福田正博 フットボール原論

■2022年のW杯カタール大会に向けた戦いが、いよいよ始まる。9月5日の強化試合を経て、9月10日から始まるアジア2次予選は、40カ国が8グループに分かれてホーム&アウェーで戦い、各組1位と、各組2位のうち成績上位4チームが最終予選へ駒を進める。森保ジャパンはどのようなメンバー構成で臨むのか。元日本代表の福田正博氏が語る。

 日本代表はW杯2次予選でミャンマー、モンゴル、タジキスタン、キルギスと戦うが、8グループのなかで組み合わせに恵まれたと言っていい。ただし、サッカーがあらゆるスポーツのなかで、もっともジャイアントキリングが起こりやすいと言われている以上、どれだけ実力差があろうと、油断することなく戦ってもらいたい。

 W杯予選を戦うことは、日本代表のチーム力の向上につながる機会であるのは間違いない。同時に、私はW杯2次予選が東京五輪代表チームの強化の場にもなりうると考えている。そうした点から、今回のメンバーで久保建英ら期待の若手から誰が招集されるのかが、興味深いポイントのひとつになる。



久保建英ら若手のうち誰が呼ばれるのか注目が集まる

 これまで、東京五輪に向けたチーム強化があまりうまくできていない印象がある。6月のコパ・アメリカ(南米選手権)に出場した東京五輪世代と、準優勝したトゥーロン組を融合させ、オーバーエイジ枠候補の選手も招集しながら、チームを構築していく好機と言える。

 W杯予選は国際Aマッチデーで、各クラブから招集が可能だ。久保建英(マジョルカ)、安倍裕葵(バルセロナB)らがクローズアップされているが、この夏はふたり以外にも東京五輪世代の多くの選手が海外クラブに移籍している。

 前田大然はポルトガル1部のマリティモへ、中村敬斗はオランダ1部のトゥウェンテ、菅原由勢はオランダ1部のAZへ。マンチェスター・シティに移籍した食野亮太郎も、スコットランドのハーツにレンタル移籍してプレーすることが決まった。

 森保一監督は、選手が所属チームで力をつけることが日本代表の底上げにつながると考えている。そのためAマッチデーで招集可能だからといって闇雲に呼ぶことはしないだろう。しかし、海外移籍した選手個々の各クラブでの状況を鑑みながら、一度は手もとでコンディションをチェックするはずだ。

 東京五輪の代表に入れるのは18選手のみ。W杯なら23名をメンバー登録できる。つまり、GKに3選手を選んでも、20人のフィールドプレイヤーは各ポジションに2選手ずつ連れていける。一方、五輪はGK3選手とオーバーエイジ3枠のほかにメンバー入りできるのは12人。この競争を勝ち抜かなければならない。そんななか、23歳以下の選手がどんどん台頭してきているのが現状だ。

 それでも、オーバーエイジ(OA)枠は使うはずだ。過去の五輪代表では2000年シドニー五輪は楢崎正剛、2004年アテネ五輪は曽ヶ端準のGKをOAで招集した。これはGKが圧倒的に経験値の問われるポジションで、若手GKがクラブでなかなかレギュラーを獲得するケースが少なかったからだ。

 ただ、中村航輔のいた前回リオ五輪や、権田修一のいたロンドン五輪などは、GKでのOA招集はなかった。そして、今回も広島で成長を続ける大迫敬介がいるため、OA枠を使わないことが予想される。そのため、フィールドポジションで手薄なところでOA枠の選手を起用するのではないか。

 仮に1トップに大迫勇也(ブレーメン)、ボランチに柴崎岳(デポルティーボ・ラコルーニャ)、CBに昌子源(トゥールーズ)をOAで招集し、南米選手権と同様に4−2−3−1で戦うとすると、「3」にあたる攻撃的なポジションは、誰を取捨選択するか非常に悩ましいことになる。

 すでに日本代表で主軸になっている堂安律(フローニンゲン)のほかに、久保、安倍、三好康児(アントワープ)とタレント揃いで、スピードが武器の前田もいる。前田は、前線からの守備という面でも貴重な存在だ。さらには中村や食野もいる。

 ネックは、W杯予選に招集できても、五輪は所属クラブが拒否すれば選手を招集できないことだ。メンバーを海外組で固定すると、招集できなかった場合の影響が大きい。この問題を抱えながら、森保監督が1年でどういうメンバーを選んでいくか興味深い。

 ボランチにはトゥーロン組の齊藤未月(湘南ベルマーレ)がいて、南米選手権で通用することを証明した板倉滉(フローニンゲン)もいるが、東京五輪を見据えてW杯アジア2次予選を戦う場合、ポイントになるのが選手のユーティリティー性だ。五輪のフィールドプレイヤーは15人。板倉のようにCBもSBもボランチもできる選手は貴重になる。そうした視点に立っても、W杯2次予選は、すべての選手たちが複数ポジションに適正があるかを試すには絶好の機会でもある。

 ピッチコンディションや気候などが、日本で戦う場合とはまったく異なるW杯2次予選で、そうしたテストの意味合いが強い戦いをすると、足元をすくわれかねない懸念はある。しかし、いまの若い選手たちはアンダー世代の国際大会を経験し、海外移籍するたくましさも持ち合わせている。その心配はほとんどしなくていいだろう。

 彼らの最終目標は五輪ではなく、『東京五輪経由カタールW杯行き』だ。彼らには、ここから芽を出していってもらわなくては困る。一方で、ここまで日本代表に招集されていない五輪世代には、選手としての夢であるW杯出場を実現させるために、さらなる向上心を燃やしてJリーグでアピールをしてもらいたい。

 若手のモチベーションが高まっているなか、東京五輪代表と日本代表の2足のわらじを履く森保監督が、結果を残しながら、2つの代表チームをどのように強化していくのか、見守っていきたい。