ベンチを含む全員がチームスタイルを徹底1月30日、千葉ジェッツは平日ナイトゲームながら4561人を集めた船橋アリーナでサンロッカーズ渋谷と対戦。第1クォーターから29-13と圧倒し、すべてのクォーターで上回り106-71で大勝した。これで千…

ベンチを含む全員がチームスタイルを徹底

1月30日、千葉ジェッツは平日ナイトゲームながら4561人を集めた船橋アリーナでサンロッカーズ渋谷と対戦。第1クォーターから29-13と圧倒し、すべてのクォーターで上回り106-71で大勝した。これで千葉は連勝をチーム記録タイとなる13まで伸ばし、天皇杯のファイナルラウンドの3試合を含め、26日間で10試合を戦う『クレイジースケジュール』を全勝で乗り切った。

SR渋谷の伊佐勉ヘッドコーチが「ファウルで止めようにも止めきれない。良いシュートで終われずに、そのまま持っていかれてしまう」と振り返ったように、ディフェンスからのトランジションという千葉のスタイルが見事なまでに貫かれた一戦となった。

富樫勇樹、マイケル・パーカー、ギャビン・エドワーズと、得点面で軸になるエース格の選手が3人いるのは大きな強みだが、ベンチから次々出て来る選手もチームスタイルを徹底し、40分間を通してエナジーを落とすことのない『総合力』はB1でも頭一つ抜け出している。

これで通算成績は31勝5敗、2ゲーム差で栃木ブレックスが追っているが、その次となると新潟の25勝と大きく開いた。シーズン折り返し地点を過ぎたばかりだが、全体勝率1位を巡る争いは栃木との一騎打ちになりつつある。全60試合の長丁場、特に今シーズンのようにウィークデーの試合を多数挟む過密日程でトップを争うには、ベンチメンバーを含めた総合力がモノを言う。

「自分も鳥肌が立つというか、気持ちが上がります」

昨日の試合、その『総合力』の象徴となったのが藤永佳昭だ。名古屋ダイヤモンドドルフィンズから昨夏に加入した藤永は、富樫と西村文男に続く3番手のポイントガード。富樫が日本代表も含むタフな日程の中でも好調を維持し、西村も富樫に引けを取らないパフォーマンスを続けている状況、3番手の藤永にはなかなかプレー機会が回ってこない。

その藤永が投入されたのは、第4クォーター残り5分20秒の場面。93-60とすでに勝敗は決した状況だったが、彼にとってはここが勝負の場だった。その藤永がコートに入る時点でスタンドからは大歓声。加入1年目、出場機会は決して多くないし、地元の選手でもない藤永がこれだけサポートされるのは不思議な感じがするが、プレーを見れば納得だ。激しいディフェンスからアグレッシブに攻めに転じる千葉のスタイルを、藤永は一早く吸収して体現している。

この日の藤永は試合終了まで出続けて6得点1アシスト、さらに短い時間で3つのファウルを誘発と、積極的な仕掛けが目立った。「オフェンスで目立とうと思ったわけではないですが、全体を見た時に自分が空いていたので。空いていればシュートは打つべきなので狙っていきました」と藤永はいつも以上にアグレッシブな姿勢を説明する。

千葉のファンから熱く受け入れられていることを「自覚してます」と本人も言う。良いプレーのたびにスタンドが沸き、背中を押してくれることを藤永は大いに感謝している。「ありがたいです。自分も鳥肌が立つというか、気持ちが上がります」

「一生懸命やっているからじゃないですかね。僕は絶対にそうしなきゃいけないので。ディフェンスでハッスルして流れを変えたり、見に来ている人を楽しませるのが仕事だと思っています。ディフェンスは波があっちゃいけないので、毎試合集中して、相手に合わせてスカウティングしてアジャストして、これからもしっかりやっていきたい」

「どんな時に出ても自分の持ち味を出せるように」

26歳という年齢は、プロバスケットボール選手としては若くはない。それでも藤永はプレータイムが減るのを承知で優勝争いのできる千葉への移籍を選んだ。開幕から4カ月、「すごく充実しています」と藤永は自分の選択が間違いでなかったことを確信している。3番手ではあっても、ポイントガードとしてここでしか得られない経験がある。「バスケット自体の考え方、ディフェンスの考え方、自信ですね。勇樹や西村さんはBリーグのトップ、本当にリーグでも一番上のプレーヤーで、そこから毎回学べますし、自分のプラスになっていると感じます」

大野篤史ヘッドコーチも藤永の日々バスケに取り組む姿勢を高く評価しているが、それと同時に「僕の仕事は彼が頑張っているからプレータイムを与えることではなく、ベストのメンバーをコートに送り出すこと」と、当然ながら優先するのはチームの勝利。なかなかプレータイムは伸びないが、それでも藤永は「充実しています」と笑顔で言い切る。

NBDLのアースフレンズ東京Zから、B1の中堅クラブである名古屋Dを経て、千葉へ。藤永は自分のステージを年々上げながら、そこで信頼と実力を勝ち取ってきた。「人どうこうではなく、自分次第だと思っているので。短い時間でもしっかり集中して効率良くやっていきたい」

天皇杯優勝が初のタイトルとなったが、チームの目標はあくまで2冠だ。「チームが勝つことが第一で、チームはうまく行っています。でも油断せず、最後の目標は優勝なので、そこに向かってチームが良くなっていくのが大事です。チームの13人が誰一人欠けることなく、そこまで集中してやっていきたい」と藤永は語る。

「どんな時に出ても自分の持ち味を出せるように準備して。難しいことでもありますが、いつどんな状況で出ても仕事ができるように。自分を信じてやっていきます」と藤永は語る。こういう選手が3番手で控えていることが、リーグ全体勝率トップを走る千葉の強さを支えている。そんな千葉の『総合力』を感じさせられる試合だった。