サッカーの2026年北中米W杯開幕(6月11日)まで、11日であと半年となった。11月の親善試合で代表デビューしたオー…

 サッカーの2026年北中米W杯開幕(6月11日)まで、11日であと半年となった。11月の親善試合で代表デビューしたオーストリア1部ザルツブルク所属のMF北野颯太(21)が、このほどスポーツ報知のインタビューに応じ、W杯出場への思いを語った。海外初挑戦から5か月で代表入りした超新星は、し烈なメンバー争いに割って入り、初戦に出場すれば日本史上年少4位の21歳10か月2日でのW杯デビューを狙う。(取材・構成=森口登生)

 目まぐるしい一年を振り返る北野の表情は、充実感に満ちていた。今季はC大阪で開幕を迎えると6月までに19試合4得点4アシスト。活躍が認められ、世界から有望株が集うザルツブルクから声がかかった。移籍後も22試合4得点5アシストと結果を残すと11月、日本代表に初招集された。

 「正直びっくり。(海外初挑戦から)5か月で代表に入れるとは思っていなかった。欧州に出ることが代表にもつながるんだなと感じた」

 11月14日の親善試合ガーナ戦(2〇0、豊田ス)で後半31分から代表デビュー。豊富な運動量と相手DFの背後を突く攻撃センスを随所に見せた。これまで「夢」だった「W杯で活躍すること」は明確な目標に変わった。開幕まであと半年。意欲は日々、増している。

 「次の大会を目指すぐらいのイメージだった。ただ11月に代表に入れて、今回のW杯をしっかり狙えるところまで来たと思っている。チャンスをつかめるかは、これからの自分次第」

 成長を求めて渡ったオーストリアでは、Jリーグとの違いに戸惑いながらも、成長の糧にしてきた。

 「競技が違う感覚だった。日本の方が技術はあるけど、速さ、強さ、身体能力はこちらの方が高い。だから、選手として幅も広がった。身体能力が高い人たちと毎日練習することが、代表での活躍につながる。技術も忘れないように、組み合わせながらやっている」

 リーグ序盤にはタックルを受けて右足首を負傷した。ソックスには血がにじみ、担架で運ばれて途中交代。5針を縫う裂傷だった。世界で戦う上で必要な強度と、その必要性を身をもって感じた。

 「(裂傷は)めっちゃ痛かった(笑)。でも、いい学び。日本では奪えていた距離がこっちだと遠かったり。足を踏む、蹴るも当たり前みたいな感じなので、感覚の違いは苦労した。一時は対応できずにメンバー外もあった。その時は、練習中から『とにかくいけ』と言われていた」

 チームに適応して結果を出すと代表に招集された。緊張、焦りもあった反面、手応えも覚えた。

 「練習でも、ガーナ戦でもプレッシャーが早い。緊張もあったので、もっと落ち着いてやりたかった。もう1、2段階レベルアップは必要だけど、焦らず自分を出せれば、やれるという感覚もある」

 海外挑戦と代表入り。開幕前から口にしてきた2つの目標を、この1年でかなえた。先を見るのではなく、「今をやり続ける」ことでクリアしてきた。

 「うまく行き過ぎな気もするけど、すごく刺激的な2025年。ずっと今やらないとっていう考えでやってきた。そっちの考えの方が好き。なるようになると思っている。今できることをしっかりやって、それで達成できなくてもなるようになっていると思っている」

 日本代表はW杯1次リーグでオランダ、チュニジア、欧州プレーオフ(ウクライナ、スウェーデン、ポーランド、アルバニア)勝者との対戦が決まった。

 「ワクワクしている。どの国も強いと思う。まずはしっかり所属チームでアピールして、その舞台に立てるように頑張りたい」

 ライバルは多いが、森保監督も「フェアな競争がこれからもっと始まる」と門戸を開いており、結果を出し続ければ逆転でのメンバー入りの可能性も十分。若さ、勢いだけではなく、「今」を大切に努力を積み重ねてきた21歳が、世界が熱狂する舞台への切符をつかむ。

 ◆北野 颯太(きたの・そうた)2004年8月13日、和歌山・有田市生まれ。21歳。中学からC大阪の下部組織に加入。U―23チームで出場した20年10月25日のJ3、G大阪U―23戦でクラブ最年少16歳2か月12日で公式戦デビュー。22年2月にトップ昇格。J1通算68試合8得点を挙げ、25年6月にオーストリア1部ザルツブルクへ完全移籍。11月の国際親善試合で日本代表に初招集された。172センチ、60キロ。利き足は右。

 ◆W杯直前のアピールでメンバー入りした主な選手(所属は当時)

 ▽FW巻誠一郎(千葉) 05年の「E―1選手権」でA代表に初招集。翌06年も国際親善試合で得点を重ね、同年のドイツW杯のメンバー入り

 ▽FW大久保嘉人(川崎) 10年8月就任のザッケローニ監督体制では、12年2月に代表選出されて以降、招集外が続いた。しかし13年季に26得点で得点王に輝き、14年も絶好調をキープすると同年のブラジルW杯でサプライズ招集

 ▽FW町野修斗(湘南) 22年7月の「E―1選手権」でA代表デビュー。大会3得点を挙げてアピールに成功。J1でも得点を量産すると、DF中山雄太の負傷辞退による追加招集で同年カタールW杯のメンバーに滑り込んだ

◆取材後記 初めての海外生活を「正直めっちゃきつい」と言う北野の表情は明るい。

 悪戦苦闘しているのは、言葉の壁。C大阪時から自主的に英語を学び、現在も週2回語学の授業を受けるが「全然。ホンマにいける(習得できる)気しない」と頭をかいた。

 最近は渡欧後初の自炊にも挑戦した。第1弾はシチューで「キューブを使って作って、おいしかった。やってみたら楽しい」と満足した様子。「シチューいけたら、いけるって聞くので(笑)」と次回はカレー作りを計画中だ。

 「めちゃくちゃさみしがり屋」と自己分析する北野だが「帰りたいとか言ってられない」。気立ての良い“関西の兄ちゃん感”は残しつつ、ピッチ内外で成長できる環境でたくましさが増したように見えた。(登)