文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

遠藤に集まったボール「そういう形に自然になった」

5月5日、栃木ブレックスは千葉ジェッツとのチャンピオンシップのセミファイナル第2戦に敗れ、王座奪還を目指したシーズンが終わった。それでも、彼らが見せた戦う姿勢は称賛に値するものだった。

最終クォーター残り4分、富樫勇樹のノールックパスによりノーマークとなった西村文男に3ポイントシュートを許し、栃木は16点のビハインドを背負い、最後のタイムアウトを使った。今シーズンを過去最高勝率で勝ち抜いてきた千葉を相手に、時間と点差を考えれば、覆すことは不可能に近い。あまりに大きい一撃だったが、それでも栃木にあきらめるという選択肢はなかった。

「最後は自分らしいプレーを心掛けてやりました」と、語った遠藤祐亮による3ポイントシュート連発で反撃を開始する。第3クォーターを終えた時点で個人ファウルが4に達していた遠藤は、ファウルアウトをしないよう細心の注意を払いつつ果敢に攻め続け、第4クォーターだけで14得点を挙げて猛追の原動力となった。

自然とボールは遠藤に集まっていたが、安齋竜三ヘッドコーチは「点数も10点近く開いてる状況で、早めにピック&ロールを使って空いたらどんどん打っていいという指示は出しましたけど、それが誰ということは言っていない」と、遠藤に打たせる指示を送ったわけではなかった。

「最後の部分は本人たちに任せていました。今年1年間は遠藤が引っ張ってきた部分もあり、彼本人もやらなきゃいけないという気持ちもあった。チームとしてそういう形に自然になった感じです」

遠藤も「シーズンここまで自分がやってきたようなプレーを昨日(第1戦)はできなかったし、負けたら最後の試合でしたし、今シーズンの集大成として、自分らしいプレーを見せなきゃいけない」と振り返る心境で、最後の力を振り絞った。

結果的に勝敗を覆すことはできなかったが、今年のチームを象徴する遠藤の働きにより、残り5秒には4点差までビハインドを詰め、千葉を追い詰めた。

「何かしら感情を持って帰ってほしい」

第1戦で負傷したライアン・ロシターを欠き、第3クォーター終了間際には鵤誠司が足首をひねり、その後はコートに戻れなかった。アクシデントが重なったが、ここまで拮抗した試合を演じられたのは、チームとして戦う姿勢が全員に浸透していたからに他ならない。

「ライアンだけじゃなく、田原(隆徳)とかエリック(ロバーツ)とか栗さん(栗原貴宏)とか、そういう人たちの分も背負ってやろうというのは試合前にみんなで話していました。試合に出るのが誰になろうと自分たちのやることは変わらなかったので、しっかり40分間やることを遂行してやろうと臨みました」

安齋ヘッドコーチも最後まで貪欲に勝利を追い求めた選手たちを称えた。「1年間通してハードワークして、最後まであきらめずに戦った選手たちを作れたのは収穫です。去年の結果から、優勝を狙えるチームになった。本当に良いチームだった」

アウェーにもかかわらず、会場となった船橋アリーナには多くの栃木ファンが足を運び、赤色が大きく占める中、黄色く染まるスペースを作り出した。安齋ヘッドコーチはこうしたファンに対して、「僕らの責任を見せられた」と胸を張り、こんなメッセージを送った。

「ずっとそうですが、ファンは僕らの後押しをしてくれた。ファンの方のために、僕らの戦う責任があると思っています。何でもいいんですけど、お金を払っている分、何かしら感情を持って帰ってほしいと思っています。そこに僕らの責任があると思うので今日は果たせたかな。ずっと一緒に戦ってくれてありがたかったです」

栃木は王座奪還というミッションを果たせなかった。それでも、今シーズンで得た経験の一つひとつが今後の栃木をさらに強くする、そう感じられるシーズンとなった。