3連覇への道がいよいよ険しくなってきた。 J1第24節、川崎フロンターレは清水エスパルスをホームに迎え、2-2で引き分けた。 同じ日に行なわれた試合で、首位のFC東京がコンサドーレ札幌と1-1で引き分けたため、川崎にとっては勝ち点差を…

 3連覇への道がいよいよ険しくなってきた。

 J1第24節、川崎フロンターレは清水エスパルスをホームに迎え、2-2で引き分けた。

 同じ日に行なわれた試合で、首位のFC東京がコンサドーレ札幌と1-1で引き分けたため、川崎にとっては勝ち点差をつめるチャンスだったが、それどころか、前節終了時点で5位だった横浜F・マリノスが名古屋グランパスに5-1と勝利したことで、川崎は3位から4位へと転落した。

 これで川崎は、リーグ戦の最近5試合連続で勝利なし(2敗3分け)。7月27日(J1第20節vs大分トリニータ)以来、およそ1カ月も勝利の女神に見放されている。



同点ゴールを決めた小林悠(一番右)がチームメイトに檄を飛ばすが...

 今季J1も、すでに全日程の3分の2以上を消化した。残り10節の現段階で、川崎は首位との勝ち点差8。3連覇は絶望的、とまでは言わないまでも、かなり厳しい状況に追い込まれているのは間違いない。

 いつもは、どんな質問に対しても柔和な対応を見せる川崎の鬼木達監督も、清水戦後の記者会見では心なしか表情がこわばって見えた。

「失点の仕方で反省しないといけないことを、何試合か続けている。チームでも、個人でも改善しなければいけない」

 川崎がJ1屈指の攻撃力を備えたチームであることは、今さら言うまでもないだろう。当然、対戦相手はそれを警戒し、守備に重点を置いた戦いを挑んでくる。

 つまり、川崎が得点することに苦労し、なかなか勝利に手が届かない事態は、いわば想定内。川崎のようなチームが勝ち続けるためには、避けては通れない道、と言ってもいいかもしれない。

 だが、川崎が泥沼にはまっている理由は、得点力不足ではない。指揮官も指摘しているように、点が取れないことよりも、むしろ”安い失点”の多さにあるのだ。

 この試合でも、川崎は前半14分に鮮やかなパスワークで先制しながら、30分に同点に追いつかれてしまう。しかも、1失点ならまだしも、後半20分には自陣での不用意なパスをカットされ、絵に描いたようなショートカウンターで逆転ゴールまで許した。

「自分たちのミスで2失点目。そうなれば、相手はフルパワーで守ってくる。もったいないゲームだった」

 そう言って嘆くのは、MF中村憲剛。鬼木監督同様、「失点の仕方」を課題に挙げ、こう語る。

「(先制したあとに)追加点のチャンスがありながら取れないときでも、今までなら失点しなかった。(2-2で引き分けた)前節のベガルタ仙台戦もそうだが、(試合の)流れと関係ないところで失点して、向こうのリズムにしてしまっている」

 昨季を振り返れば、川崎はJ1最多となる総得点57(1試合平均1.67)を記録する一方で、総失点27(同0.79)もJ1最少だった。

 ところが、今季は第24節終了時点で、総得点37(同1.54)、総失点22(同0.91)。J1連覇中の川崎に対する警戒が強まるなか、ある程度の得点減は仕方がないとしても、失点増が気になるところだ。

 川崎は今季ここまで、11試合の引き分けがあるが、これはJ1最多。と同時に、敗戦は首位のFC東京(5試合)を下回る3試合しかないことを考えると、”勝ち切れない試合”が昨季王者の足を引っ張っているのは明らかだ。

 11試合もある引き分けのうち、スコアレスドローは3試合に過ぎず、点を取っているのに勝てない試合がほとんど。とくに最近は失点増の傾向が顕著で、勝利に見放されている最近5試合の総失点は10を数える。

 とはいえ、一時は1-2と逆転されながら、なりふり構わず逃げ切りを図る清水の守りをこじ開け、同点に追いつくあたりは、さすが川崎。余計な失点が多いとも言えるし、よく追いついたとも言える試合は、だからこそ、「引き分けという結果が一番(評価するのが)難しい」と中村。明確な課題が見えにくくなり、勝ち切れない試合が続く要因となっているのかもしれない。

「失点しないのは大事だが、あまりそこに神経質になってもよくない」

 そう話す中村は、「押し込んだときの緻密さと丁寧さ」を課題に挙げ、あくまでも攻撃的なスタイルを突き詰めるべきだと指摘するが、J1王者らしからぬ試合が続く流れには、なかなか歯止めがかからない。

 鬼木監督は、選手たちを気遣うように語る。

「ナーバスになり過ぎて、普段出ないようなミスが起きている。いろんなプレッシャーがあるだろうが、チームも個人も乗り越えなくてはいけない」

 2007~2009年の鹿島アントラーズ以来、J1史上2度目となる3連覇の偉業達成は、崖っぷちまで追い込まれている。