今年の阪神ジュベナイルフィリーズ・G1(12月14日、阪神競馬場・芝1600メートル)は、どんなドラマが生まれるのか。…

 今年の阪神ジュベナイルフィリーズ・G1(12月14日、阪神競馬場・芝1600メートル)は、どんなドラマが生まれるのか。過去の名勝負・20年勝ち馬のソダシ(吉田隼騎手が騎乗)を振り返る。サトノレイナスとの競り合いを鼻差でしのいで優勝。無傷の4連勝で、1979年に日本に初めて誕生した白毛馬として、G1初制覇となる歴史的白星を挙げた。

 真っ白な馬体に闘争心が乗り移った。最後の直線。好位追走から抜け出しにかかるソダシに後続が一気に襲いかかる。外のメイケイエールを振り払ったと思った直後、内からサトノレイナスが伸びてきた。「何とかしのいでくれ!」。吉田隼が祈りを込めるように全身で手綱を押し、右ステッキを振り下ろすと、白い馬体は再び“輝き”を増す。離れた状態で馬体を並べたゴール板。わずか7センチの差で、JRA史上初となる白毛馬によるG1勝利をつかんだ。

 「分からなかった。同着でもいいなという気持ちでした」。レース後、須貝調教師はそう切り出した。20年9月5日の札幌2歳Sで白毛馬として初の芝の重賞Vを飾ったあとは栗東へ。短期放牧を挟んでの調整が主流のなか、3か月もずっと手元に置く異例の調整を選択した。4週連続で吉田隼が調教に騎乗する攻めのメニューを組めたのも心身両面でのタフさがあるからこそだ。その一方で、「賢い馬。人を覚えるのが得意」と須貝師は笑顔で素顔を明かす。馬房の前へ行くと、首を出してじゃれてくる。そんな姿は癒やしの時だ。

 “白い怪物”と言われた芦毛のゴールドシップが15年の有馬記念を最後に引退した時に「また、こういう愛される馬をつくれるように努力します」と口にした。この日も前走のアルテミスSに続き、手綱やバンテージ、頭絡や覆面などをすべて白に統一。ドレスアップした姿で無傷の2歳女王となったことが、何より“約束”を守ったことになる。

 続く桜花賞は1分31秒1の驚異的なレコードV。その後も4歳時に牡馬相手のフェブラリーSで牡馬相手に3着に入るなど、ダートとの“二刀流”でマルチな強さも発揮。古馬となってからは昨年のヴィクトリアマイル1勝のみだったが、常に上位争いを続け、競馬ファンは“つよかわ”ホースの一挙手一投足に目を奪われた。22年ヴィクトリアマイル勝利後には米ニューヨーク・タイムズ紙で特集が組まれるなど、競走馬ではかつてのハイセイコーやオグリキャップに匹敵する人気を誇った。

 サンデーサイレンス産駒の祖母シラユキヒメが96年に突然変異で白毛として誕生。母ブチコは同じ白毛でも、胴に父キングカメハメハと同じ鹿毛のぶち模様が入っている。全妹のママコチャは鹿毛。「シラユキヒメ一族」ではソダシ姉妹のほか、メイケイエール(鹿毛)、ハヤヤッコ(白毛)、ユキチャン(白毛)が重賞を勝っているが、必ずしも真っ白な馬体をしているわけではない。

 23年10月1日に電撃引退。23年6月の安田記念で7着に敗れた後、脚部不安を発症。くしくも全妹のママコチャがスプリンターズSでG1初勝利を挙げた日と同日、希代のアイドルホースが現役生活に別れを告げた。現在は繁殖牝馬になり今年1月30日、第1子となる牝馬を北海道安平町のノーザンファームで出産。父はG1・6勝を挙げ、22、23年と2年連続で年度代表馬に輝いたイクイノックス。毛色は母と同じ白毛ではなかった。