観客を華麗なパフォーマンスで盛り上げ、チームを後押しするNFLチアリーダー。約3時間半の試合の最中、踊り続ける彼女たちは、一体どんなトレーニングをしているのか? 2016年から2シーズンNFLニューヨーク・ジェッツのチアリーダーとして活動し…

観客を華麗なパフォーマンスで盛り上げ、チームを後押しするNFLチアリーダー。約3時間半の試合の最中、踊り続ける彼女たちは、一体どんなトレーニングをしているのか? 2016年から2シーズンNFLニューヨーク・ジェッツのチアリーダーとして活動し、現在NBAゴールデンコースト・ウォリアーズ・チアリーダーのトライアウトに挑戦、ファイナリストとなった砂川奈美さんに聞いた。

チアリーダーには技術(ダンス)の練習以外にトレーニングは必要なのですか?

砂川 3時間半踊り続けるためには、リハーサル以外にもトレーニングは必要不可欠です。試合を通じてパフォーマンスができる持久力を養うための有酸素運動と、力強いパフォーマンスをするための筋力や瞬発力を鍛えるためのウェイトを使ったトレーニングの両方が必要です。

NFLのチアリーダーの人たちはほとんどが別に本職を持たれていると聞いていますが、トレーニングは週にどの程度、1回何時間ぐらい行うのですか?

砂川 ジェッツ時代はほぼ毎日、週6回です。チームの練習のある日は午前中にトレーニングしていました。1回1時間程度です。

かなりハードですね。逆に疲れが溜まったりはしないのですか?

砂川 疲れがたまっている時はヨガやピラティス、試合後はアクティブレストとして、軽く走ったりしていました。それに、トレーニングをすればするほど本番のパフォーマンスが楽になる! と気づき、2年目は1年目よりもトレーニングに時間を割いていたと思います。

特に力を入れて鍛えていたのは?

砂川 持久力やスタミナに自信がなかったので、走り込みには力を入れていました。トレッドミルで全速力のスプリント1分30秒を何セットかしたあとに、長距離を走っていました。また、ジェッツのチアリーダーのパフォーマンスは、ラインダンス&力強いシャープなダンスが持ち味なので、瞬発力も必要とされていました。そのため筋力アップのトレーニングは週三回。スクワットを中心に下半身のメニューを多めに。私の場合、体の前側は自然と鍛えられているのですが、体の後ろ側が弱いので、肩、背中、肩甲骨、ハムストリングスなど、体の後面を鍛えるメニューに力を入れていました。

NFLと日本のチアリーダーでトレーニングに対する意識の違いやハードさの違いはありますか?

砂川 日本でチアリーダーをしていた時とは比べ物にならないくらいNFLのトレーニングはキツかったです(笑)。特にジェッツのチアリーダーはNFLの中でもミリタリーの要素が強い練習が取り入れられていました。毎回の練習では、3分のプランク・コアトレーニング(だれかが落ちると連帯責任)があったり、手押し車でフットボール・フィールドを往復したり、シャトルランがありました。フィールド4〜5周走るレースが毎回行われるのですが、それが一番キツかったですね。1週ごとにバーピージャンプ20回、腕立て20回、片足ランジ20回、腹筋20回という種目が課せられていました。すべてランクづけされ、『最下位だけにはなるな!』と、発破をかけられていました。

日々のコンディショニングで大切にしていることは?

砂川 どんなに疲れていてもトレーニング前後のストレッチを必ずすること。少しでもいいから、毎日ちょっとずつやること。継続は力なりです。

食事や栄養補給について気を使っていることはありますか?

砂川 食事を摂取するタイミング、量、内容などに気をつけています。すべてですね(笑)。食べる内容で、練習や試合でのパフォーマンスが大きく左右されるので、質にこだわってしっかり食べるようにしています。スタミナ切れが大きな課題だったので、練習前や試合前は、カステラ、オレンジジュース、おにぎりなど糖質を多く含むものを摂取していました。

今回、何故NFLチアリーダーからバスケットボールのチアリーダーになろうと思ったのですか?

砂川 NFL引退後、現役を引退しようかしばらく悩んでいたのですが、日本に帰国後、チアのレッスンやチームを指導させていただく機会が多々あり、『指導とは?チームワークとは?』などを考えるようになりました。昨シーズン王者になったゴールデンステイト・ウォリアーズは、ダンスチームもプロの中でも卓越したメンバーが揃っており、サブリナ・ディレクターがパッション溢れるコーチだと知り、『最高峰のチームメイト、ディレクターのもとで学んでみたい!』という気持ちが大きくなり、決断しました。

NFLのチアリーダーとバスケットボールのチアリーダーの違いはありますか?

砂川 はい、沢山あります。まずNFLは野外スタジアムでも雷雨以外は試合が行われるため、大雨や大雪の天候でもパフォーマンスしなければなりません。NBAは、屋内なので天候には左右されません。観客数にも大きな違いがあります。ジェッツの本拠であるメットライフスタジアムは観客数が88,000人、ウォリアーズのオラクルアリーナは19,200人です。そのため、ダンススタイルやチームがチアリーダーに求める要素もNFLとNBAでは少し異なるように感じます。NFLは、フィールドに映えるような大きな振りが多いですが、NBAは細かい振りが多く、チアリーダー経験者よりもダンサー経験者の方が多い印象です。ファン層もNBAの方がNFLよりも若いため、エンターテイメントの要素が強いと感じています。

今後の予定は?

砂川 8月25日の予選オーディションで、ウォリアーズ・チアリーダーのファイナリスト41人に選出され、30日のファイナルオーディションで26名に残ることができました。

これまで本当に沢山の方に支えていただき、NFL現役生活を活動することができました。今もNBAのオーディションにチャレンジできているのは、様々な方にサポートいただいているからです。

現役引退後は、自分の経験を様々な形で還元することが、サポートいただいた方への恩返しだと考えています。海外で活動するアスリートの支援やチアリーダー界、フットボール界の発展に貢献できるような人間になることが私の目標です。

日本では、スポーツの指導やコーチングに関して、大きな転換期を迎えていると思います。私はこれまで心から尊敬する指導者に恵まれてきましたが、指導者としてさらに成長するために、日本のチアリーダー界を盛り上げるために、コーチングを学びたいと思っています。今回の挑戦はその一環でもあります。

フットボールが大好きなのは変わらないのですが、バスケットボール界でトップを牽引するウォリアーズのもとでディレクションやチームビルディングを学び、日本のチアリーダーやフットボール界に還元することで、恩返しをしたいと思っています。