ゲンクの伊東純也は12月26日のオイペン戦(2−1の勝利)で1ゴール1アシストを記録し、今年最後の試合を締めくくった。この活躍で、伊東は全国紙『ヘット・ニーウスブラット』が選ぶ週間ベストイレブンに小林祐希(ワースラント・ベフェレン)とともに選出された。同紙による伊東のベストイレブンは、開幕戦以来だ。



オイペン戦で1ゴール1アシストを記録した伊東純也

 伊東が13分に決めた先制ゴールは、右SBヨアキム・メーレからのパスを右ハーフスペースで受け、切り返しからボールを中に運んで冷静に左足で決めたもの。

「最初、そのまま打とうと思ったけれど、DFが見えたのでかわして打ちました。とりあえずサイドに流し込もうと思いました」

 一方のアシストは、伊東が右サイドから低いクロスを入れたところ、相手DFの身体に少し触ってファーサイドに流れ、これを長身ストライカーのポール・オヌアチュがフリーで押し込んだもの。

 伊東の武器であるクロスは、相手DFとGKの間を低く強く狙ったり、カーブをかけてピンポイントで味方のヘッドに合わせたりするので、相手はそれを意識して中を固めてくる。すると、伊藤はバイタルエリアに空いたスペースでフリーになった味方に横パスを出し、新たなシュートシーンを作り出す。

 第5節のアンデルレヒト戦では、DFを背負いながらボールをキープし、走り込んだFWムブワナ・アリ・サマタに落とすポストプレーでアシストするなど、ゴールをお膳立てするバリエーションは豊富だ。今季21試合で6アシストを記録している伊東だが、映像で試合を見直すと、少なくとも10アシストまで数字が伸びていてもおかしくないほど多彩なチャンスメークぶりだった。

 だが、今季前半戦の伊東には浮き沈みもあった。今季の6アシストのうち、5アシストは開幕10試合で固め取りしたもの。地元紙『ヘット・べラング・ファン・リンブルフ』紙は第11節のスタンダール・リエージュ戦以降、4試合続けて伊東に5点(10点満点)という低い採点をつけ、第15節のゲント戦では途中出場の伊東に4をつけた。

 この時はゲンクの低迷期と重なっており、チームは1勝1分け3敗と、昨季のリーグ王者らしからぬ成績だった。ゲントに0−2で敗れて9位に沈んだ責任をとり、フェリス・マッズ監督は就任半年も経たず解任されてしまった。

 伊東の調子が再び上がっていったのは、11月中旬にハンネス・ヴォルフ監督が就任してからである。

 マッズ前監督は伊東に対し、守備のタスクをかなり多く課していた。だが、ドイツ人のヴォルフ監督は最低限の規律を求めただけで、伊東は攻撃に重きを置いてプレーできるようになった。今回のオイペン戦でも相手が5バックだったということもあり、ヴォルフ監督は「外に張って相手のウイングバックが上がった裏を突けるようにしておけ」と伊東に指示を出していた。

 蘇ったのは、伊東だけではない。右SBメーレも攻撃への自由がより与えられ、左ウインガーのジョセフ・ペイントシルはレギュラーに固定されて自信が戻ってきた。

「ヴォルフ監督がゲンクに翼を取り戻した」

 サイドアタックが活性化されたゲンクを、『ヘット・ベラング・ファン・リンブルフ』紙はこのように評した。

 ヴォルフ監督の初采配となった第16節ムクロン戦は2−2の引き分けに終わったが、伊東は『ヘット・ベラング・ファン・リンブルフ』紙から採点7をもらい、「伊東は再び、昨季のような相手にとって捕まえづらいアタッカーになった。賢く走り込み、多くのチャンスメーク。ただ、”フィニッシングタッチ(決定力)”に欠けた」と寸評された。

 また、11月27日に行なわれたチャンピオンズリーグのザルツブルク戦では1−4と完敗したものの、伊東はこの試合でも採点7をもらい、『光明。加速度の高い攻め込み。アクションは相手の脅威になった』と記されている。

 ムクロン戦とザルツブルク戦を終えてしばらく経ったあと、『ヘット・ベラング・ファン・リンブルフ』紙は伊東のインタビューを掲載した。

「かなり攻撃に専念できています。ほかのタスクをあまりかけられなくなりました。それで自分のフィーリングもよくなりました」。クレマン元監督(現クラブ・ブルージュ監督)とヴォルフ監督は似ているか?「ふたりは異なるパーソナリティですが、まず攻撃のことを考えるという点で、サッカーのアイデアは似通っていますね」(11月30日付け記事から抜粋)

 開幕以来、伊東はゴールから遠ざかっていた。公式戦初ゴールは12月3日。ベルギーカップのアントワープ戦まで待たないといけなかった。68分からピッチに入った伊東は105分、ワンタッチゴールで試合を3−3の振り出しに戻した(結果はPK戦の末、アントワープが勝ち抜け)。

 今季リーグ戦初ゴールを決めたのは、12月7日の第18節セルクル・ブルージュ戦。34分にハーフウェーラインから独走し、最後はミドルシュートを決めた。

「ここまで5アシスト(リーグ戦では)ノーゴールというスタッツは、伊東がフィニッシャーではなくアシスト役であることを示している。しかし、ヤン・ブライデル・スタディオン(セルクル・ブルージュのホーム)で伊東は20メートルの強烈なシュートを決めてフィニッシャーに変貌した」(『ヘット・ベラング・ファン・リンブルフ』紙)

 そして、今年最後の試合となったオイペン戦で公式戦3ゴール目を奪取。伊東はいいフィーリングでウインターブレークに入ることになった。

「今日勝って終われたのは、これからの休みにもプラスになると思います」

 年明けのゲンクは1月4日からスペイン・アリカンテに近いベニドルムに移動し、5日から12日まで冬季キャンプを張る。伊東はそれまで、日本で束の間の休みだ。

 ゲンクは現在8位。ベニドルム合宿はプレーオフ1(上位6チームによる優勝、CL、EL出場権をかけたプレーオフ)に進出するために欠かせない強化の場となる。プレーオフ圏内の6位メヘレンとの勝ち点差はわずか3しかないが、レギュラーシーズン残り10試合のなかに上位7チームとのカードはすべて残っており、ゲンクにとって厳しいスケジュールだ。

「今は6位に届いていないんで、そこに絶対に入れるようにしたいです」

 伊東は2020年の目標をそう語って、スタジアムをあとにした。