後の2度ありますよね。演技後は清々しい表情でインタビューに来たのですが、3位が決まったあとはちょっと上の空というかパニックみたいになっていて。まさか表彰台に立つことになるとは思っていなかったみたいで。

中村 去年の全日本選手権で3位になって「驚きのジュニアが!」となったけど、あの時とも違ったの?

宮司 四大陸選手権で羽生選手と一緒に表彰台に立てたことに驚いていたみたいでしたね。羽生選手も16歳の時に四大陸選手権で2位になって表彰台に立っている。それに続くことを自分が成し遂げたと実感したんだと思います。だから、落ち着かない気持ちもわかるんですよね。

中村 鍵山選手も、16歳らしさだったり、人間味が溢れている感じがいいよね。

宮司 スタッフによれば、エキシビションの曲のCDを持ってきていないかもと焦っていた部分もあったそうなんです。あと、いつもは一緒にいるお父さまが、四大陸選手権では日本に残られていたので、その心細さもあったなかで、いつもどおり堂々と演技ができるってすごいなって。

中村 「安定感」と簡単に言っちゃうけど、そこに到達するのが本当に大変な世界だからね。

宮司 ジャンプもですけど、スピンもとってもキレイなんですよね。

中村 可能性の塊だよね。

宮司 鍵山選手の場合は、世界ジュニア選手権(3月2日~8日)がありますね。

中村 そうなんだよ。今シーズンの世界ジュニア選手権は、日本の未来を占う大会になると睨んでいるんだよね。男子は鍵山選手と佐藤駿選手、女子が全日本選手権で表彰台に立った川畑和愛選手と、3回転アクセルも跳ぶ河辺愛菜選手。世界で言えば、北京オリンピックに食い込んでくるかもしれないロシアのカミラ・ワリエワがいる。4回転トウループを飛ぶし、世界選手権に出場するロシア3選手に迫るほどの選手だと思う。

宮司 アメリカのアリサ・リウも出場しますよね。

中村 4回転ルッツとトリプルアクセルを飛べるから、間違いなく北京五輪で期待の選手だよ。

宮司 世界ジュニアはフジテレビで放送です。

中村 もちろん。見逃せないよ。3月は世界ジュニアからの世界選手権ですよ。

宮司 今回、日本代表で出場するのは、女子は紀平梨花選手、樋口新葉選手、宮原知子選手。男子は羽生結弦選手、宇野昌磨選手、田中刑事選手。四大陸とは違う展開になるとは思いますが、どうなりますか?

中村 世界選手権はシーズン集大成で、全員が最高の演技を求める場だけど、今年の世界選手権のポイントは、北京五輪に向けた戦いの始まりっていうことだよね。

宮司 有力選手が勢揃いしますからね。

中村 それもあるけど、この大会での成績によって各国の来年の世界選手権の出場枠が決まる。来年の世界選手権では北京五輪の出場権が決まる。

宮司 わ、大事だ。つながっているんですね。

中村 そう。世界選手権の出場3枠を獲得するには、男女とも3選手が出ている今回の日本の場合、3選手のうち上位2選手の順位の合計が13位以内。たとえば、これを保持できずに2枠になると、来年の世界選手権は大変なんだよね。

宮司 2選手のどちらかがミスをしたり、万が一ケガをしたら、13位は難しくなりますよね。

中村 そうなんだよ。ここ数年は世界選手権では3枠をキープしているけど、平昌五輪の日本女子は2枠だったでしょ。2選手合わせて13位以内は簡単じゃないんだ。

宮司 2022年まで、まだ2年あると思っていました。

中村 ノンノン。もう始まるんだよ。宮司は、世界選手権は何を楽しみにしているの?

宮司 女子は日本選手に注目すれば、紀平選手の4回転サルコウですね。樋口選手がトリプルアクセルに成功するかもだし、宮原選手にとっては復活の場なので、彼女の表現力や、美しいパーフェクトな演技も楽しみです。

中村 全部ってことね(笑)。フィギュア界はいま高難度ジャンプの時代になっているけど、アメリカのブレイディ・テネル選手は高難度のジャンプを飛ばないのに四大陸選手権で3位だった。フィギュアスケートの本質というと言いすぎかもしれないけど、スケーティングの美しさがある。そこをどれだけブラッシュアップしてくるのか。宮原選手とともに楽しみだよね。

宮司 スケーティングの美しさとジャンプの難度。このふたつが各選手のプログラムのなかで、どんなせめぎ合いをしているかも注目ですね。

中村 紀平選手は「絶対にジャンプだけでは勝てない時代になる」と言っていたんだよね。北京五輪で金メダルを獲ろうとするなら、ジャンプとプログラムの完成度の2つがカギになるだろうね。

宮司 この世界選手権は出場枠だけではなく、選手たちが2年後に向けた戦い方を模索する大会でもあるわけですね。日本勢にとってはロシア勢と直接対決できる貴重な機会でもあります。

中村 GPファイナルで紀平選手は対決したけれど、シーズン通してプログラムを作り上げての集大成の舞台だからね。

宮司 そこでどんな点数が出るのかも気になりますし、そこを経験することは来季以降につながっていきますよね。

中村 いずれにしろ、これまで見たことのない6分間練習が見られるだろうね。四大陸選手権で受けた衝撃を超えるのは間違いない。

宮司 リンク上の選手全員を目で追い切れますかね。男子はどうですか?

中村 羽生選手とネイサン・チェン選手の争いになるだろうね。そして状態を上げてきている宇野選手でしょう。

宮司 GPファイナル優勝のネイサン・チェン選手は、四大陸選手権は出ていませんでした。

中村 勝負という部分はもちろんなんだけど、やっぱりベストの演技を見たいんだよね。特に羽生選手が目指しているベストな演技がどういうものかを見たいな。

宮司 『SEIMEI』は、四大陸選手権で平昌五輪以来初めてやって、冒頭のジャンプを4回転ループから4回転ルッツに変えた構成でした。ルッツもひとつのカギになるのかなと思うのですが。

中村 もちろん。あとは、宇野選手。全日本フィギュアのチャンピオンが、四大陸選手権はキャンセルして臨む世界選手権で、どんな演技をするのか。ランビエール新コーチと滑る楽しさだったり、挑戦する楽しさを感じながらの大舞台。これは楽しみだよ。

宮司 宇野選手は大きな変化があったシーズンでしたね。環境を変えて臨む初めての世界選手権で、成長した部分や、葛藤を乗り越えたからこその演技の深みといったものを見せてくれると期待しています。

中村 こうやって喋っているけど、すぐ始まるからね。

宮司 そうですね。選手たちの演技を楽しみながら、しっかり選手たちの声を届けられるように頑張ります。

PROFILE
宮司愛海(みやじ・まなみ)
91年7月29日生まれ。2015年フジテレビ入社。
福岡県出身。血液型:0型。
スポーツニュース番組『S-PARK』のメインキャスター。スタジオ内での番組進行だけでなく、現場に出てさまざまな競技にふれ、多くのアスリートに話を聞くなど取材者としても積極的に活動。フジテレビ系東京2020オリンピックのメインキャスターを務める。

中村光宏(なかむら・みつひろ)
84年8月28日生まれ。2007年フジテレビ入社。
東京都出身。血液型:B型。
スポーツニュース番組『S-PARK』のメインキャスター。同じく、スタジオ内での番組進行だけでなく、現場に出てさまざまな競技にふれ、多くのアスリートに話を聞くなど取材者としても積極的に活動。フィギュアスケートの実況は、2014年の全日本フィギュアから担当している。