取材=鈴木栄一 構成=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

「技術じゃないところで僕らはカバーできた」

終盤まで1ポゼッション差、千葉ジェッツの猛追を何とかかわしたアルバルク東京が優勝を決めた瞬間のことを、安藤誓哉は「泣きました」と明かす。「でも、なんかやりきったとは、心の底から思います。本当に今年の千葉ジェッツは強かったですし、僕らは天皇杯合わせても1勝しかしていませんでした。本当に今はうれしいです」

マッチアップしたのは千葉のエースにして日本代表の絶対的なポイントガード、富樫勇樹。シュートタッチ好調の富樫に19得点を奪われたが、うち10得点は安藤がベンチに下がっていた時間帯に固め取りしている。「序盤はピック&ロールのところでやられましたが、それでも中盤から終盤にかけてはアジャストでき、うまく流れを止められたと思います」と安藤は言う。

第4クォーター途中に安藤が一度ベンチに下がったが、千葉の3度のポゼッションで富樫が3ポイントシュート2本と1アシストを記録。ルカ・パヴィチェヴィッチは慌てて安藤をコートに戻す。そこからのラスト4分半、馬場雄大が富樫をマークして得点を3ポイントシュート1本に抑え、安藤は次に当たっていた田口成浩をマークし、シュートを打たせなかった。

第4クォーター途中から猛烈な追い上げを浴び、勢いは完全に千葉という状況、安藤は「ああいう時はオフェンスは何かやろうとしてもうまく行かない。ディフェンスで辛抱するしかないんですけど、なかなか止められない時間帯もある」と考え、司令塔として「リバウンドとかを意識しようと話し合いました。その中でもオフェンスリバウンドが取れたり、そこは技術じゃないところで僕らはカバーできたと思います」

「責任を持ってプレーしようとしてきた1年間」

オフィシャルタイムアウト以後の4分半、勝負どころでのリバウンドは9-5と上回った。安藤も残り1分半、ロングリバウンドをティップで繋ぎ、貴重な1ポゼッションを稼ぎ出している。そして1ポゼッションの貴重さを考えた場合、ゲームを組み立てる安藤が25分間のプレータイムをターンオーバーなしで乗り切ったことは非常に大きい。「少なくしようと思って少なくできるものではありませんが、それだけメンタル的に落ち着いてできたのがターンオーバーが少なくなった意味だと思うので、そこには本当に充実感があります。

A東京の代名詞とも呼ぶべきピック&ロールの使い手は田中大貴であり馬場雄大だが、これはあくまで崩しの一手。ゲームの流れを読んでチームのリズムを作り出し、ミスなくボールを運んでスムーズにピック&ロールに入らせるのは安藤のゲームコントロールの手腕が問われるところ。ここをノーミスで乗り切ることが、A東京が常にリードを保つ要因となった。

「聞いたわけじゃないけど、去年よりも任されている感じ、信頼されている感じがありました」と安藤は言う。「責任を持ってプレーしようとしてきた1年間だったので、本当に充実していたし、精神的にも成長できたかと思っています」

涙が出るほどうれしかったのは、それだけの責任を背負ってきたからこそ。チームで唯一、レギュラーシーズンとチャンピオンシップの全6試合で先発を務めた安藤誓哉は、今回も『優勝チームのポイントガード』としてシーズンを締めくくった。