9日、「マイナビオールスターゲーム2019」に出場する「最後の一人」を決めるプラスワン投票の結果が発表された。セ・リーグでは、大腸がん手術を経て6月4日のロッテ戦で1軍復帰した阪神・原口文仁捕手が選ばれた。今回は、その原口選手との実際に起き…

9日、「マイナビオールスターゲーム2019」に出場する「最後の一人」を決めるプラスワン投票の結果が発表された。
セ・リーグでは、大腸がん手術を経て6月4日のロッテ戦で1軍復帰した阪神・原口文仁捕手が選ばれた。

今回は、その原口選手との実際に起きたエピソードを書いていこう。

彼は入団当初から、元気よく挨拶してくれる選手であった。捕手ということもあり、審判員である私とも距離が近く、普段からルールの事や、自身のキャッチングが審判員には見やすいかなどの質問をよくする選手であった。


育成選手としての時期や、大腸がん手術などをもあり、彼はとても苦労した選手と言える。しかし、私が感じた彼は、苦労していると映らず、むしろ誰よりも野球を楽しみ努力しているように映っていた。

こんなエピソードがある。

とあるシーズン、舞台は交流戦の甲子園であった。
終盤までもつれた試合、ノーアウトのランナーが出た。バッターは初球からバントのサイン。
投球は、真ん中に近いところに来た。
しかし球審であった私は、ボールと打者がバントで構えたバットが被り、ボールが見えなかった。瞬時の判断をしなくてはならない私の判定はボール。
判定をした後の原口選手のミットは明らかにストライクの位置にあった。
完全なる私のミスであった。私もこれは抗議されても仕方ないと思った直後であった。

普段は判定に対して決して異議を唱えることのない原口選手が、ほんの少しだけ反応した。普通なら振り返られてもおかしくないほどの投球。
しかし原口選手はとても大切な場面にも関わらず、映像では確認できない程度にピクッとしか反応しなかったのだ。
それどころか私に対して、こう言ってきた。
「坂井さんすみません。反応してしまいました。僕のせいで見えずらかったですよね。」と謝罪してきたのだ。

今まで抗議されることがあっても、謝られることはほとんど経験した事がない。しかも完全なる私のミスであるにも関わらず。
その後も原口選手が普段通りプレーしていた為、ベンチにいる選手などには私のミスは気が付かれず、試合はスムーズに進行した。
結果、謝罪までされた上に原口選手に助けられた。

こんな原口選手の人間性を知っている私は、病から復活しオールスターにまで選ばれたことに心から嬉しく思うと同時に、多くの方に原口選手の人間性を知って欲しく記事にした。


多くの方は映像からしか選手を見ることができないが、本当の一流選手はプレーのみが一流なのではない。
プロスポーツ選手は原口選手のような人としても一流の人間の集まる場所であって欲しい。またこのような一流の選手が今後も活躍していって欲しいと強く思う。

文:元プロ野球審判 坂井遼太郎

以前の原口選手に関する記事はこちら >> https://sportsbull.jp/p/549407/