「日本生命セパ交流戦」が開幕し、一層の盛り上がりを見せているプロ野球。交流戦の開幕と同じく、ある男の新たな開幕戦でもあった。今回はその男のプロ野球選手としての生き方について書いていこうと思う。この前置きで分かる方もいるかもいるかもしれないが…

「日本生命セパ交流戦」が開幕し、一層の盛り上がりを見せているプロ野球。
交流戦の開幕と同じく、ある男の新たな開幕戦でもあった。今回はその男のプロ野球選手としての生き方について書いていこうと思う。

この前置きで分かる方もいるかもいるかもしれないが、阪神・原口文仁捕手だ。
彼は1月に大腸がんの手術を受けたが、諦める事なく努力を積み重ね、4日のロッテとの交流戦初戦、9回1死三塁の場面で代打で登場し、左越え適時二塁打を放った。まさにドラマのような復活劇だった。
これだけでは終わらず、8日の甲子園での日本ハム戦では復帰後初マスク、翌日にはサヨナラ打を放ったのだ。

原口選手は2009年のドラフトで阪神から6巡目指名を受け入団。2010年の1年目は試合に出る機会に恵まれなかったが、2011年シーズンには2軍で48試合に出場し、打率.329、2本塁打、11打点と好成績を残した。しかし、期待された2012年に腰の怪我の影響もあり、16試合しか出場できずシーズン終了後に自由契約選手となり、阪神と育成選手契約で再契約を結んだ。

ここでわかりにくい言葉が出てきたのでわかりやすく解説しよう。

プロ野球選手は、大きく分けて3種類に分かれる。
まずは「支配下選手

各チームは最大70名の支配下選手を登録できる。最大70名なのでドラフトで獲得したい選手がいれば、その分、戦力外となる選手を作らないと枠が空かない。このため選手にとって毎年が勝負であり、厳しい世界と言われる所以である。ちなみに支配下選手の最低年俸は440万円だ。

次に皆さんがよく目にする「1軍選手

この人数も決まっており支配下選手70名の中から選ばれた25名が1軍のベンチに入ることができる。登録日数などの条件もあるが、1軍の最低年俸は1,500万円。

では原口選手も経験した「育成選手

この育成選手は、2軍の試合には出場できるが、いくら能力が高くても1軍の試合には出場できない。また2軍の試合であっても、1試合で5名までしか出場を許されない。したがって、2軍の試合で使いたい育成選手がいても、5名出場した後はルールにより試合には出場できない。育成選手の最低年俸240万円で、背番号は3桁となる。

そして、プロ野球界では一握りの選手を除き、支配下選手、育成選手問わず、ほとんどの選手が単年契約なのだ。

このようなプロ野球のシステムから原口選手は、

阪神入団→支配下(2軍)→育成選手→支配下(2軍)→1軍登録→がん手術→支配下(2軍)→1軍登録(6月4日)

と何度も心が折れそうな状況から這い上がった選手である。彼を見ても分かるように裏表のない性格で、快晴のような気持ちのいい男である。そのため、誰もが心から応援したくなる人物なのである。

次の後編では実際にあったエピソードを踏まえて原口文仁選手の「生き方」を紹介していこう。

文:元プロ野球審判 坂井遼太郎