雷雨による中断の影響で大幅な不規則進行になっている全米オープン。本来ならすでに木曜日と金曜日で2ラウンドが終わり、予選カットが行われているはずだが、実際は36ホールを回り終えた選手がまだ半数にも達していないという大荒れだ。

そんな混沌とした状況下、世界のメディアは「さあ、どっちが得か?」という運・不運を取り沙汰している。

木曜日の午前にスタートした選手たちを、便宜上、「木曜AM組」と呼ぶことにしよう。彼らは木曜日のラウンド中に3度も中断を挟み、心技体のすべてにおいて、その対応力が大いに問われたが、朝のうちのきれいなグリーン、雨でややソフトになったグリーンという恩恵が多少なりともあり、その恩恵を最大限に生かした選手がまずリーダーボードを駆け上がった。無名ながら首位に躍り出たアンドリュー・ランドリーは、その典型。初出場ながら14位につけている谷原秀人も「木曜AM組の成功者」の1人だ。

一方、木曜日には1ホールもプレーできず、金曜日に一気に36ホールを回った選手たちを「金曜36ホール組」と呼ぶことにしよう。彼らは小刻みに何度も中断を挟む煩わしさを味わわずに済んだが、木曜日に長時間に渡って待機した挙句にスタートできず、肩透かしを食らった形になり、それはそれで疲れたはずだ。晴天で気温もぐんぐん上がっていった金曜日は、グリーンがどんどん硬くなり、ラフもどんどん伸びていき、時間を追うごとにコースの難度は上がっていった。そんな状況下で36ホールをプレーした「金曜36ホール組」は、心技体のすべてにおいて厳しい戦いを強いられた。

こうして比べてみると、まさに「どっちもどっち」である。どっちが得か、損か。どっちが有利か、不利か。答えがなかなか出ないからこそ、論議を呼んでいる。

「木曜AM組」で回り、18ホールを終えた現在は2オーバー、29位のジョーダン・スピースは「コースがどんどん難しくなっていっているから、今日(金曜日)36ホールを回る選手のほうが、僕らよりずっと大変だよ」と言っていた。しかし、現時点でのリーダーボードを眺めてみると、7位タイまでの13人は「木曜AM組」と「金曜36ホール組」が、ほぼ半々。詰まるところ、やっぱり「どっちもどっち」ということになる。

天候とスタート時間の巡り合わせは運・不運がつきまとう。べスページで開かれた2009年大会はその代表例。あのときは全選手が36ホールを終えたとき、リーダーボードの上段すべてが初日の午後にスタートした選手のみで占められ、運・不運が如実に成績に表れていたが、今大会はあのときほどラッキーとアンラッキーが真っ二つに分かれてはいない。

今、リーダーボードの上段に付けている選手たちが持っているものは、運よりも、むしろ過去の苦い経験のほうが多いと言える。

ダスティン・ジョンソンは全米オープンで2度も目前の勝利を掴み損なった。首位で最終日を迎えた2010年大会は、サンデーアフタヌーンに「82」を叩いて8位に甘んじた。2014年は4位。昨年は72ホール目にショートパットを外したせいで2位に終わった。他のメジャー大会でも悔し涙を何度も飲んだ。

セルジオ・ガルシアもリー・ウエストウッドもメジャー惜敗は数知れず。

そのジョンソンが首位に浮上し、ウエストウッドが3位、ガルシアが4位に付けていることは、運・不運や損得や有利不利がもたらしたものではないだろう。噛み締めてきた悔しさを晴らすために重ねてきた努力と鍛錬と執念が、彼らを押し上げているのではないか。

夜明けから深夜までオークモントで過ごした長い一日が終わろうとしている今、私には、どうしても、そう思えてならない。

文・写真/舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)