春のセンバツ高校野球大会が始まった。初日から星稜(石川)と履正社(大阪)という実力校同士が激突。また大会4日目には昨年秋の中国大会優勝の広陵(広島)と東北大会優勝の八戸学院光星(青森)がぶつかる。

 そしてもうひとつ、高校野球ファンからにわかに注目を集めているのが、大会2日目に組まれた明豊(大分)と、歴代最多に並ぶ4度目のセンバツ優勝を目指す横浜(神奈川)との一戦だ。



上背こそないがキレのいいボールで勝負する明豊・若杉晟汰

 なんと言っても最大の注目は、奥川や佐々木朗希(大船渡)、西純矢(創志学園)とともに”高校四天王”と称される横浜の最速153キロ左腕・及川雅貴(およかわ・まさき)だ。その及川に対し、出場校中3位のチーム打率.375を誇り、1試合の平均得点8.56の明豊打線がどう立ち向かっていくのか。

 さらに明豊は投手力も充実。最速140キロを超える大畑蓮、寺迫涼生、狭間大暉(たいき)だけでなく、左腕の若杉晟汰(せいた)は最速139キロのストレートと変化球を織り交ぜた投球術で主戦を担った。

 こうした情報が広まるにつれ、「明豊は投打の総合力が高い」と、他校から警戒されるようになった。

 横浜との対戦が決まったあと、明豊の川崎絢平監督は苦笑いを浮かべながら、及川対策について語った。

「手足が長く、しなやか。150キロのストレートに130キロ台後半のスライダーを投げる左投手なんて、高校生ではまずいない。高めの真っすぐ、低めの変化球……ストライクとボールの見極めをどれだけできるかでしょう。150キロとはいえ、打てる球はストライクゾーンを通過する。それ以外のボールは打たないこと。それが一番難しいことなんですけど。そもそもウチ相手に投げてきますかね」

 ボール球の見極めに定評のある明豊打線だが、及川クラスの左腕との対戦経験がないだけに未知の領域に対する不安は拭えない。それでも、打倒・及川のカギを握りそうな右打者が軒並み好調を維持しているのは心強い。解禁後の練習試合で本塁打を放っている5人はいずれも右打者で、秋に1打席のみに終わった青地七斗にも一発が出るなど、選手層に厚みが出たこともプラス材料だ。

「”横浜の及川”という名前にまず負けないこと。気持ちで負けず、1球でとらえることが大事になってくる。兄の名前でなんとか対抗したいところですが(笑)」

 昨年、大阪桐蔭の2番打者として勝負強さを発揮し、春夏連覇に貢献した青地斗舞を兄に持ち、打席でただならぬオーラを醸し出している青地。通算本塁打は3本だが、ここにきて及川撃ちの切り札になりそうな雰囲気が漂ってきた。

 一方、横浜打線と対峙することになるエースの若杉も「相手はものすごく注目されている存在ですが、『負けたくない』という気持ちはあります」と、力強く語る。

 奪三振率12.85(1試合平均)の及川には及ばないものの、若杉も9.70と高い数字を残しており、これは全体8位にあたる。

 横浜打線は、昨年の甲子園でも4割以上の成績を残した内海貴斗や、チームトップの打率.433を誇る度会隆輝(わたらい・りゅうき)らを筆頭に、チーム打率.355の強力打線だが、川崎監督は若杉を中心とした投手陣に期待をかける。

「対及川くんばかりにクローズアップされがちですが、むしろ対横浜打線の方が大事だと思っています。初回にビッグイニングをつくられると楽にさせてしまうので、勝負にならない。(1—12で敗れた)2015年夏の仙台育英戦のように、ただ離されていく一方になるので……」

 そして、こう続ける。

「最後の夏ではないので『当たって砕けろ』でいいと思うんです。大会ナンバーワン左腕に対してどれだけ通用するのか。どうせやるなら好投手がいいと思っていました。いい投手とやるために甲子園に行くので。1回戦でやるのか準決勝でやるのかの違いだけで、及川くんのような投手を打てないと上位進出はないわけですから。楽しみにしていますよ」

 優勝候補の一角に挙げられている横浜だが、初戦から一筋縄ではいかない難敵が立ちはだかったことは間違いない。