文=神高尚 写真=Getty Images

堅固かつ柔軟な守備、リーグ3位の99.3失点

5連勝と波に乗るレイカーズ。ここまでアシストリーダーとなっているレブロン・ジェームスをポイントガードに固定し、アンソニー・デイビスとの強力なデュオだけでなく、シューターも揃えたことからオフェンス力が注目されますが、平均109.8点はリーグ15位と凡庸で、3ポイントシュート成功率は31.4%と低調。思い描いていた『ショータイム』は実現できていません。

それでも勝利を積み重ねた要因はリーグ3位の99.3失点と固いディフェンスにあります。

最大の特徴はリーグ首位の8.2ブロックを記録するリムプロテクターたちの活躍にあり、特にデイビスの3.0ブロックは単なるブロック数に留まらず、シュートを打つ選手に多大なるプレッシャーをかけています。レイカーズはペイント内から平均43本のシュートを打たれていますが、その半分以下の20.8本しか決められていません。ドライブを許すシーンは頻繁に出てくるものの、フリーで打たれるシーンはほとんどなく、ヘルプディフェンスが機能しています。

一方で、打たれた3ポイントシュート数は31本でリーグで7番目に少なく、インサイドへの信頼からアウトサイドまで強気に追えています。ダニー・グリーンとエイブリー・ブラッドリーというペリメーターディフェンスに定評のある選手を並べているにもかかわらず抜かれるシーンが多いのは、戦略的に3ポイントシュートを止めに行っているからです。

ディフェンスもレブロンとデイビスの特徴を生かした戦略が興味深く、スターターにはジャベール・マギーを加えたビッグラインナップを組んでリムプロテクト能力を大いに使いますが、試合中にはデイビスをセンター、レブロンをパワーフォワードにしたりと状況に応じて様々なラインナップ構成にしています。

スモールラインナップに逆行するように2人のビッグマンを並べるのは、スイッチディフェンスなどで1人がアウトサイドに引き出されても、必ずもう1人がカバーに回れる形を作るため。ディフェンスの体形が崩れてもローテーションを遂行するとともに追い込む方向を絞るようなチームディフェンスが整備されています。

それでもビッグマンを2人並べるとトランジションの攻防で不利になるため、走り合いを挑まれると劣勢になりますが、そこですかさず運動量の多いウイングを増やして対抗します。ここでレブロンがビッグマン役としてヘルプディフェンスに加わることも一つの強み。基本的なシステムを変えないままスモールラインナップに移行できています。対戦相手の状況に応じスムーズにディフェンスを修正できてることが好成績に繋がっているのです。

複数のリムプロテクターでインサイドを固めるディフェンスと、スモールラインナップでトランジションに適応したディフェンスを使い分けているレイカーズ。そのディフェンスをさらに強固かつ柔軟にしているのがベンチから登場するドワイト・ハワードです。平均21分のプレータイムながら8.2リバウンド、2.3ブロックを記録するかつての最優秀守備選手は、スタッツだけ見れば『復活』と言いたくなりますが、実際は全くの別人に生まれ変わっています。

現代NBAに適合させるためのダイエットで信じられないくらい細身になったハワードは、フィジカルで勝負するのではなく、軽やかな動きと献身的な運動量でコートのどこからでも高速ヘルプでシュートブロックに飛んできます。その動きはガード相手のペリメーターディフェンスでも発揮されており、スピードで振り切られることなく最後までついていくようになりました。ディフェンスを使い分けているレイカーズですが、どちらでも対応できる現代的な選手になったハワードは重宝される戦力となっています。

その運動量とスピードはオフェンスでも発揮され、パワーで強引に攻めるのではなく自分が使いたいスペースを空けておき、味方のパスを引き込むとスピードでディフェンスを振り切ってフィニッシュしています。同じくオフェンスリバウンドにも精力的に参加し、フィールドゴール成功率は脅威の79%を記録。攻守に重要な役割を果たしています。

かつてレイカーズに所属していた頃のハワードは不平不満が多く、チームメートのために動く選手ではありませんでしたが、今のハワードは黒子に徹し、常にチームメートのためにハードワークしています。レブロンとデイビスという豪華デュオが中心のレイカーズで、見た目以上にバスケに取り組む姿勢が変わったハワードが、レイカーズの5連勝に多大なる貢献をしています。