FC東京・森重真人インタビュー 前編

 1月6日の沖縄キャンプから新システムを導入し、ワンランク上のチームづくりに磨きをかけているFC東京。長谷川健太監督就任後2018シーズンは6位、2019シーズンは2位と、今シーズン目指すものはリーグ戦優勝しかない。昨年、最終ラインからチームを支え、自身のパフォーマンスも好調でベストイレブンにも輝いた森重真人に、昨シーズンについてと今シーズンの挑戦について語ってもらった。



昨シーズンの振り返りと今シーズンの意気込みを語ったFC東京の森重真人

--まず、昨シーズンを振り返っていただきたいのですが、序盤戦(3-5月)は、9勝3分1敗と快進撃が続きました。この好調の要因をどうとらえていましたか?

「開幕から12試合負けなしだったのですが、一昨年戦えた自信と、キャンプで自分たちの課題に取り組んでやるべきことを理解し、モチベーションとかすべてがうまく噛み合っていいスタートを切ることができました。試合では自分たちの強みを理解し、それを最大限に活かす。それでいい結果が得られるという成功体験を一昨年の経験で得ていたので、序盤戦は自信を持って戦えましたし、いい試合ができていたと思います」

--6月から中盤戦に入り、ヴィッセル神戸、ベガルタ仙台に敗れましたが、つづく横浜F・マリノス戦では久保建英選手の壮行試合になって勝利し、連敗を食い止めました。ズルズルいかないところに、一昨年との違いが見られた感じがしました。

「そうですね。連敗して『あれ、また昨年と同じか』ってみんな頭の中によぎったと思いますが、タケ(久保建英)がいなくなるという刺激があった。そこでマリノス相手に自分たちのストロングポイントで勝負して勝つことができたので、また自信がついた感じはしました」

--ただ、今思えば、久保選手が抜けた穴は非常に大きかったですね。

「昨年は、一昨年にはなかったタケというオプションを見つけて、それで前半戦は『よし!』となりました。それで『さあ、これから』という時に、スタメンで出ていた中心選手がいなくなるのはやはり大きな痛手でしたが、タケがいなくなって負け出したら嫌だよねって、みんなで話していたし、監督からもそういう言葉が出ていたので、それを自分たちのモチベーションに変えました。周囲からもいろいろ言われたけれど、今いる選手が結果を残したいという想いが強かったので、割り切って進んでいくしかなかったですね」

 8月は試練の夏がやってきた。一昨年は夏場に失速し、8試合勝ち星がなくなり、最終的にタイトルを逃した。その経験を踏まえての課題の夏だったが、2年つづけて波に乗り切れなかった。8月17日にサンフレッチェ広島に敗れると、10月半ばまでに1勝2分3敗と失速した。

--夏の終わりから少し流れが停滞しました。

「自分たちの戦い方で言うと、暑い夏は難しい部分があるし、そこは仕方がないと思っていました。そのなかで、FWが点を取ってくれれば勝てるし、決めなければ勝てなくなる。永井(謙佑)選手とディエゴ・オリヴェイラ選手が失速してしまうと苦しくなるとは思っていましたし、その中でどれだけ踏ん張れるか。夏は耐えるイメージで戦っていました」

--FC東京の攻撃は永井選手とディエゴ・オリヴェイラ選手が軸でしたが、相手がそこに対応してくると、なかなか点が取れなくなりました。

「そうなった時、いかに打開して点を奪うかは考えていました。ひとつ、そのパターンが見えたのはヴィッセル神戸戦(10月19日)。中盤の髙萩(洋次郎)選手、アルトゥール・シルバ選手、橋本(拳人)選手が点を取りました。FWが停滞している中、2列目の自分たちがというのが芽生えた中での結果だったので、これからいいサイクルになるのかなという感じがあったのですが……」

 終盤戦は神戸戦勝利のあと、いい流れで11月に突入した。大分トリニータ、ジュビロ磐田に勝ち、残り3試合。3カ月ぶりにホームに戻ってきたFC東京は、湘南ベルマーレ、浦和レッズ、そしてアウェーで横浜FMと戦うことになる。

--いつぐらいから優勝を意識したのでしょうか?

「まさにラスト3試合になってからですね。それまではアウェー8連戦をどう乗り切ろうかと考えていたし、優勝というよりは試合に出た課題に、次の試合までの1週間で向き合って結果を出そうと。みんな、その意識が強かったと思います。ただ、ラスト3試合になって首位に立ち、優勝できるところにいたし、ホームに戻ってきて、みんなの前で優勝を決められる。お客さんが4万人入るとか……そういうのでかなり優勝を意識しました」

--最終決戦となった横浜FMに敗れたことがクローズアップされていますが、優勝を逸したのはそのゲームに原因があったと思いますか?

「いや、ホームでの勝負どころの2試合(湘南、浦和)に勝てなかったのがすべてです。優勝がかかった中、久しぶりにホームで試合をすることで硬さが出たのか、それとも優勝のプレッシャーを感じていたのか。いろいろあると思うのですが、単純に言うと自分たちの力のなさではないかと思います。チャンスはあったので、そこで決め切れなかった自分たちの弱さなのかなと」

--横浜FMは昨年68得点でリーグ1位でしたが、FC東京は46得点で7位でした。得点力の差が大きかったと考えますか?

「得点を奪える選手が限られていると、1年通して戦ううえでやはり難しい。そこには競争がないといけないとも思います。もちろん点を取るのはFWだけでなく、中盤や、僕らセンターバックも、セットプレーでどのくらい点が奪えているかというと全然取れていないので、責任があります。得点力は2020シーズンの課題ですね」

 9月から最終節までの9試合で、FC東京は3勝3分3敗で9得点、10失点だった。優勝争いの厳しい戦いのなか、永井とディエゴ・オリヴェイラが徹底的にマークされ、攻め切れない試合が増えた。今シーズンは攻撃のオプションを増やす策を長谷川監督は考え、新しいシステムの導入を決めている。

--ここ2年優勝争いをして、経験を積んできました。この経験を活かし、優勝するために新しい取り組みに挑戦するようですね。

「FC東京がここ2年、優勝を争う順位で戦ってこられたのは、試合の入り、点を取ったあと、試合終了間際、選手交代のあととか、大事なところを1年通して集中してプレーできているからだと思うんです。そのベースがこの2年でしっかりできてきた。今年は優勝するために、違うフォーメーション、違う選手を入れて、点を取るために戦術の部分で新しいことにチャレンジする。それを今シーズンやっていくという監督の言葉を聞いているので、個人的にはすごく楽しみです」

 森重が言う”新しいこと”とは、4-3-3のシステムの導入だった。

(つづく)

森重真人
もりしげ・まさと/1987年5月21日生まれ。広島県出身。広島皆実高校から大分トリニータを経て、2010年よりFC東京でプレーするセンターバック。1対1に強く、ビルドアップ能力にも優れ、セットプレーでは得点力も発揮する、チームの中心選手。Jリーグベストイレブン5度受賞。日本代表Aマッチ41試合出場2得点。身長183cm/体重79kg。