全米オープンは波乱の幕開けになった。と言っても、乱れたのは選手たちのプレーやスコアではない。

雷雨による中断が3度もあった。まず午前10時04分に最初の中断となり、比較的早く11時23分に競技が再開された。だが、それから1時間も経っていない12時07分に2度目の中断。午後2時30分に再開されたが、3時51分に3度目の中断。そこからは激しい雨と稲光、遠くで落雷したであろう轟音が鳴り響き、嵐に見舞われたオークモントはもはやプレー続行不可能。初日の残り競技はすべて明日へ持ち越された。

午前の早い時間にスタートした池田勇太、谷原秀人、宮里優作は、いずれも3度の中断に見舞われ、コース上を行ったり来たり。結局、18ホールを終えることはできなかった。

午後スタートの選手はティタイムがどんどん後ろへずれていき、本来なら午後1時14分の予定だった谷口徹のスタートは午後4時54分へ、午後1時36分の予定だった松山英樹のティタイムは午後5時16分へ延びた末、結局スタートできぬまま、翌日へ持ち越された。

悪条件に見舞われたのは誰もが同じだが、遭遇してしまった悪条件をどう受け止めるかは選手によってまちまちだった。そして、そういうときの対応の仕方には、やっぱり経験がモノを言っていたようだ。

中断中は「静かに」「穏やかに」

最初の中断後。数人の選手とキャディがメディアセンターの中へ避難してきた。ハリス・イングリッシュやジミー・ウォーカーといったお馴染みの選手たちがメディアセンターの端に設置されているTV用のセットの床にちょこんと腰を降ろし、黙って再開を待っていた。

そうかと思えば、全米オープン17回目の出場となるリー・ウエストウッドはキャディと一緒にメディア用のダイニングルームへ向かっていった。

そこに数台のTVモニターがあることをあらかじめ知っていたのだろう。そのうちの1台でサッカーの欧州選手権(EURO)イングランドとウエールズの対戦を静かに観戦していた。
日頃から中断に慣れている選手たちの中断中の過ごし方には共通点がいくつかある。風雨や雷から身を守ることは当たり前だが、決してうれしくはないサスペンデッドという事態に体力気力を消耗しないよう、静かに過ごす、あるいは穏やかな気持ちで過ごすことを心がけている。

3度のサスペンデッドで乱れに乱れた今日の初日。リーダーボードをふと見れば、18ホールを終えてはいないけれど、上位にはイングリッシュやウエストウッドの名前がちゃんと載っていた。

「フラストレーションが溜まる1日だったけど、天候はどうしようもない。全米オープンの戦いでは経験がモノを言うものだけど、こういう日こそは、経験がより一層モノを言う」とは、暫定4位に付けているウエストウッドの言。

その通り、こんなときにも平常心が求められるということなのだろう。初日から変則進行となれば、そのしわ寄せは2日目、3日目、最悪は最終日まで残る可能性もある。

そうなれば、ゴルフの技を競う以前に体力勝負、気力勝負になる。それを知っているからこそ、中断中は最大限の省エネに努め、心身のどちらも落ちないよう保つことに努める。
マザーネイチャーを相手に戦うゴルフ、とりわけモンスターのような難コースが舞台となる全米オープンでは、そんな知恵と工夫も求められる。

文・写真/舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)