「選抜第4日」 大阪桐蔭-伊万里  伊万里に大勝し、応援席に向かって駆けだす大阪桐蔭ナイン=甲子園【写真提供=共同通信社】

大阪桐蔭のエース、柿木蓮は力強く言った。
「もう、勝ち続けるだけ。ここで負けたくはないです」
 

今年の大阪桐蔭は同校歴代の中でも、もっとも強いのでは、と言われる。根尾昂、藤原恭大、柿木蓮など素質の高い選手が揃ったタレント世代が最後のセンバツを迎えた。去年もこの三人に加え、数名がベンチに名を連ねている。今年は史上3校目の連覇を狙う絶対的な優勝候補だ。

 ただ、昨夏の選手権、3回戦の仙台育英にエラーもあって、逆転サヨナラ負けを喫している。春夏連覇を狙って最強と言われても悔しい負けがナインにあった。
 大阪桐蔭が初戦で迎えたのは伊万里。21世紀枠で選ばれた公立高校だ。
チームの平均打率、3割7分2厘の強力打線を前に伊万里の吉原彰宏監督はゲーム前、「ピッチャーは山口(修司)の完投しか考えていません。継投するときは打ち込まれている時。山口しかいないので」と苦笑いだった。

大阪桐蔭は本来の1番バッター、藤原がケガからの復帰直後という事で、西谷浩一監督は「走るということより4番でじっくり打たせようと思って」と4番に据える。そして1番には本来は2番を打ってきた宮﨑仁斗が入った。
 ただ、順番はあまり関係なかったかもしれない。誰がどの打順を打っても打線としては機能するから優勝候補なのだ。伊万里には酷な言い方だが、序盤で勝負は決まったと言っていい。

 ゲーム開始直後から打撃全開。狙っていたという変化球を打ち返す。低めのボールも強いライナーで外野まで飛ばした。1回は根尾の左中間をライナーで切り裂いた3塁打などで一挙に5点。2回も4安打を集めて3点を挙げた。山口の90キロ台のスローカーブなどにも引きつけて対応して、技術の高さを証明した。
終わってみれば14対2。大阪桐蔭が快勝した。
「テーマは勝つことです。ピッチャーが点を取られてますし、ディフェンスという面での課題はあります」と西谷監督。中川卓也キャプテンは「発展途上のチーム、一戦必勝で春の連覇に向かって行きたい」と力を込めた。

実力差を見せつけられた伊万里の吉原監督は「大阪桐蔭の強さは想像通りでした。完全試合、ノーヒット・ノーランの不安があって。でも、一つ一つ、怖さを超えていったのが大きかった。最後まで諦めないと言うことは表現できたと思う」とゲーム後は悔しさを交えての苦笑いだった。
 山口は「今までやってきた中で一番強いチームだった。どんなコースも振ってくるところが怖い。藤原君はすごい選手だったし、根尾君のスイングも速かった」と話した。

勝敗に関係の無い余談を二つ。

柿木は佐賀の出身で、伊万里のセンター・古賀昭人とは佐賀東松ボーイズのチームメイトで全国大会にも出場した仲。その二人の甲子園での対決が実現した。
結果は内野フライと三振で柿木に軍配が上がった。
柿木は「佐賀のチームということでいつも以上に意識した。古賀を一番、警戒してました。真っ直ぐで押したかったんですが、打ち取るために変化球を投げました。『変化球、なに、投げてんねん』と言われましたけど(笑)。変化球をつい振っちゃうタイプだったのに、見切れるようにもなって成長してました。対戦できて楽しかったです」。
古賀は「ヒットを打てればよかったんですが。連覇してくれ」と頼んだと言う。

そしてもう一つ。伊万里の4番、キャッチャーの梶山勇人は翼状片という目の病気を患っている。白目を覆っている結膜が黒目に入り込んでくる病気だ。悪影響のある紫外線予防のために屋外ではサングラスを着用する。今日は苦しいエースをリードし、打っては2安打を放って気を吐いた。

ゲームを終わって笑顔だった。「9回にヒットを打って、スタンドを見たら泣きそうになりました。この病気に小学校3年の時に母が気づいてくれて、5年生でサングラスを買ってくれました。父が野球チームのコーチをしていて、仲間に病気のことを話してくれました。サングラスをかける事がなかったら甲子園のこの場にいなかった」と両親に感謝した。
大味な試合展開だったが、ゲーム後のインタビュールームには爽やかな笑顔があった。
(文・清水岳志)