誠実な人柄がにじんだ。日本相撲協会は26日、福岡国際センターで大相撲初場所(1月11日初日、東京・両国国技館)の番付編成…
誠実な人柄がにじんだ。日本相撲協会は26日、福岡国際センターで大相撲初場所(1月11日初日、東京・両国国技館)の番付編成会議と臨時理事会を行い、関脇安青錦(21=安治川)の大関昇進を全会一致で承認。それを受け、福岡・久留米市の部屋で昇進伝達式が行われた。注目の口上は「大関の名に恥じぬよう、また、さらに上を目指して精進致します」とシンプルだった。その意図について、真摯(しんし)な土俵上と同様、真っすぐな思いが込められていた。
安青錦 自分らしく、自分が100%理解できる言葉でしゃべりたかった。難しい言葉で、10%理解できないままだと自分に合わないなと思って。シンプルで、自分が完全に理解できる言葉でしゃべりたかった。
これまで伝達式の口上では、四字熟語を入れる力士も多かった。大の里は「唯一無二」、豊昇龍は「気魄一閃(きはくいっせん)」を、大関昇進時も、横綱昇進時も用いた。ウクライナ出身の安青錦は、流ちょうな日本語を話すが、漢字、しかも四字熟語の引用となると、来日3年半では難度が高かった。だからこそ、過去の伝達式を映像で確認しても「自分は自分」と、誰かをまねしては、自分ではないと考えた。相手が大きいから、小さいからと、周りを気にして取るわけではない相撲と同様、自分ができることを背伸びせず言う、安青錦らしい口上だった。
口上は千秋楽翌日の24日夜に決め、この日の本番まで約1日半、何度ととなく練習してきた。その24日朝の優勝一夜明け会見では、口上について「親方に『自分で考えろ』と言われてしまって…。手伝ってほしいな(笑い)」と、師匠の安治川親方(元関脇安美錦)の手助けを求めていた。実際にその後、同親方と相談しながら、口上の言葉を選んだ。
「さらに上」。もちろん、横綱しかない。安治川親方は「横綱目指して強くなってほしい」と期待。安青錦も「大関に上がった以上、1番上を目指していきたい」と、堂々と話した。まだ21歳。欧州出身としては過去に琴欧洲、把瑠都、栃ノ心と、3人の大関がいた。ただ、欧州出身横綱はまだいない。新入幕も新三役の小結も、新関脇も、そして初土俵から所要14場所の新大関も、年6場所制となった58年以降では最速(付け出し除く)。この日の昇進伝達式は、欧州出身初の横綱という、新たな歴史をつくる日に向けた、布石なのかもしれない。【高田文太】