◆プロボクシング ▽WBA世界バンタム級(53・5キロ以下)タイトルマッチ12回戦 〇正規王者・堤聖也―暫定王者・ノニト…

◆プロボクシング ▽WBA世界バンタム級(53・5キロ以下)タイトルマッチ12回戦 〇正規王者・堤聖也―暫定王者・ノニト・ドネア●(17日、東京・両国国技館)

 WBA世界バンタム級王座統一戦は、正規王者の堤聖也(29)=角海老宝石=が、世界5階級を制覇した同級暫定王者のノニト・ドネア(43)=フィリピン=を2ー1の判定で下して、王座を統一し、2度目の防衛に成功した。ジャッジ2人がそれぞれ115ー113、117ー111で堤を支持。3人目が116ー112でドネアを支持した。

 リング上のインタビューでは4回にまともにパンチを浴びふらついた時点で「負けの流れが出来上がった」と覚悟を固めたことを明かし「頑張れ、頑張れ俺って自分に言い聞かせながら頑張りました。皆さんの声援のおかげです。ありがとうございました」と観客に感謝した。レジェンドのドネアから警戒していた左フックを食らい「これがレジェンドのパンチかと。やっている最中は楽しむ余裕はなかったですけど、終わってみれば楽しかった気もします。めっちゃ強かったです」と振り返った。しぶとさを見せての防衛に「目標としては他の団体の統一戦がある」と野望を口にした。

 「倒されても立ち上がって倒し返せばいい。勝つために、しっかり戦えばいい」との覚悟で上がったリングで、5階級制覇王者とバチバチに打ち合った。「負ければ終わり。勝てば次につながる」。不退転の決意で挑んだ勝負を制し、未来を切り開いた。

 昨年10月、高校時代から背中を追い続けてきた当時のWBA王者・井上拓真(大橋)に判定勝ちし、世界王座を獲得。今年2月の初防衛戦では、高校時代からの盟友・比嘉大吾(志成)とダウンの応酬の激闘の末にドロー防衛を果たした。試合後に「2、3年前からずっと痛かった」という両目の手術を受け「休養王者」に認定された。手術後は1週間ほどで体を動かし始めた。8月上旬から約1か月、単身メキシコ・グアダラハラへ向かい武者修行を敢行。「知らない環境で、全部が刺激だった。知らないことを知っていく、新鮮な1か月間だった」。当地のジムではWBO同級王者クリスチャン・メディナ(メキシコ)らとスパーリングを重ね、充実の時間を過ごした。

 ドネア戦に向けて大橋ジムに出稽古に行った際には、ドネアに2度勝利している世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)から助言を受けた。ドネアと向き合った時の感覚やパンチの質などについて質問し、「僕に当てはめるとすごい差が生まれてしまうと思うが、実際に聞けただけでもすごく大きかった」と収穫を得た。

 目標とするのは「4団体統一」。比嘉と引き分けたWBA休養王者アントニオ・バルガス(米国)との団体内統一戦、WBC同級王者となった拓真との2団体統一戦、大みそかにWBA挑戦者決定戦に臨む4階級制覇王者・井岡一翔(志成)との防衛戦など、オプションは広がる。観戦に訪れた井上拓真の前でレジェンドを超えた堤が、バンタム級戦線の主役に躍り出た。