石川佳純 Photo:Itaru Chiba


 大会2日目を迎えた「
女子ワールドカップ2018」(9月28~30日/成都)は29日、決勝トーナメントに突入し、1回戦を勝ち抜いた8人が準々決勝に臨んだ。注目の日本勢は北朝鮮のエース、キム ソンイに初対戦でストレート勝ちした平野美宇日本生命)と、台湾の陳思羽に2ゲーム先取されてから逆転勝ちした石川佳純(全農)が対戦。平野が第1ゲームを奪うも、第2ゲーム以降は石川が勢いに乗って4ゲームを連取し、ゲームカウント4-1で準決勝進出を決めた。準決勝ではリオ五輪金メダリストの世界女王・丁寧(中国)と対戦する。



石川の勝因は戦術の切り替えと好調のサービス&レシーブ

 ゲーム開始からいきなり平野に4ポイントを奪われ、第1ゲームを落とした展開について、「サーブで攻められたパターンが多くなった」と振り返る石川は、続く第2ゲームで「(プレーに)変化をつけてラリーに持って行くようにした」と語る。「変化」というのは例えば平野のミドル攻めに対し思い切って回り込み、得意のフォアハンドドライブで攻めるなどのプレーを指す。

「1ゲーム目は落としたが、2ゲーム目から切り替えて、行けるボールは思い切って打つようにした。落ち着いて自分らしいプレーができた」と石川。1回戦でも安定していたサービスとレシーブも好調で、ラリー巧者の平野を相手に先手を取れたのも「サーブとレシーブがいい時はラリーもいい。以前よりも思い切ってサーブとレシーブができるようになって、チキータもどんどん使えている」と話している。

 準決勝の相手は強敵、世界女王の丁寧だ。地元中国のファンを味方に立ちはだかる厚い壁。丁寧とは今年8月のワールドツアー・ブルカリアオープンで対戦したばかりという石川は、「(対丁寧対策として)左利きともたくさん練習したし、対しゃがみ込みサーブの練習もしてきた」と意気揚々。明日30日に行われる準決勝では丁寧への地元ファンの応援が過熱することが予想されるが、「この前の(大坂)なおみちゃんも勝ってたじゃないですか」と笑顔も。全米オープンテニスでグランドスラム初制覇を果たした同世代の仲間を引き合いに出すゆとりも見せた。

平野美宇 Photo:Itaru Chiba


試合の中での「戦術変更」を課題に挙げた平野

 キム ソンイに圧勝した1回戦の勢いを準々決勝に持ち込み、日本のエース・石川からあっさり第1ゲームを奪った平野は、第2ゲーム以降、石川にペースを握られ立て続けに4ゲームを落とした。

「どういうところで、どういう戦術を使うかで一本の差が出たと思う。お互い戦術はわかっている中で、どっちが勝つかという戦いなので、試合で戦術をどう使えるかが大事」

 前日のドローの結果、準々決勝で早くも日本人同士の対戦となったため、お互いベンチにコーチはおらず、ゲーム間やタイムアウトでのアドバイスには頼れなかった。これまで何度も経験してきたことではあるが、「全部自分で考えないといけない。普段の練習から自立しすることが大事」と改めて自戒を口にする。

 だが、今大会の平野は気迫とプレーが噛み合っていた。思うように結果が出ない時期がしばらく続いているが、調子が上向いているのは確かなようだ。「今年の前半に比べたら頑張っている。周りの選手がどんどん強くなっているので、自分ももっと上を目指すためには人一倍頑張らないといけない」と平野。

 この後はユース五輪出場のため、直接アルゼンチン・ブエノスアイレスに向かう過密スケジュールだが、「すごい楽しみだし、東京2020五輪を目指す上で、まずはジュニアの五輪で優勝したい」と意気込みを語った。

 その他の準々決勝の結果は次の通り。大会最終日の30日は準決勝、3位決定戦、決勝が行われ、栄えある女子ワールドカップのチャンピオンが決定する。

<決勝トーナメント 準々決勝 結果>
朱雨玲(中国)4-0 ポルカノバ(オーストリア)
杜 凱キン(香港)2-4 鄭 怡静(台湾)
平野 美宇(日本)1-4 石川 佳純(日本)
丁 寧(中国)4-1 ソ ヒョウォン(韓国)

(文=高樹ミナ)