フィギュアスケートの全日本選手権(東京・代々木体育館)は19日に開幕。今季新たにアイスダンスのカップルを結成した紀平梨…
フィギュアスケートの全日本選手権(東京・代々木体育館)は19日に開幕。今季新たにアイスダンスのカップルを結成した紀平梨花=トヨタ自動車=、西山真瑚(共に23)=オリエンタルバイオ=が、このほどインタビューに応じ「りかしん」として初挑戦の全日本へ意気込みを語った。女子シングルで19、20年女王の紀平は、5季ぶりに全日本の舞台に復帰。2030年の五輪出場を目指し、まずは日本一に挑む。
紀平が、西山との新カップルで大舞台に戻ってくる。今年9月、「りかしん」としてタッグ結成を電撃発表。11月の西日本選手権で、全日本出場を決めた。共に胸を躍らせる。
紀平(以下、紀)「戻ってきたと言うより、新しい挑戦を始めたという感覚。また新しく目標を持って頑張ることができ、今はすごくうれしい気持ちです」
西山(同、西)「僕は、梨花ちゃんを全日本の(表彰台の)真ん中に持っていってあげたいという思いがあります。彼女にはやはり、そこが似合う。早く(優勝へ)行けるように、努力していきたい」
苦難を経た2人だ。右足首痛により2季全休した紀平は、今季も完治ならず。26年ミラノ・コルティナ五輪挑戦を断念した。西山は7月に、田中梓沙とのカップル解散を突如発表。五輪シーズンに、一度は1人になった。ただ、カナダで拠点が同じことから意気投合。希望の光を見いだした。
紀「毎日目標に向かって過ごしていることが当たり前でしたが、けががなかなか治らず悩んでいる時期はいろいろと悪い方向にもたくさん考えてしまい、暗い自分になっていました。ただそれも、向き合うことをやめなかった証拠かなと。今は目標に向かって努力でき、毎日成長を感じられることがどれだけありがたいかをそういう時間を過ごしたからこそ感じています」
西「僕も解散してから夏の間は、路頭に迷っていました。五輪の夢は諦めきれないけど、相手がいるのかという部分もあって。一度、暗闇の中に放り込まれた感覚でした。こうして今季、大会に出られること自体が奇跡。梨花ちゃんには本当に感謝ですし、このご縁があってよかったです」
実は西日本選手権の時、紀平はシングル用のスケート靴で試合に臨んでいた。結成から約1か月、異例といえるチャレンジだった。
西「パートナーがシングルブーツで競技会に臨むのは、僕自身初めてでした。アイスダンスは、お互いの距離が近くないといけません。ブレードが当たりやすい怖さはありました。ただ、梨花ちゃんは本当に研究熱心で、動画を見たりしてすぐに出来るようになる。成長スピードが早いので、やりやすかったです」
西日本選手権は3位で、五輪への可能性は消滅した。ただ、歩み出したばかりの「りかしん」。2人の夢舞台への挑戦は続く。
西「全日本の頂点に立つのがファーストステップだと思います。目指している目標は、2030年の五輪に出場すること。4年間、努力していきたいです」
紀「私はアイスダンスで戦えるようになるまで、学び尽くしたい。西山選手が持っている力をもっと輝かせられるような滑りに、早くもっていきたいです。一番大きい目標はオリンピック。2030年に向けて、コツコツ積み重ねていきたいです」
◆全日本選手権のアイスダンス展望 昨季全日本を制し、世界選手権代表の「うたまさ」こと吉田唄菜、森田真沙也組(木下アカデミー)が優勝候補。今季新たにカップルを組んだ櫛田育良(木下アカデミー)、島田高志郎(木下グループ)組も今月に国際大会デビューを果たすなど、力をつける。アイスダンスは個人での五輪出場枠はなく、団体要員として1組が代表に選出される。五輪出場には、国際大会でのリズムダンスとフリーの技術点合計85点以上が必要で、吉田、森田組のみがこの条件をクリアしている。
◆アイスダンス 「氷上の社交ダンス」と呼ばれ、音楽に合わせたターンやステップ、リフトで表現力や同調性などを競う。76年インスブルック五輪から正式種目になり、日本勢の最高位は06年トリノの渡辺心、木戸章之組と、18年平昌の村元、リード組の15位。欧米やロシアが表彰台の常連。シングル、ペアはショートプログラム(SP)とフリーで争うが、アイスダンスはリズムダンスとフリーダンス。
◆紀平 梨花(きひら・りか)2002年7月21日、兵庫・西宮市生まれ。23歳。5歳でフィギュアスケートを始める。14歳だった16年9月のジュニアGPシリーズ・スロベニア大会で、史上7人目の3回転半ジャンプ成功者。シニアに転向した18年には、05年浅田真央以来となるGPデビューシーズンでのファイナル制覇を達成。19、20年全日本選手権、四大陸選手権優勝。155センチ。
◆西山 真瑚(にしやま・しんご) 2002年1月24日、東京都出身、23歳。6歳から競技を始め、中学3年でカナダ・トロントに渡りクリケットクラブで羽生結弦さんらと練習。2019、20年全日本ジュニア優勝。23年からアイスダンスで田中梓沙とカップルを組み、同年と24年に全日本2位。25年アジア大会銅メダルも7月に解散。9月に紀平梨花との新カップルを結成した。