3年連続100敗チームと約54.7億円で2年契約「双方にメリット」 ヤクルトからポスティングシステムを通して米移籍を目指…

3年連続100敗チームと約54.7億円で2年契約「双方にメリット」

 ヤクルトからポスティングシステムを通して米移籍を目指していた村上宗隆内野手。交渉期限となる21日(日本時間22日)に発表されたのは、3年連続100敗を記録したホワイトソックスとの2年3400万ドル(約54億7000万円)という契約だった。強豪チームとの長期契約が噂される中、再建を図るチームとの短期契約に驚いた人も少なくないだろう。この選択には、はたしてどんな狙いがあったのだろうか。球団OBでもある井口資仁氏の視点を聞いた。

 井口氏がまず、狙いの1つとして挙げるのが「制約の少なさ」だ。再建真っ只中のホワイトソックスは若手選手が多く、2026シーズンに地区優勝、あるいはポストシーズン進出を狙うのは難しい。もちろん、プロとして1試合でも多くの勝利を目指すが、優勝が現実的な目標となるのは3〜5年先のこと。今は選手たちの成長を促す時期ということは、球団幹部も納得の上だ。

 移籍1年目となれば、村上も新たな環境にアジャストしなければならない。その時、周囲からのプレッシャーや自身の焦りから結果を求め、付け焼き刃の調整を繰り返しても意味はない。井口氏は「今までやってきたことを、そのまま出せるチーム」「少ない制約の中で、しっかり自分のことに向き合ってできるチーム」だと考えている。言ってみれば、大谷翔平選手がエンゼルスを選んだ状況に近いのかもしれない。

 2年という短期契約について、井口氏は「村上選手と球団と双方にメリットがある契約だったのではないか」と見ている。

一部球団幹部からの噂「長期契約を結ぶのリスクがある」

 今オフのFA市場では、同じくポスティングシステムを通して米移籍を目指す巨人の岡本和真内野手と村上が比較されることが多かった。村上のパワーは大きな評価を得る一方、三振率の高さや内角速球への対応などが疑問視されることが多く、一部の球団幹部は「長期契約を結ぶのリスクがある」と話していた。

 そこで今回の2年契約であれば、村上はヤクルト時代と同様の活躍をすれば、2年後にフリーエージェント(FA)となった際、27歳で確固たる実績を引っさげて長期大型契約を結べることになる。ホワイトソックスとしても、チーム状況に次第で2年目途中にトレード要員として考えることもできる。

 逆に、思うような活躍をできなかった場合、チームは契約延長をせず、袂を分かてばいいだけだ。村上としても大型契約に縛られることなく、新たな環境で再スタートを切りやすくなる。

 そして、井口氏が最大のポイントとみるのが「WBCへの出場許可」だ。

 22日(同23日)の入団会見で、村上は「出たいと思っている。WBC(出場を)前提で考えていた」と明かし、クリス・ゲッツGMも「出場する予定だ」と許可を明言。井口氏は「WBC出場を含め、条件面でホワイトソックスが大きく融通を利かせたのでしょう」と話す。米報道によれば、村上の契約にはMVPや新人王を受賞した場合などに発生するインセンティブ(出来高)が数多く付帯しているという。

 はたしてこの契約が正しかったのか否か。その答えは2027年シーズン終了後に分かるはずだ。(佐藤直子 / Naoko Sato)