阪神・高橋遥人投手(30)の地元・静岡に、左腕の復活を支えたラーメン店がある。度重なる5度の手術を乗り越え、今年7月に…

 阪神・高橋遥人投手(30)の地元・静岡に、左腕の復活を支えたラーメン店がある。度重なる5度の手術を乗り越え、今年7月に完全復活。そんな彼を支えたラーメン店を訪ねた。

 静岡県沼津市にある「濃厚辛味噌ラーメン からみそや」の店主・志水啓修さん(31)は、高橋が常葉橘中学野球部に所属していた頃の1学年上の先輩だ。2人はそのまま中高一貫の常葉橘高に進学し、2012年の夏の甲子園にともにベンチ入り。志水さんは2番センターで出場し、高橋は2年生ながら投手として背番号10をつけた。福井工大福井との初戦で敗退したものの、高橋は2番手で4回1/3を無失点に抑えた。

 高橋は2年生から野球部の寮に入った。夜になると志水さんの部屋にもう1人の部員とともに集まり、志水さんが「パーティーだ!」と言って明治「スーパーカップ」を食べるのが唯一の楽しみだったという。翌朝になると、高橋は必ず「ひろのぶさん、おはようございます、朝です」と眠そうな目で起こしに来てくれた。

 中学時代の高橋の印象について志水さんは「すごく小さくて細くて、赤ちゃんみたいでとにかくかわいかった」と振り返る。「今もそうですが、当時はもっとベビーフェイスで、本当に赤ちゃんみたいだった。いつも控えめで陰から僕らを見ているようでした」と、今の控えめな姿とも重ねる。高校時代については「高2から身長が一気に伸びて球がめちゃめちゃ速くなった」と驚き、「フォームも今よりもっとダイナミックで、リリースがギリギリまで見えなくて手元でドカーンと来る」と成長を語った。

 その後、高橋が亜細亜大へ進み、阪神からドラフト2位指名を受けたことについても「驚かなかった」と志水さんは話す。

一方の志水さんは高校卒業後、プロボクサーを目指してプロテストに合格し、ボクサーとして活動しながらラーメン店でアルバイト。その経験からラーメン店に転身し、2018年に生まれ育った沼津で念願の店を開業した。翌年からはオフシーズンになると高橋が必ず店に顔を出すようになった。

 高橋が毎回注文するのは人気No.1の「からみそやスペシャル」(1450円)。濃厚なスープにひき肉、味玉、もやし、キャベツ、海苔3枚、ネギ、チャーシューが入った太麺の一杯で、ライスが無料で付く。店内の壁には、2019年から毎年訪れていることを示すメッセージ付きサインがずらりと並ぶ。

 「先輩おいしかったです」

 「大好きです」──。

 2023年年末の色紙には「そろそろ投げます」と、決意表明のような言葉も残されている。店内の色紙からも復活への歩みが感じ取れ、遥人ファンにとってたまらない空間だ。志水さんは、高橋が来店するとあえて野球以外の話を振り、恋愛トークなどで盛り上げながら励まし続けてきた。

 今季の高橋は8試合に登板して3勝1敗、防御率2.28と復活。来季はリーグ随一の投手陣の中でローテーション入りを狙う。志水さんは「一言で言えば本当に義理堅い。性格も抜群ですし、何よりプロの世界であれだけ結果を残している。幾度となくケガをして戦列を離れても必ず復活して結果を残す」と期待を寄せる。

 「これだけすごい選手になっても店に来てくれる。当時の遥人と何も変わらない。その心の持ちようを本当にリスペクトしています」と語る。5度の手術中も「すごく心配だったが、遥人のことだから多くの励ましが届いていると思い、負担にならないようこちらから連絡はしなかった。特に年上からだと返さないといけないと思うので」と、親心のように復活を見守ったという。

 最後に志水さんは「ワンシーズンを通してケガなく、年齢もちょうど30歳。中堅選手としてこれからも結果を残し続けてほしい。またオフに会えたらいいなと思います」と、“先輩”として静かに見守り続ける思いを口にした。

【濃厚辛味噌ラーメン からみそや】

静岡県沼津市白銀町487-103

(JR沼津駅から徒歩約10分)

営業時間:(月)11:00~14:00/(水~金)11:00~14:00・16:00~21:00/(土・日)11:00~14:00・17:00~21:00

定休日:火曜