自転車競技BMXレーシングのアジア選手権が11月1~2日、愛知・名古屋競輪場BMXレースコースで行われ、畠山紗英(26…

 自転車競技BMXレーシングのアジア選手権が11月1~2日、愛知・名古屋競輪場BMXレースコースで行われ、畠山紗英(26)が女子エリートで2年ぶり2度目の優勝を果たした。10月の全日本選手権(茨城・つくば市)でもチャンピオンに輝いた国内女子のエースは、スイスから日本に拠点を移し、さらなる高みを目指している。今回、スポーツ報知のインタビューに応じ、今後の目標などを語った。(協力・日本自転車競技連盟)

 ―今年はJBMXF大東建託シリーズで5勝を挙げて年間チャンピオンを獲得。さらに全日本選手権とアジア選手権でも優勝と、申し分のない実績を残した。振り返って、どんなシーズンだった?

 「これだけ多く日本のレースに出場したのはエリートになってからは初めて。昨年まで拠点にしていたスイスから日本に帰ってきて、家族と過ごす時間が増えてプライベートの部分が充実していた。試合会場での声援も励みになったし、そういったことが結果につながったと思う」

 ―白鵬女子高を卒業後の2018年春からスイス・エーグルにあるワールドサイクリングセンターでトレーニング。文化が異なる環境での生活は、苦労があった?

 「向こうには日本にはない規模のコースがあったり、設備が充実していて、トレーニングの環境としてはピッタリだった。でも、空いている時間に遊びに行くことはなかったので、気分転換をするのが難しかった」

 ―帰国を決断した理由は?

 「スイスで6年間やって、自分の思うような結果を出せなくて行き詰まっていた。それに、パリ五輪を区切りとして考えていたのもある」

 ―帰国後、トレーニングで変化は?

 「去年の10月頃から、日本のナショナルトラックチームでストレングスコーチをしているフランス人のファブリース・ヴェットレッティという新しいコーチに見てもらっている。元々、BMX選手でフランス代表として世界選手権にも出場していた方。自分に合った内容のトレーニングができていると思う」

 ―具体的には?

 「ジムでのトレーニングとBMXに加えて、ロードとトラックもやるようになった。ロード練習は、インターバルや山登りを入れながら2時間ぐらい。初めの頃はきつかったけど、心肺機能が上がったと思う」

 ―練習はどこで?

 「平日は伊豆ベロドローム、週末はつくば市のBMXコースを走っている」

 ―来年も日本がベース?

 「日本を拠点にして、海外でのレースが続くときは遠征するつもり」

 ―来シーズン、目標にしているレースは?

 「今年は日本とアジアで結果を残せたので、来年はワールドカップや世界選手権で表彰台に立てるように頑張りたい」

 ―そのためには何が必要?

 「やっぱりスタートの強化。スタートで前に出られないと、自分の走りを出せない。ジャンプが自分の武器なので、それを生かすためにも安定したスタートを切ることが大切」

 ―オフの過ごし方は?

 「ベーグルを焼いたり、チーズケーキを作ったりと料理をすることが多い」

 ―85番の競技番号を付けている理由は?

 「母が『縁起のいい数字』と言って薦めてくれたから」

 ―そもそも、BMXを始めたきっかけは?

 「両親と兄2人がやっていた影響が大きい。2歳から乗り始めて、補助輪が取れたのは3歳。初めてレースに出たのは4歳で、平地でのレースだった。ほかにピアノや水泳をやったりしていたけど結局、BMXだけが残った」

 ―BMXの魅力とは?

 「乗ること自体が楽しい。年齢を重ねて悩むこともあるけど、初心に返って乗るようにしている。レースでは緊張したり転んだりしても、勝てばうれしい。その喜びを追い求めている」

 ―BMXをやっていてよかったことは?

 「いろんな場所に行けて、友達もできた。目標を達成する充実感を味わえるのもいいところ」

 ―畠山さんのように欧州で力を伸ばしたいと思っている選手に、何かアドバイスを。

 「周りの人とは英語でコミュニケーションすることになるので、英語の勉強はしておいた方がいいと思う」

 ―昨年のパリ大会、4年前の東京大会とオリンピックには過去に2度出場した。東京では準々決勝で転倒して鎖骨を骨折し、途中棄権。パリでは準決勝敗退(16位)。オリンピックに対して、今はどういう思い?

 「BMXが北京大会(2008年)で正式種目に採用されたときは9歳で、まだ『夢』としてとらえていた。年齢が上るにつれて『目標』になって、東京開催が決まったときにはうれしかった。だから、けがをしたのはショックだったし、2回目(パリ)はオリンピックがどんなものか分かっていても思い描いた結果を出せずに悔しかった」

 ―28年のロサンゼルス五輪に対しては?

 「年齢的にまだまだいけるし、そこを目指してレベルを上げていきたい。皆さん、応援よろしくお願いします!」

 ◆畠山 紗英(はたけやま・さえ)1999年6月7日、神奈川県寒川町出身。26歳。家族の影響で4歳からBMXレーシングをスタート。年齢別で3度(2009、11、12年)、世界選手権を制した。14年にレッドブル社とスポンサー契約を結び、14歳ながら同競技では国内初のプロレーサーに。21年東京五輪(24位)、24年パリ五輪(16位)出場。23年と25年にアジア選手権と全日本選手権を制した。162センチ、血液型A。

 ◆BMXレーシング 土や舗装された専用コースでタイムを争う競技。最大8人の選手が、大小様々なジャンプや「バーム」と呼ばれる傾斜のついたカーブを駆け抜けながら400メートルほどのコースを1周する。1レースは30~40秒ほどで、一瞬たりとも目が離せないエキサイティングな展開が魅力。オリンピックでは2008年の北京大会から正式種目に採用された。