今年10月開幕のU-17ワールドカップ(ブラジル)へ向け、U-17日本代表の準備が進んでいる。 8月13日から4日間の日程で行なわれた国内キャンプでは、最終日に流通経済大との練習試合(40分×3本)を実施。17歳以下の選手たちにとって…

 今年10月開幕のU-17ワールドカップ(ブラジル)へ向け、U-17日本代表の準備が進んでいる。

 8月13日から4日間の日程で行なわれた国内キャンプでは、最終日に流通経済大との練習試合(40分×3本)を実施。17歳以下の選手たちにとって、年齢的にかなり格上相手との対戦だったが、2-2(0-1、1-0、1-1)で引き分けた。



4日間の国内キャンプを消化したU-17日本代表

 U-17代表を率いる森山佳郎監督は、「(所属チームとの兼ね合いで)活動が限られ、これが今年4回目くらいだが、今回が一番(招集したかったメンバーが)集まれた」と言い、「久しぶりに来た選手もよかった。ここに来て競争が激化している。(メンバー選考で)悩まないといけないが、うれしい誤算」と、笑顔を見せる。

 U-17ワールドカップに出場することの重要性は、今さら言うまでもないだろう。16、17歳の選手たちにとって、のちにどれほどの成長につながるのか。それは過去の例を見ても明らかだ。

 古くは、1993年大会(当時の名称はU-17世界選手権)に出場したDF宮本恒靖やMF中田英寿らが、のちにA代表の主軸に成長。また、直近でも、2年前の大会に出場したDF菅原由勢やFW中村敬斗が、今年のU-20ワールドカップでも活躍し、早くも今夏ヨーロッパへと渡り、さらなるステップアップを図っている。

 前回大会でも指揮を執った森山監督は、「(菅原や中村ら)彼らの代は、もともとポテンシャルが高く、個々のレベルが大粒な集団だった。将来性のある選手が(U-17代表で)経験値を積んで(U-20代表へ)上がってきた」と、その成長ぶりに目を細める。

 そんな2年前のメンバーに比べると、「今回は単独で突破できる選手は少ない」と指揮官。しかし、だからこそ、「今回の選手たちもU-17ワールドカップを経験することで、日本に帰ってきた時に、(国内の試合は)レベルが低いと感じるくらいに余裕が出ると思う。その(U-17ワールドカップでの)経験は大きい」と続ける。

 しかも、幸いなことにと言うべきか、組み合わせ抽選の結果、日本がグループリーグで対戦することになった3カ国は、対戦順にオランダ、アメリカ、セネガルと強敵ばかり。とりわけ初戦で対戦するオランダは、U-16ヨーロッパ選手権を制した欧州王者で、優勝候補と目される存在である。

 もちろん、彼らとの対戦が、若い選手には貴重な経験となるのは間違いないが、それで満足するのではなく、ひとつでも多く勝ち上がって、より経験値を高めたいところだ。

 流経大との練習試合にしても、「しばらく強い相手とやっていなかった」(森山監督)というチームにとっては、いわば、世界大会本番を想定したシミュレーションである。

 森山監督は、「(1本目のような)自分たちがボールを動かせない時間が多くなったときに我慢して、(自分たちがボールを保持して押し込んだ)2本目のような時間を増やせれば、自然と流れを持ってこられる」と語り、こう続ける。

「(失点を喫した)1本目や(3本目の)終了間際に、相手が圧力をかけてきたところでは課題が出た。(相手の圧力が)少し緩んでくると(自分たちのプレーが)できるのはわかっているので、できるだけ早く、そこに持っていくことが重要になる」

 すでに記したように、活動機会が限られるなかで、これまで思うようなチーム作りができたわけではない。

 当然、そこでは個々のレベルアップが不可欠であり、森山監督は、今回のキャンプで選手たちに課題を明示したうえで、「自分たちのチームに戻って、本番で通用する自分を作ってきてくれ」と話している。最終的には「(本番)直前の1週間で、何とか(チームを)まとめる作業をしたい」というのが実情だ。

 にもかかわらず、森山監督の表情や言葉からは、どこか余裕が感じられるのは、前回大会での経験が大きく影響しているからだろう。

 前回大会の決勝トーナメント1回戦。日本はイングランドにPK戦の末、敗れることになるのだが、最終的にこの大会を制することになる優勝候補との試合を前に、森山監督は「どんなゲームになるんだろう? と思っていた」という。

 だが、今は違う。

「(大会初戦の)オランダ戦では、だいたいこういうゲームになるんだろうっていうのは、イメージできる。焦って、ビビッて、ポンポンとやられる可能性もあるだろうが、そこを何とか不細工でもいいから0-1くらいで抑えておけば、後半こっちのペースになる。そういう試合の進め方を選手とも共有できる」

 まだ経験に乏しい選手たちが、その雰囲気に飲まれても不思議はない大舞台。それだけに、どっしりと構え、選手たちを見守る指揮官の存在は心強い。

「(菅原や中村ら)2000年(生まれ)の選手たちは、みんな(前回大会の)イングランド戦のことを(世界との差を知る貴重な経験になったと)言うが、そういう試合を、1試合、2試合、3試合と経験させられるかっていうところは自分の責任でもある。そこはがんばりたい」

 チームは9月のエクアドル遠征、10月の国内最終キャンプを経て、U-17ワールドカップが開かれるブラジルへと発つことになる。