全日本大学選手権(インカレ)直前対談で、今回お話を伺うのはこの2人。1番打者として、一塁手としてチームを引っ張る神樹里乃(スポ4=北海道・とわの森三愛)と、三塁手として、ポイントゲッターとしてチームを勢い付ける岡田夏希(社4=神奈川・厚木…

 全日本大学選手権(インカレ)直前対談で、今回お話を伺うのはこの2人。1番打者として、一塁手としてチームを引っ張る神樹里乃(スポ4=北海道・とわの森三愛)と、三塁手として、ポイントゲッターとしてチームを勢い付ける岡田夏希(社4=神奈川・厚木商)だ。 内野の要として長年早大を支えてきた彼女たちも、いよいよ大学最後の大舞台に臨む。勝負の鍵を握る二人は、インカレに向けて何を思い、何を語ったのだろうか。

※この取材は8月20日に行われたものです。

なんとしても塁に出たい(神)


リードオフマンとしての決意を語る神

――春季リーグ戦以降のチームの戦いを振り返っていかがですか

 試合を重ねるごとに、どんどんチームらしくなっていったかなと思います。

岡田 冬を越えて春は(秋より)チームが良くなって、そこより今の方が全然いい感じがします。

――神選手は1番での起用が多かったですが、リードオフマンとしてのご自身の役割はどの程度果たせたと感じていますか

 全然果たせていないと思います。1番バッターは特に初回の攻撃は絶対に出塁しなければいけないと思っているのですが、それができない試合も多いので。打って塁に出ればチームは盛り上がるけど、エラーでもフォアボールでも、なんとしても出たいという強い気持ちを持って打席に立ちたいと思っています。

――岡田選手は6番や7番として出場する機会が多いですが

岡田 春からそんなに調子は良くなかったんですけど、良くないなりに『つなぐ』ということを意識していました。早稲田はダブルクリーンアップ制(8番打者をもう一人の4番打者と考え、打線の中に2つのクリーンアップがあると想定する打線)を採っているので、自分の後ろの『もう一人の4番』に良いかたちでつなげるようにしていたんですけど、それができた部分とできなかった部分があったかなという感じです。

――チームとして、好機を得点に結びつけられない展開が多かったようにも感じましたが

岡田 自分たちもそれを課題だと認識しているので。そういう状況を得点に結びつけられるよう個々が意識していて、今はかなり改善されてきたように感じます。

 今まではチャンスすらつくれないこともあったので。ことしはチャンスはつくれているから、あとはそこで一本ヒットを出して、早稲田の流れで試合をしていきたいと考えています。

――東日本大学選手権(東日本)での2回戦敗退という結果に関してはどのように考えていらっしゃいますか

岡田 力不足を感じたんですが、良い捉え方をすれば、自分たちの現状を知れたということだと思います。そこから今とても良い練習ができているので、プラスに捉えられていると感じています。

 悔しかったけどね。

岡田 うん。

――神選手は、春季リーグ戦では4割以上の打率をマークしながら東日本では無安打でした

 変に『最後の東日本』と意識してしまっていたのだと思います。いつも通りやれば全く打てない相手ではなかったし、むしろ知っている相手だったので。対策もできていたはずだったので、力が入って硬くなってしまったかなと思います。

――富士大は東日本で3年連続の対戦でしたが

 ピッチャーも同じだったんですけど、今まではストレートとライズのピッチャーだったのに、ドロップを投げてきたのが去年と違う印象でした。そこは私たちにとって予想外ではありました。

――富士大対策はしていたのでしょうか

 富士大はやっぱり意識していました。組み合わせが決まってから、富士に勝てるか勝てないかが自分たちが上に行くための分かれ道だと思っていたので。意識している相手に勝ち切れるかどうかが、東日本でもインカレでもポイントになってくるのだと思います。

――春からの試合で最も印象に残っているのはどの試合ですか

岡田 私は東京富士大との試合。

 一緒!

岡田 あの試合はしびれましたね(笑)。

 でも楽しかったよね。点数が入らなかったのもそうだけど、0点に抑えなきゃ勝てないっていうのも分かっていたので。絶対ミスできないと思っていました。

岡田 勝ったらインカレ出場決定、負けたら二次予選になる試合だったし。けっこうみんな、懸けてたよね。

 あそこでチームがぐっとまとまった感じもしました。

――男子部は今季、全日本総合選手権への出場を決めるなど躍進が続いています。刺激を受けることなどはありますか

 私はありますね。去年インカレで準優勝しているし、ことしも春は優勝、東日本も準優勝しているので。私たちはタイトルを取れていないので、もっと頑張ろうと思います。

岡田 私もすごく刺激を受けますし、男子部でサードを守っている高橋君(尚希、スポ3=宮城・泉館山)がすごく良い守備なので、参考になります。

 バッティングでも、練習は一緒にできないんですけど、それ以外で話をするときにアドバイスを貰ったりしますね。同期とも後輩とも喋るし、試合の結果を見て「ナイスバッティング」みたいなことを言い合ったりするし。良い関係を築けていると思います。

岡田 切磋琢磨しながらね。

神は生きものみんな友達みたい(岡田)


公私ともに仲が良い二人

――お二人は早稲田の中でも特に声でチームを盛り上げています。試合中、投手にはどのような声をかけているのですか

岡田 私は中身のあることはあんまり言ってない(笑)。「いいよいいよ、大丈夫。いつも通り!」みたいな。キリ(神)はけっこう配球のこととか言うよね?

 そうだね。ピッチャーが視界を広げられるような、いろいろなことを考えられるような言葉をかけています。大丈夫だよって、「ナイスボール!」もたくさん言っている気がします。

――お二人とも強豪校出身とのことですが、高校時代から交流はあったのでしょうか

 私はとわの森で、オカ(岡田)が厚木商なんですけど、厚木商のグラウンドで交流試合をしたりしていました。監督同士も仲が良かったし。

岡田 私が印象に残っているのは、神のバッティンググローブに『ゴリラ』って書いてあったのが……。

 おい(笑)!

岡田 だから神のことは覚えてました。ゴリラっぽいって自分で分かってんだ~って。

 違う違う!てかゴリラっぽいって思ってたの?

岡田 うん。だから神は覚えてた。

 違くて!先輩からもらったやつだし、ゴリラじゃなくて本当は右手と左手で『ゴリラ』『パワー』なんですよ。

岡田 (笑)。でもけっこう試合はしたよね。

――神選手は北海道出身ですが、なぜ東京の早稲田大学に進学されたのでしょうか

 廣瀬(夏季、スポ4=北海道・とわの森三愛)と高校が一緒だったんですけど、廣瀬が早稲田に行くって言ったからです。一緒にソフトボールがしたかったので。あっちはスポーツ推薦で楽々だったんですけど、自分は自己推薦だったので、厳しい小論文と面接をくぐり抜けて入学してきました(笑)。

――岡田選手は同期の古川副将(晴野、スポ4=神奈川・厚木商)と同じ高校の出身ですね

岡田 ここはもうずっと一緒ですね。小学生の時に出会って中学、高校、大学と同じなので、運命を感じています。

――お二方に他己紹介をしていただきたいです。まずは神選手からお願いします

 岡田は……なんだろう、ソフトボールのことになると特に負けず嫌いです。みんなそうかもしれないんですけど、チームが勝って自分も打たないと嬉しくないという気持ちが人一倍強いです。

岡田 まあそれは、うん。

 それとポンコツで面倒くさがり屋で、あと面食い(笑)。

岡田 おい~!(笑)それは言わなくていいって!

――続いて、岡田選手から見て神選手はどのような方ですか

岡田 すごく努力家で、チーム一練習しているんじゃないかってくらい真面目です。練習終わって「帰ったのかな」と思ったらトレーニングルームにいて、そこからまたグラウンドに出てきて練習するみたいな。あとは内野のお姉ちゃんというか(笑)、あれやってこれやってと言ったことをやってくれるので、助かっています。それと自炊をちゃんとしますね。

 自炊はオカもしてない?

岡田 いやでも、自分はお昼とか買ってしまったりするんですけど、いつも神はちゃんとしてますね。あとあれだ、男友達が多い(笑)。

 ねえ~、言い方が良くない!

岡田 たらしってわけじゃないですけど、生きものみんな友達みたいな(笑)。それともう一つ言えば、お酒が強い。

 (岡田は)お酒弱いもんね。すぐデレデレしちゃう。

岡田 デレデレしないよ!しないしない。

去年の4年生の気持ちも背負って、絶対に勝ちたい(岡田)


岡田は最後の大舞台に向け、誰よりも熱く闘志を燃やす

――インカレの話に移らせていただきます。初戦が2年前の優勝校である強豪・環太平洋大(IPU)であることに関してはいかがですか

 もう、どこが来ても勝ってやろうと思っているので。

岡田 むしろモチベーション上がったよね。やってやろうという気持ちになりました

――今までのインカレでの思い出といえばなんでしょうか

岡田 それは去年ですよ。自分のプレーで4年生を引退させてしまった申し訳ない気持ちがあって、自分はそこから上がるか下がるかだと思っていました。去年の4年生の気持ちも背負って絶対に勝ちたいと思っているので、今までよりも今年のインカレに対する思いは強いです。

 自分は2年前のインカレで、4年生の代打で出していただいたのに三振してしまったことがすごく心に残っています。今、試合に出していただけるようになってからも、打てるようになった反面、見逃し三振が増えてしまって。今まではフルスイングではなく当てにいくバッティングだったからバットに当たりはしたんですけど、強く振るようになってから『打てない球』がでてきてしまっていて、ボールを選びすぎて見逃し三振が多くなっているので。それをなくしていきます。

――現在のチームの調子はいかがですか

 チームは今、登り調子だよね。

岡田 1年生から4年生まで全員が勝ちたいと思っています。1年生は特に、泥だらけになりながらランナーやってくれたり。感謝だよね。

 1年生が「この4年生とまだソフトをやりたい」って言ってくれているのが嬉しいです。自分たちもまだ1年生とソフトをやりたいと思うし、2年生とも3年生ともまだやりたいと思っています。本当に『全員』でチームをつくって、戦いに臨もうとしている感じがすごくあります。

岡田 うん。1年生はすごく気を遣ってくれる。

 練習で1年生が投げてくれたりするんですけど、自主練も手伝ってくれます。自分は日立との練習試合の前日にたくさん投げてもらったおかげで感覚をつかめて、その試合はツーベースを2本も打てたし。ピッチャー以外の3人も朝早くからすごく準備してくれて、チームを勝つための良い状態にしようとしてくれています。2年生の石原(伶奈、創理2=東京・富士見)やリリ(チュウ・ユッティン、スポ2=香港・聖隷保)も常にバットを持ってたくさん振ってくれているし、プレーは一緒にできないけどみんながチームの力になってくれています。だからチームの調子が上がっているし、そういうことがチームにとって大きな力になっているんだと思います。

――個人的な調子はいかがですか

 バッティングは少し前まで駄目だったんですけど、チームの調子と一緒に上がってきている感じはあります。練習で立てる打席もどんどん少なっていると感じますし、本当に最後なんだな、無駄にしないように頑張ろうと思います。

岡田 自分は8月に入ってからどんどん調子が良くなってきています。この前の壮行会の時に先生(吉村正監督、昭44教卒=京都・平安)からお話があったんですけど、「小学生の時から何万時間と積み重ねてきて、その1球を無駄にするのか」と言われて、本当にその通りだなと。今までずっと積み重ねてきたその1球を絶対に捉えたい、無駄にしたくないと強く感じました。

――お二人にとって学生最後の大舞台となりますが、これだけはやり遂げたい、というものはありますか

 ヒットを打つ。

岡田 私もヒットを打つ。

 できればツーベース、できればスリーベース、できればホームラン。アウトになりたくない。

岡田 自分で決める場面が来れば決めたいし、自分以外にも良いバッターがたくさんいるので、そのバッターたちが高まっている良い場面で打たせてあげられるような状況をつくりたい。でも自分が決めるシチュエーションで回ってきたら絶対に自分が決めるという、強い気持ちを持って臨みたいです。

――では最後に、意気込みをお願いします

 出し切る。

岡田 私も、全てをやり切る。小学3年生からソフトボールをやってきて、お世話になったコーチや先生がたくさんいるので。そういった方々に、やり切って恩返ししたいと思います。

――ありがとうございます

(取材 篠田雄大、編集 望月優樹)


長きにわたってチームを支える二人が、インカレでも大暴れします!

◆神樹里乃(じん・きりの)(※写真左)

1997(平9)年4月10日生まれのB型。162センチ。北海道・とわの森三愛高出身。スポーツ科学部4年。内野手。右投左打。友達が多いという神選手。その社交性の高さは、通学路の途中にいる犬と意気投合して仲良くなってしまうほど。一方、競技には誠実で、岡田選手、増子選手と1日500本以上素振りをするのがインカレ前のルーティンなのだそうです。持ち前の明るさとひたむきさで、大舞台でも輝きを放ちます!

◆岡田夏希(おかだ・なつき)(※写真右)

1997(平9)年8月8日生まれのB型。158センチ。神奈川・厚木商高出身。社会科学部4年。内野手。右投右打。2年連続『言葉につまる』癖を対談で指摘された岡田選手。『テニス』という単語が出てこず口ごもってしまったことを部内でいじられ、誕生日プレゼントに『テニス』と刺繍が入ったバッティンググローブがプレゼントされたそうです。そんなお茶目な一面もありますが、ひとたびソフトボールの話になれば真剣そのもの。13年間の競技人生で積み重ねた熱い思いを、インカレにぶつけます!