フィギュアスケートのシーズン真っ只中。各地で熱戦が繰り広げられていますが、現在のアイススケート人気に大きな影響を与えた英国人スケーター、ジョン・カリーをご存知でしょうか。現在配信中の映画『氷上の王、ジョン・カリー』は、アイススケートをメジャースポーツへと押し上げ、さらに芸術の領域にまで昇華させた彼の生涯を描くドキュメンタリー作品です。


■現在のフィギュアのスタイルの先駆

「ジョンはバレエの表現力とスケートの技術を融合させた最初のスケーターでした」(メグ・ストリーター・ローク、『氷上の王、ジョン・カリー』より)。ジョン・カリーは1949年生まれ。厳格な父親に「男らしくない」とバレエを習うことは許されなかったものの、アイススケートは許可され、7歳のときにレッスンを始めます。卓越した身体能力を駆使し、当時ジャンプとスピードだけで評価されがちだったスケートの世界にバレエの優美さを持ち込み、世界の選手権で活躍するようになります。


■デヴィッド・ボウイに共通する審美眼

「僕がやりたいのは、全身で音楽を表現すること」(ジョン・カリー、『氷上の王、ジョン・カリー』より)。映画『2001年宇宙の旅』で知られる『美しく青きドナウ』や、エレクトロニック・ミュージック界の巨匠ジャン=ミッシェル・ジャールの曲を使用するなど、音楽についても独自のセンスを発揮しました。「ジョンはよくデヴィッド・ボウイと比較された。ボウイに共通する審美眼を、たしかにジョンは持っていた」(ジェイムス・エルスキン、『氷上の王、ジョン・カリー』監督)


■ゲイであることが公表されたアスリート

1976年インスブルック冬季五輪フィギュアスケート男子シングルで金メダルを獲得するが、マスコミはオフレコで語ったゲイであるという発言を報じてしまいます。同性愛が公的にも差別されていた時代に、世界中を驚かせ論争を巻き起こしますが、彼はそれを否定することなく活動を続けました。「彼は壁を打ち破った。彼には自分を表現する勇気があった。彼が残した最大の功績だ」(ジョニー・ウィアー、『氷上の王、ジョン・カリー』より)


■プロとして自らカンパニーを運営

1976年の世界選手権のあと、プロに転向。自身のツアー・カンパニーを起ち上げ、"氷上のバレエ団"を目指します。ロシアのバレエダンサー、ヴァーツラフ・ニジンスキーの『牧神の午後』など、芸術性の高さとショーとしての完成度を極める演目を次々と発表しました。


■町田樹さんほか日本の選手にも影響

元フィギュアスケート選手で、この映画の日本字幕監修・学術協力を担当した町田樹さんは「ともすれば『男が華やかに踊るなんてみっともない』と揶揄されるような時代に、芸術としてのフィギュアスケートをその生涯をもって追求し続けた孤高のスケーターである」と彼を評しています。また、アルベールビル五輪銀メダリストの伊藤みどりさんも「彼なくして、今みなさんが心を震わせて鑑賞している美しいフィギュアスケートは存在しなかったことでしょう」とコメントを寄せています。

ジョン・カリーは1994年4月15日、エイズによる心臓発作のため亡くなりましたが、現在のスケート界の潮流を作り上げた功績は計り知れません。

放送情報

スカパー!オンデマンドにて
「氷上の王、ジョン・カリー」を配信中