森岡亮太がシャルルロワの攻撃陣を意のままに操っている。11月24日のシント・トロイデン戦では、相手DF陣の背後にロビングで美しいスルーパスを通し、カーベ・レザエイのゴールをアシストした。

「点を獲った選手(レザエイ)とのイメージが練習どおりでした。本当に完璧でしたね」



シャルルロワで攻守にわたって活躍している森岡亮太

「華麗な10番タイプ」という印象の強いプレーヤーだけに、ベルギーメディアは森岡のポジションをフォーメーション表でトップ下に置くことが多い。だが最近は、少し低めの位置にコンバートされている。

 シント・トロイデン戦の森岡は、キックオフからしばらくボランチとフォワードをつなぐリンクマンのような役割をしていた。しかし、シャルルロワのプレスがハマらず、シント・トロイデンのパス回しに後手を踏むようになったため、前半15分頃からポジションを変更した。

「チームでブロックを組んで守り、僕もボランチとしてプレーするように指示を受けました」

 森岡はマルコ・イライマハリトラとボランチのコンビを組んだ。シャルルロワはカウンターの意識をより強くして戦ったわけだ。

 シャルルロワとしては、本当はもう少しポゼッションを高めて、より能動的にサッカーをしたいのだという。だが、シント・トロイデン戦ではどうしてもポゼッションがままならず、結局はカウンターに切り替えざるを得なくなった。しかしながら、そのカウンターの質が非常に高かった。

 森岡の魅力は、フェザータッチのスルーパスからビッグチャンスを創出するところだ。シント・トロイデン戦でも「シャペウ」と呼ばれる浮き技でマークを剥がし、遊び心を秘めたプレーでベルギーのサッカーファンを喜ばせている。

 森岡が最終ラインを低めに設定するシャルルロワのボランチを務めていることによって、時にはゴールライン際まで戻り、そこから相手のプレスに動じることなく中盤の空いたスペースに正確なパスを通すことができる。この森岡のパスからシャルルロワのカウンターのスイッチが入っていた。

 レザエイとマッシモ・ブルーノの2トップ、アリ・ゴリザデとママドゥ・ファルのサイドハーフに、森岡が絡んで一気呵成に攻め込む。そのシャルルロワの攻撃は、「ベルギーリーグでナンバーワンのカウンター」(シント・トロイデン戦の解説者ハイン・ファンハーゼブルック)と評されるほどだ。

 また、チーム全体の守備意識も高く、第16節(シャルルロワの消化試合は15)を終えた時点で16失点。この数字は首位クラブ・ブルージュ(6失点)に次ぐリーグ2位タイだ。皮肉なことに、カウンターサッカーからの脱皮を図っているにもかかわらず、結局はカウンターの強みを生かすことによってバランスがよくなり、現在5位という好順位につけている。

「シャルルロワはプレーオフ1(※)の最有力候補だ」(シント・トロイデン戦の解説者ヘールト・デ・フリーハー)

※プレーオフ1=レギュラーシーズン終了後に上位6チームで優勝、チャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグの出場権を争う。

 今季の森岡は第11節を終えたところで6ゴールを記録し、一時は得点王争いの2位につけていた。しかしここ5試合、森岡はゴールから遠ざかっており、シント・トロイデン戦でも相手DFの股下を狙ったシュートは左ポストに嫌われてしまった。

「10番でプレーしていたときは(シュート)チャンスがありましたが、ここ3試合はボランチに下がり、今は完全にディフェンス寄りのポジションなので(ゴールがないのは)しょうがないと思います。今日みたいにチャンスがあってもミドルシュートぐらいですね」

 森岡の守備のタスクは、以前より増えている。シント・トロイデン戦では相手の流動的な中盤に対応しつつ、2トップの位置から下がってくるFWにも対処しないといけない。

 森岡の守備を起点としたショートカウンターもいくつかあった。だが、「そういうシーンもちょいちょいありますけど、ボランチとしての経験値がないので……。でも、その割に守備はできているかなと思います」と、守備面ではまだ試行錯誤のようだ。

 それでもシャルルロワでは、10番のポジションにいるよりボランチでプレーするほうがボールタッチが増える分、自身のリズムが作りやすいという。最近6試合で5勝1分けという好調シャルルロワを、中盤の底から森岡が支えている。

 対戦相手のシント・トロイデンには、GKシュミット・ダニエルとFW鈴木優磨がいた。前節のオイペン戦ではFW豊川雄太が途中から出てきた。現在、ベルギー1部リーグには10人もの日本人選手がいる。ベルギーリーグで日本人対決は、今や毎週当たり前のように行なわれている。

 3シーズン前、森岡はポーランドからベルギーにやって来て、ワースラント・ベフェレンでセンセーションを起こした。その時、ベルギーリーグの日本人プレーヤーはゲントの久保裕也しかいなかった。

 もちろん、過去には川島永嗣(リールセ、スタンダール・リエージュ)という偉大な先人もいた。だが、シャープなドリブルからゴールを量産した久保と、多彩なテクニックでベルギー人を虜にした森岡は、ベルギーリーグにおける日本人フィールドプレーヤーの市場を作ったパイオニア的存在と言えるだろう。そしてその後、冨安健洋(シント・トロイデン→ボローニャ)と鎌田大地(シント・トロイデン→フランクフルトにレンタルバック)が、さらに日本人プレーヤーの価値を高めた。

「裕也がパイオニアですよ。僕もそうですが、彼の活躍にうまいこと乗っかって日本人の評価が上がっているのは間違いないと思います。それはすごく、いいことだと思います」

 森岡はシャルルロワで、もうひとつ違った大きな価値を示していると思う。アンデルレヒトからシャルルロワへの移籍は、本人が思い描いていた未来像とは違ったはずだ。しかし今、森岡は主力プレーヤーとしてベルギー中堅クラブを引っ張っており、もう一度、ステップアップを狙えるステータスを得ている。

 今も昔も、長くヨーロッパでプレーし続けている日本人選手は、例外なく(移籍のみならずレギュラー争いの不条理やケガも含めて)苦悩の時期を経験している。森岡も今、それを克服しつつあるのではないだろうか。

「個人的には上に行きたいし、行くつもりなので、がんばります」

 短く簡潔に、きっぱりと森岡は言った。