◆明治安田J1最終節 岡山2―1清水(6日・アイスタ) ありがとう乾、ありがとう秋葉監督―。今季限りで退団する清水エスパ…

◆明治安田J1最終節 岡山2―1清水(6日・アイスタ)

 ありがとう乾、ありがとう秋葉監督―。今季限りで退団する清水エスパルスのMF乾貴士(37)が最終戦で涙の別れを告げた。同じく退任する秋葉忠宏監督(50)からキャプテンマークを託されフル出場。試合後は「こんな僕を応援し続けてくれてありがとうございました」と涙ながらに感謝を述べた。試合は岡山に1―2で敗れ、J1復帰元年は11勝11分け16敗、勝ち点44の14位で終了。来季は就任が決定的となっている現神戸・吉田孝行監督(48)の下で再出発する。

 感情がせきを切った。涙が自然にこぼれてきた。試合後のセレモニー。退団する選手を代表してマイクの前に立った清水・乾は「この問題児を拾ってくれたエスパルスの皆さん、ありがとうございました。ここを離れるのはつらいですし、もっとこのアイスタとファンの皆さんの前でプレーしたかった」と絞り出すように言った。4分間に及ぶラストメッセージ。鳴りやまない自身のチャントの中で、必死に言葉を紡ぎ続けた。

 粋な演出で送り出された。これまでFW北川航也(29)が先発を外れる際は副将が巻いてきたキャプテンマークを秋葉監督から託された。「誰からも文句はなかった。満場一致でした」と指揮官。本人は「なかなかやれるもんじゃない。一生懸命勝ちにいきました」。試合は敗れたものの、後半45分のFW高橋利の得点の起点になるなど存在感を発揮。37歳は今季チーム唯一にして自身のJキャリアでも初の全試合出場を達成した。

 元日本代表は22年シーズン途中にC大阪を退団。岡山での練習参加を経て、7月、清水への電撃加入が決まった。秋葉監督が就任した23年途中からはトップ下にコンバートされ主力に定着。毎年30試合以上に出場し、2年連続J2ベストイレブンなどプレーと陽性のキャラクターでチームの“太陽”であり続けた。「最低限の恩返しができたかな」と照れくさそうに笑った。

 シーズン中には引退も頭をよぎったというが、6月に38歳を迎える来季も現役を続ける。「こんな形で(引退)したくない。反町GMに『俺を見返してみろ』と言われたので絶対見返せるように頑張ります」と力強く宣言した。

新指揮官と再出発 乾と同じくチームを離れる秋葉監督は「スタジアムの空気感が大好きでした。愛情、熱量、情熱。This is エスパルス!」と代名詞のフレーズでサポーターに感謝を伝えた。清水を愛し、清水に愛された男たちが旅立ち、オレンジ軍団は来季新指揮官の下で再び歩き出す。(武藤 瑞基)