◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」 腐れ縁だと思った。プロボクシング元WBC世界スーパーフライ級王者・徳山昌守(51)…

◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 腐れ縁だと思った。プロボクシング元WBC世界スーパーフライ級王者・徳山昌守(51)が会長を務める徳山ジム(東大阪市)が11月、西日本ボクシング協会などにプロ加盟を認められた。約20年前に現役時を取材した同い年の私もまた、今秋に編集デスクから取材部門に本格復帰。今度は「徳山会長」を取材することになる。先日、試合会場で久々に会うと「うちの選手が前座のスパーリングに出るから報知の1面に載せて」とむちゃな注文をされ、「絶対無理や」と苦笑した。

 同王座を計9度防衛した徳山の世界戦で特に印象深いのが2001年5月、ソウルでの前王者・チョウ仁柱(インジュ、韓国)戦。前日の予備計量では何者かに体重計を細工され、リミット52・1キロを大幅超過した徳山が激しく動揺していた。陣営が細工を見抜き、本計量はクリアしたが、現地取材していて「敵地」を痛感した。試合は5回、徳山が右ストレートで圧巻のKO勝ち。大阪で世界王座を初奪取した00年8月に続いてチョウを破り、国内ジム所属選手では当時4人目となる海外防衛を果たした。

 後日談がある。翌日のスポーツ他紙の1面は徳山の海外KO防衛。本紙だけ野球が1面で、徳山は「中面」での掲載だった。“全紙制覇”を逃した徳山は「報知だけ1面にしてくれなかった」と今でも恨み節。徳山が私を見てアピールするのには、そんな伏線もある。

 だが、ボクシングの現場にいる限り、まだ1面ゲットのチャンスは徳山にも私にもある。徳山ジムは来春にもプロ1号誕生の見通し。徳山にはいつか、自身を超えるような「打たせずに打つ」世界王者を育てあげ、日本中を熱狂させてもらいたい。その時は全力で1面に推すつもりだ。(ボクシング担当・田村 龍一)

 ◆田村 龍一(たむら・りょういち) 1998年入社。専門委員。