TEAM123456789計法 大0130000004慶 大00103300x7(慶)髙橋佑、○増居、髙橋亮、佐藤―郡司 ◇(二塁打)髙橋佑 ◇(本塁打)正木1号2ラン(5回)、柳町1号3ラン(6回) 強烈な『二振り』が、オレンジ色に染まっ…

TEAM
法 大
慶 大
(慶)髙橋佑、○増居、髙橋亮、佐藤―郡司
◇(二塁打)髙橋佑 ◇(本塁打)正木1号2ラン(5回)、柳町1号3ラン(6回)

 強烈な『二振り』が、オレンジ色に染まった三塁側応援席の牙を抜いた。3点ビハインドで迎えた5回。郡司裕也主将(4年)の犠飛で詰め寄ると、続く5番・正木智也(2年)に同点の2ラン本塁打が飛び出す。さらに6回、柳町達副将(4年)が3ラン本塁打を放ち勝ち越しに成功。中盤に奪ったリードを救援陣が守り抜き、昨秋の覇者・法大から貴重な勝ち点を獲得した。

 先発・髙橋佑樹(4年)は不本意なマウンドとなった。2回、2死走者なし。3-1からカウントを整えるべく投じたスライダーを、毛利元哉(4年)に左中間スタンドへと運ばれ先制を許す。続く3回にも連打で1死二、三塁のピンチを招くと、好調・安本竜二(3年)に甘く入ったスライダーを完璧に捉えられ被弾。慶大は直後の攻撃、先頭・髙橋佑の二塁打を皮切りに3連打で1点を返すが、後続が続かず。1、2回戦と同じく、序盤の流れは法大に渡っていた。しかし、小柄なルーキー左腕がその風向きを変えた。身長171センチ、5回から登板した2番手・増居翔太(1年)だ。増居は簡単に2死とした後、二塁打を許すが何ら臆することなく、法大4番・伊藤寛士(4年)を外角への真っすぐで見逃し三振に切って取る。回をまたぐと、左打者3人の内角をキレのある直球で果敢にえぐり、三者凡退。1年生とは思えぬ堂々たる投球を見せ、試合をつくり直した。


流れを引き寄せる投球を見せた増居

 するとルーキーの快投に先輩が応える。5回の先頭・柳町が四球を選ぶと、暴投で二進。さらに次打者も中前打でつないだ。その後1死二、三塁と好機を広げ、打席には郡司。低めの球を外野へと運ぶと、これが犠飛となり2点差まで詰め寄る。押せ押せムードが充満する中、正木が打席へと向かう。3球目だった。外角へ投じられた変化球をたたくと、力強い打球が一直線に伸びてゆく。これがバックスクリーンへと飛び込む特大2ラン本塁打となり、ついに同点までこぎつけた。もう一度流れを。法大は6回からエース三浦銀二(2年)を投入し、立て直しに入る。しかし、勢いに乗る慶大にとって、なんの影響もなかった。先頭・小原和樹(4年)が左前打で出塁すると、次打者がきっちりと進塁打を放ち好機拡大。続く代打・若林将平(2年)もバットを折りながら左前へはじき返し、執念でつないだ。1死一、三塁。打席に向かうは、東京六大学リーグ戦通算100安打を射程圏内に含む1番・柳町。真ん中に来た144キロのファーストストライクを振り抜くと、白球は右翼スタンドを真っ二つに切り裂いた。歓喜に揺れる一塁側応援席と、がっくり肩を落とす三塁側応援席。勝敗はもはや決した。


自身リーグ戦初の本塁打を放った正木

 強い――。今季の慶大はこの一言に尽きる。序盤で先制を許し一度は流れを渡しても、中盤以降、じわりじわりと追い上げる力がある。必ずどこかでチャンスが来る。その『空気感』が慶大ベンチに漂っているのだ。そしてひとたび反撃の糸口を見いだしたら、これを決して逃さず一気に畳み掛ける。個性豊かなレギュラー選手に加え、盤石の投手陣。さらには控え選手までも、出場機会を得たと思えば存分に持てる力を発揮する。明大戦で連日の逆転負けを喫した早大とは対照的に、粘り強さを全面に発揮しリーグ優勝への道をひた走る慶大。『陸の王者』が進む先に、遮る雲はなさそうだ。

(記事 石﨑開、写真 池田有輝、望月優樹)