◆プロボクシング ▽WBA世界バンタム級(53・5キロ以下)タイトルマッチ12回戦 〇正規王者・堤聖也―暫定王者・ノニト…
◆プロボクシング ▽WBA世界バンタム級(53・5キロ以下)タイトルマッチ12回戦 〇正規王者・堤聖也―暫定王者・ノニト・ドネア●(17日、東京・両国国技館)
WBA世界バンタム級正規王者の堤聖也(29)=角海老宝石=が、王座統一に成功した。世界5階級を制覇したWBA同級暫定王者ノニト・ドネア(43)=フィリピン=を2―1の判定で下した。盛り返し、後半にポイントを重ねてレジェンドを撃破。試合後、WBC同級王者・井上拓真(29)=大橋=との統一戦、元4階級制覇王者・井岡一翔(36)=志成=との対戦を熱望した。
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「ホンモノをぶっ倒した極上のバッタモン、堤聖也です」。レジェンドを超えた王者は、リング上で叫んだ。「負ければ終わり。勝てば次につながる」と覚悟を決めて上がったリングで、未来を切り開いた。
5階級制覇王者とバチバチに打ち合った。4回、ドネアの右ストレートで鼻の頭をカット。追撃の右アッパーで一瞬膝が折れたが、心は折れなかった。空を切ったドネアの必殺・左フックが、恐怖を運ぶ。それでも前へと足を運び、意を決した連打をたたきつけた。「負けの流れが出来上がっていた。でも僕、負けの流れの試合を経験してきたから『頑張れ、オレ』って言い聞かせながら頑張った」。無尽蔵のスタミナと気力で、勝利をつかみ取った。試合後は腫れ上がった鼻で会見に臨み「折れてますよね。人間の正しい鼻をしてないので。5、6ラウンドのどこかで折れたなぁと思った」と苦笑した。
昨年10月、高校時代から背中を追い続けてきた当時のWBA王者・井上拓真に判定勝ちし、王座を獲得した。今年2月の初防衛戦では、高校時代からの盟友・比嘉大吾(志成)とダウンの応酬の激闘の末にドロー防衛を果たした。試合後「2、3年前からずっと痛かった」という両目を手術。8月上旬から約1か月、単身武者修行のためメキシコ・グアダラハラへ向かった。バイクに乗った2人組にスマホを強奪され、朝8時集合と言われてジムに行くと2時間待ちぼうけを食らわされた。それでも「知らない環境で、全部が刺激だった」とかけがえのない財産を得た。
目標とするのは「4団体統一」でのバンタム級完全制覇だ。「他団体との統一戦をやっていきたい」とWBC王者となった拓真との再戦&統一戦に意欲。さらに「レジェンドがバンタムに上げてきた。統一戦が決まらなければぜひ挑戦を受けたい。統一戦を差し置くぐらいワクワクする存在」と、大みそかにWBA挑戦者決定戦に臨む井岡との対戦も切望した。24日には、30歳の誕生日を迎える。「積み重ねた自分を信じて、自分の心に持つピストルを信じて、もっともっと強いボクサーでありたい」。ヴィンテージ(年代物)を愛するアメカジ王者の、新たな挑戦が始まる。(勝田 成紀)
◆堤 聖也(つつみ・せいや)1995年12月24日、熊本市生まれ。29歳。中2でボクシングを始め、九州学院ではインターハイや高校選抜など最高成績は3位。平成国際大を経て、2018年3月にプロデビュー。19年にワタナベジムから角海老宝石ジムに移籍。22年6月に日本バンタム級王座を獲得し、4度の防衛に成功。24年10月、井上拓真(大橋)に判定勝ちしてWBA世界バンタム級王座を獲得。身長166センチのスイッチヒッター。