元巨人監督の高橋由伸氏(50)が21日、盛岡市内で行われた「スタンフォードからのメッセージ」をテーマとした教育カンファレ…

元巨人監督の高橋由伸氏(50)が21日、盛岡市内で行われた「スタンフォードからのメッセージ」をテーマとした教育カンファレンスで特別講演を行った。約800人を前に、幼少期から巨人監督時代まで、野球人生を振り返った。終盤の質疑応答時には、ソフトバンクからドラフト1位指名を受けた米スタンフォード大・佐々木麟太郎内野手(20)がサプライズで登場、会場を沸かせた。

   ◇   ◇   ◇

「うぬぼれるな」。高橋氏は小6時にチームメートから言われた衝撃的な言葉を今でも覚えている。「自分は意識がなくても、そういう風に見られることがある。人生で初めてそういったものを感じた瞬間でしたし、その後の人生にも大きく影響した出来事でした」。周りからの“見え方″を気にするきっかけとなったという。

高校は進学校でもある桐蔭学園(神奈川)に進んだ。1年からレギュラーをつかみ、甲子園でも存在感を見せた。「お前は常に見られているぞ」。当時、監督だった土屋恵三郎氏(現星槎国際湘南監督)の言葉は、高橋氏をさらに隙のない選手へと成長させた。「みんなから認められる行動を取っていかないといけないんだなと。もちろん、野球の指導もたくさんしてもらいましたけど、監督からのこの言葉が一番、心に残っています」と振り返った。

慶大(東京6大学)では主将も務めた。さらに、リーグ戦通算23本塁打は、いまだに破られていない最多記録だ。高橋氏の同級生で、当時エースだった慶大・林卓史教授もコーディネーターとして講演会に登壇。「マウンドでピンチを招くと、その度に心配して、ライトから猛ダッシュで来てくれたり、行動で示してくれるタイプでした」と明かした。高橋氏は言葉以上に、姿勢で見せてきた。

「スポーツでのリーダーは監督の考え方を理解して、それをどうチームに浸透させるか、いい影響を与えるかが在るべき姿だと思っています。まとめる力はもちろん大事ですけど、みんなが同じ方向を向けるように、影響を与えることがリーダーにとって必要なことだと思います」。

「置かれた場所で咲きなさい」。その言葉通り、巨人入団直後は自分の居場所を求め、変化を恐れなかった。守備に力を入れ、率を残せる選手を目指した。度々けがにも悩まされたが、リハビリも全力だった。「与えられたものに最善を尽くすことはチームのためにも、自分のためにもなると思いました。やるべきことをクリアしていくと次が見えてくるので、この言葉を大事にしています」と語りかけた。サプライズで登場した佐々木と握手を交わし、訪れた観客には熱いメッセージを送った。

◆高橋由伸(たかはし・よしのぶ)1975年(昭50)4月3日生まれ、千葉市出身。桐蔭学園、慶大を経て97年ドラフトで巨人を逆指名して1位入団。03年の11打数連続安打、07年の先頭打者本塁打シーズン9本はプロ野球記録。ベストナイン2度、ゴールデングラブ賞7度。04年アテネ五輪日本代表。通算1819試合、1753安打、986打点、321本塁打、打率2割9分1厘。15年に現役引退し、16年から18年まで巨人監督を務めた。180センチ、87キロ、右投げ左打ち。