1984年ロサンゼルス五輪柔道男子無差別級金メダリストで、2年前に負った頸髄(けいずい)損傷の大けがから復帰した日本オ…

 1984年ロサンゼルス五輪柔道男子無差別級金メダリストで、2年前に負った頸髄(けいずい)損傷の大けがから復帰した日本オリンピック委員会(JOC)前会長の山下泰裕氏(68)が18日、神奈川県平塚市の母校・東海大の湘南キャンパスで会見を行った。

 体育学部武道学科特任教授として、約30人の学生が履修している柔道論を週1度担当。車いす生活で首から下がほとんど動かせないため、人の手を借りて水分補給し、時には鼻水を拭いてもらって講義してきた。競技成績だけでなくスポーツ界全体の先頭に立ってきただけに、事故後の姿を公の場に見せる怖さや勇気は計り知れない。それでも「昔なら、さらけ出したくないと思ったかもしれないが、今はそれ以上に生かされているという気持ちが強くある。ありのままの姿をさらけ出して、障がい者のことを身近に感じてもらえたら」ときっぱり語った。

 会見では、JOC会長在職中の2023年10月に訪れた温泉施設の露天風呂で意識を失い、約2メートルの崖から転落したことなど当時の状況を説明。腰骨を頸椎に移植する手術など4つの病院で治療とリハビリを行って9月に退院し、現在は自宅近くの施設で生活しているという。

 顔つきや発する言葉の力強さは以前と変わらず、報道陣からの質問に約1時間応じた山下氏。最後は「障がいをお持ちの方や、子どもからお年寄りまで、多くの人がスポーツを通して豊かな人生を歩めるように」と願った。