パシフィック・アジア・カーリング選手権(以下、PACC/11月3日~10日)が、韓国の江陵カーリングセンターで開催される。 女子は、同会場で行なわれた2月の平昌五輪で銅メダルを獲得したロコ・ソラーレが、4大会連続で日本代表として出場す…

 パシフィック・アジア・カーリング選手権(以下、PACC/11月3日~10日)が、韓国の江陵カーリングセンターで開催される。

 女子は、同会場で行なわれた2月の平昌五輪で銅メダルを獲得したロコ・ソラーレが、4大会連続で日本代表として出場する。



銅メダルを獲得した平昌五輪の会場で行なわれるPACCに挑むロコ・ソラーレ

 5月に行なわれた代表決定戦では、日本選手権女王の富士急を危なげなく3連勝で下す。試合後、今季も日本代表として活動することについて、メンバーたちはこうコメントした。

「このチームで目指せるだけの”上”を目指したい」(リード・吉田夕梨花)

「自分たちの強みは、メンバー全員が『(私たちの力は)まだまだこんなもんじゃない』と思っているところ」(スキップ・藤澤五月)

 そして、3カ月近いオフを挟んで迎えた今季、ロコ・ソラーレは中国・蘇州で開催された第1回W杯ファースト・レグでシーズンインすると、その後は、最高峰タイトルのひとつであるグランドスラムを含め、カナダ各地で行なわれたワールドツアー4大会に出場。そのうち、3回のクオリファイ(決勝トーナメント進出)を果たすなど、まずまずの成績を収めている。

 ただ、彼女たちが目標としている”上”を額面どおりに受け取るならば、具体的にそれは、世界選手権では銀メダル以上、五輪では銅メダル以上、グランドスラムにおいては、クオリファイ以上という結果が求められる。

 それを踏まえれば、その先の”世界で勝ち切る”というのが、今季の課題になってきそうだ。

 だからといって、その点については、チームにも、各選手にも、特に焦りは見られない。2016年から2017年にかけての苦い経験があるからだ。

 2016年3月にカナダ・スウィフトカレントで開催された世界選手権で、ロコ・ソラーレは銀メダルを獲得した。日本カーリング史上初の快挙である。だがそれによって、国内外から追われる立場となり、それが遠因で、チームとしてのバランスを崩してしまったことは否めない。

 その結果、翌2016-2017シーズンは、国内のカップ戦、ワールドツアー、PACC、日本選手権と、ひとつもタイトルを得られない苦しいシーズンを過ごすことになった。

 そのシーズンの終わりに、サードの吉田知那美は「どこかで守る気持ちになっていた。何かを変えないといけないのはわかっているのだけれど、変えるのは勇気が必要で……」という話をしていた。その一方で、「このシーズンがあってよかったと思えるように、これが”助走”だと信じて、前を向いてやっていく」とも語っている。

 そうした経験があるからか、今は選手一人ひとりが目の前の結果に一喜一憂することはない。リードの吉田夕は、今季のここまでの戦いを振り返りつつ、今後の強化について、こんな決意を固めている。

「さらに強くなろうと決断すると、目の前の勝利が遠くなることがある。でも、私たちはそうやってトライし続けて強くなってきたから」

 ロコ・ソラーレにとって、今季は再び、より上を目指すための”助走”にあたるシーズンなのかもしれない。

 それでも、彼女たちのユニフォームには『JAPAN』の文字が記され、日の丸も背負う。PACCは、来年3月の世界選手権のトライアルも兼ねており、日本の出場枠を死守するためには、最低でも準優勝以上の成績を残さなければいけない(※1)。結果を軽視することはできない。
※1=3位になった場合、来年1月にニュージーランド・ネイズビーで開催されるワールドクオリフィケーションに参加。そこで勝てば、世界選手権の出場枠を得られる。

 また、今季はチームの精神的支柱であり、五輪での献身的なサポートが記憶に新しい主将の本橋麻里が、選手としての休養を発表。このPACCにも帯同しない。

 本橋の代わりに今回、オルタネイト(※2)として韓国入りするのは、2002年ソルトレークシティ、2010年バンクーバーの両五輪に出場したオリンピアンの石崎琴美。以前、本橋が産休中だった2015年のPACC(カザフスタン・アルマトイ)にもチームに帯同し、ロコ・ソラーレとして初めて優勝を飾った際にサポートした実績がある。
※2=カーリングではフィフス、リザーブとも呼ばれる5人目の選手。近年、Alternate(オルタネイト)という呼称が定着しつつある。

「アイスの外での、精神面でのサポートが主な仕事だと考えています。彼女たちが氷上でいいパフォーマンスができるように支えていきます」

 石崎はそう語って日本を発ったが、彼女のサポートはあくまでも今大会限定のものだ。基本的にアイスの中での課題は、4人で解決し、世界で勝ち切るチームを作っていかなければいけない。

 そうして、日本代表の自覚を持ち、追われる立場であることを理解しながら、『5ロック(※3)』という”新しい波”をも乗りこなし、強化を図っていく必要がある。世界のトップチームの仲間入りをしたロコ・ソラーレには、複数の決して軽くないタスクが課せられている。
※3=国内の大会でも今季から導入されるフリーガードゾーンにおけるルール改正。これまでは、両軍が投じたリードの4投がハウスにかからないガードストーンとなった場合、セカンドの1投目からテイクが可能だったが、そのセカンドの先攻の1投目、つまりエンドごと5つ目の石まで、テイクが不可になった。

 さらに”上”に行くために――。ロコ・ソラーレの新しい挑戦は、すでに始まっている。