東京ヴェルディの城福浩監督(64)がシーズン最終戦へ、1ミリの妥協も許さぬ“JFKイズム”を全開にした。4日、最終節のガ…

東京ヴェルディの城福浩監督(64)がシーズン最終戦へ、1ミリの妥協も許さぬ“JFKイズム”を全開にした。

4日、最終節のガンバ大阪戦(6日・パナスタ)に向けてメディア対応。まずは前節のホーム最終戦・鹿島アントラーズ戦(0-1)での失点シーンについて問われた。後半29分、DF内田陽介がDFラインに戻したパスがフリーの相手の足もとに渡り、そこからカウンターを浴びたものだった。

次戦に向けたミーティングでは、鹿島戦の映像を見た。ただ、失点場面しか見せなかったという。その内田のパスミスについては、チームとしてボールを回せる距離感を保てていなかったことが背景にあったという。

「距離感を保つってことは、ボールを触らない選手のハードワーク、ポジションのハードワークが必要で、それをやったからこそのあの(前半のような優位な)試合だったと思いますけど、あのシーンに関してだけは交代選手が両チーム入ってちょっと時間が空いた。スローインからのリアクションが、あそこだけは距離感を取れなかった。そこから内田のパスミスがスタートしてる。それが一点。彼の致命的なミスであることは間違いないけれども」

そして、こう続けた。

「あそこだけは全員が歩いていたんですよね。それともう1つは、あの瞬間、プレーしてない選手が1人いたんですよ。じゃあ戦場で片足脱げたら、そこで靴を履こうとするのかと。我々と鹿島の差は、あそこで裸足でもアウト・オブ・プレーになるまでプレーを続けるか、それが気になってプレーをしない選手が1人いるか。ゲームの内容というよりも、その差が1位と15位の差じゃないかと。僕はそういうふうに結論づけている。あのシーンでプレーをしないという選択をしたってのは、僕が本当にあそこのピッチに立たせる心構えをうまく整えられなかったなという思いはあります」

当該選手はレフェリーに「靴が脱げています」と伝えたようだが、試合には何ら関係なかった。

城福監督も「僕が今まで世界のサッカーを含めて見てきて、片足脱げてもアウト・オブ・プレーになるまでプレーしているシーンは何回も見ていますけど、あのシーンでレフェリーが止めてくれるシーンは見たことないです」。内田のパスミスが致命傷とはいえ、それだけではなかった。その場面を分析すれば、チームの甘さやスキがあった。

長くJリーグで監督を務めるがゆえ、1つのプレーの怖さを知る。だからこそこの失点場面を深堀りし、選手間で共有した。

「1つのプレーでそのゲームの様子が変わってしまうっていうプロの怖さというか。それこそ日本で最上位のレベルの試合の怖さを彼らは思い知ったと思う。これは彼(内田)を責めるわけじゃなくて、もし我々が残留が確定してなかったら、あのプレーのあの状態で最終節、アウェーでガンバと試合をすることになるわけですよね。どれほどのものが失われる可能性があって、それはどれだけの人間の環境が変わるのか、ひょっとしたら選手生命、その長さの問題にまで影響するぐらいのものが1つ1つのプレーの中に含まれてるんだっていうことは、みんなが共有する上で、今回は幸い3合残して残留が決まっているので、そういう話ができるであって、もしそれが決まってなかったら僕はそんなこと言わなかったと思います」

そして迎える最終戦。最後まで反骨の指揮官は自分たちのサッカーをやり切る考えを強調した。

「少なくとも25年と全く同じメンバーで戦うことはあり得ないじゃないですか。通常考えて、それはスタッフ、選手含めて何らかの変化があるっていう意味では、今年いろんな難関をこのメンバーで乗り越えてきた。それを我々が何を目指してきたかを示せる最後の90分になると思う。それは大阪に来れる選手、来れない選手、ピッチに立てる選手、立てない選手いますけど、全員の思いを持って戦うべきだと思う。去年もね、最終節の京都に来てくれたサポーターが強烈だったのを覚えてますし、おそらく今回も来ていただけるサポーターも一緒に戦ってくれると思う。彼らの思いっていうのもしっかりピッチで表現できるようにしたい」

この時期となれば、来季に向けたチーム編成が同時進行で行われている。選手たちには、気持ちの揺らぎやプレーへの影響があってもおかしくない。

「もう来年のことは動いているんですよ。選手、スタッフうずまいている中でいかに集中させるか。ACL(出場権)なのか、優勝なのか、残留なのかっていう目標があれば、うごめきながらももう(試合に)集中しないと目標に達成できない。もううごめいているのは事実なので。その真っ最中に、今年やってきた総決算を出すという強い決意とか、一致団結したものを見せるという戦いになってくる。我々の総決算を出すという思いが、完全に(来年に向けた去就を)上回るような試合にしたいと思っています」

その名前にちなんで「JFK」と呼ばれる孤高の指揮官。妥協なきその姿勢が、リーグワーストの今季22得点(37試合)ながら、無失点試合17という堅守でJ1残留という結果へと導いた。13位以下は確定している中、強い気持ちで自分たちが大事にしてきたものを、最後まで見せつける。【佐藤隆志】