オランダ1部リーグのフィテッセに移籍が決まった本田圭佑は11月8日、アベマTVに出演して東京五輪への思いを語り、「自分ならボールをタメることができる」と主張した。 2列目の左利きトリオ――堂安律(PSV)、久保建英(マジョルカ)、三好…

 オランダ1部リーグのフィテッセに移籍が決まった本田圭佑は11月8日、アベマTVに出演して東京五輪への思いを語り、「自分ならボールをタメることができる」と主張した。

 2列目の左利きトリオ――堂安律(PSV)、久保建英(マジョルカ)、三好康児(アントワープ)との関係性についても、「コンフリクト(利害の対立)はない。僕なら彼らを生かすことができる」と語り、共存できることをアピール。フィテッセの本拠地があるアーネム駅でインタビューを終えると、本田はタクシーに乗ってどこかへ去っていった。



フィテッセに移籍した本田圭佑も東京五輪出場を目指している

 来年の東京五輪サッカー競技のベースとなるのが、U−22日本代表だ。11月17日、広島で行なわれるU-22コロンビア代表との親善試合には、A代表からも多くの選手が招集された。いよいよ強化が次の段階に入ったことを感じさせる。オランダリーグからは、堂安、板倉滉(フローニンゲン)、中山雄太(ズヴォレ)、菅原由勢(AZ)と、4人ものタレントがコロンビア戦に参戦することになった。

 本田は「オランダリーグ所属の東京五輪組」に割って入ることができるのか――。たった3人しかオーバーエイジ枠がないなか、状況は厳しいかもしれないが、チャレンジこそ彼のサッカー人生の礎だ。

「勝負事ですから、東京五輪で勝つことは保証できない。だけど、勝つためにやることは間違いない」(アベマTVでの本田)

 東京五輪出場を切望するひと回り年上の存在は、オランダリーグでプレーする若者たちにさまざまな影響を与えるだろう。

 11月8日、第13節フィテッセvsフローニンゲン。後半アディショナルタイム7分、フィテッセ最後のFKを板倉がヘッドでクリアした瞬間、主審のタイムアップの笛の音がスタジアムに鳴り響いた。フィテッセの放り込みを耐えに耐えて守り抜き、2−1で勝ちきった達成感に、フローニンゲンの選手たちは控えも含めて喜びを爆発させていた。

 最近リーグ戦5試合で4勝1分けと、フローニンゲンは調子がいい。もともと守備には定評があったが、ここにきて攻撃陣の調子が上がり、非常にバランスのいいチームになった。現在、フローニンゲンは9位だが、3位のPSVとの差はわずか勝ち点4しかない。

 フローニンゲンの快進撃は、強豪のPSVに1−3、アヤックスに0−2と、9月下旬に2連敗を喫してからスタートした。

「あの2試合は大きな経験になった。今まで感じたことのないようなスピード感、うまさを感じることができた。センターバックをやっている身として、本当に気が抜けない。チームとしても90分間ハードワークを続けることを、あの2試合を機に一層集中するようになった。その成果が今、こうやって出ている」(フィテッセ戦後の板倉)

 コパ・アメリカ以降、A代表での活動が続いていた板倉は、今回のU−22日本代表入りについて、「アンダー23世代は全員が五輪代表に入りたいと思っている。そこに入るのは簡単なことではないが、自分は絶対に入ってやるという気持ちで練習でも試合でもやる」と語った。

 その言葉がさらに熱を帯びたのが、「東京五輪への思いを教えてほしい」という質問を受けた時。

「絶対に出たい。金メダルしか見てない。その金メダルに自分が関わる……それだけかなと思います」

 本田がフィテッセに来たことについて、板倉はこう語る。

「小さな頃から見ていた選手なので、一緒にピッチでプレーできたらよかったんですけれど、それは次回のお楽しみということで。会うことがあれば、しっかり挨拶したいです」

 また、「本田選手は同じ『東京五輪組』になろうとしているが?」という問いかけには、「(本田は東京五輪を)狙ってますからね。そこでの勝負もあると思うので、負けずにがんばっていきたい」と語った。

 一方、フローニンゲンからPSVにステップアップを果たした堂安は、結果を出せずに苦しんでいる。11月10日のヴィレムⅡ戦ではフル出場を果たしたものの、不振のチームを救うことができず、1−2で負けてしまった。ここ4試合でPSVは1分け3敗と勝利から遠ざかり、首位アヤックスとの差は一気に勝ち点11まで広がってしまった。

 堂安はヴィレムⅡ戦の前半、右サイドハーフとしてプレーしたが、後半からトップ下を任された。

「ウインターブレーク明けから、本当に強いチームか弱いチームかの差が出てくると思っている。それまでは弱いチームがたまたま首位に立ったりすることもあるが、ウインターブレーク明けから本当の実力が出るので、アヤックスにこれ以上差を広げられないようにしないと」

 堂安にとって、U-22代表に合流するのは初めてのこと。「U-22でも、A代表でも、呼ばれれば100%でやるのが選手」と語る。

「(年代別代表は)U-20ワールドカップ以来。あれからすごく成長している選手もいると思うし、僕もそういう(成長した)姿を見せないといけない。(A代表の監督でもある)森保一監督の目は、僕に厳しく向くと思う。『何してんねん』と言われるのではなく、『さすがだな』と言われるように、A代表の時以上に”ピリピリ感”を持って迎えたいと思う」(ヴィレムⅡ戦後の堂安)

 板倉が「金メダルを狙ってます」と言っていたことを伝えると、堂安はフローニンゲン時代のふたりのエピソードを教えてくれた。

「ずっと僕たちは一緒にいた。練習が終わったあとも彼の家に行った。俺が熱く語っているのを、彼は『本当にそうだ』って賛同してくれる。サッカーの話がほとんどだったので、自然にオリンピックの話になっていた」

 堂安と板倉は、東京五輪で金メダルを取ろうと誓いあった。

 19歳の菅原由勢は、10月のブラジル遠征からU-22日本代表に加わるようになった。

 11月10日のエメン戦(3−0)は結局、出場機会を得ることができなかった、だがそれでも、菅原は現在2位と好調のAZにおいて、オランダリーグとヨーロッパリーグでしっかり試合に出続け、出場時間が足りない時にはリザーブチームの一員としてオランダ2部リーグで実戦経験を積んでいる。

「U-17ワールドカップとU-20ワールドカップに出たので、次の目標はオリンピック。そこでの活躍がA代表にもつながってきます。年齢で言えば僕は一番下ですが、誰にでも選ばれるチャンスはあると思います。金メダルへの意識は100%あるし、自国開催というプライドもある。やっぱり選ばれたい」

 AZvsエメンには中山が観戦に駆けつけ、試合後はスタジアムのロビーで菅原のことを待っていた。繰り返しになるが、オランダリーグには本当にU-22日本代表選手が多く集まったものだと感じ入る。この状況について菅原は冷静に語る。

「日本の若手が海外に行っていることはいいこと。ただそれ以上に、日本代表が強いということを証明しないといけない。海外にただ来ているんじゃなくて、勝たせるために海外に来ていると思う。それをしっかり結果として出したい」

 この週末に会ったU-22日本代表選手たちは皆、「自分が五輪に出たい。そこで金メダルを取りたい」という思いで一致していた。たった18人の出場枠を巡る競争が本格的に始まったのだ。