＜プロボクシング：WBC世界バンタム級王座決定12回戦＞◇24日◇トヨタアリーナ東京◇観客9227人WBC世界バンタム級…

＜プロボクシング：WBC世界バンタム級王座決定12回戦＞◇24日◇トヨタアリーナ東京◇観客9227人

WBC世界バンタム級2位井上拓真（29＝大橋）が3度目の世界王座獲得に成功した。同級1位那須川天心（27＝帝拳）と同級王座決定戦に臨み、12回を戦い3-0で判定勝ち。無敗の格闘家でボクシングを含めて54戦全勝だった那須川にキャリア初の黒星をつけた。24年10月、堤聖也（角海老宝石）に判定負けを喫し王座陥落して以来、約1年1カ月ぶりの再起戦で再び世界王者に返り咲いた。

　　　◇　　　◇　　　◇

スピードと勢いの那須川に対して、井上のキャリアと総合力が上回った。

1、2回は那須川がスピードをいかしながら左ストレート、ボディーブローを放った。しかし、3回から井上は那須川の攻撃スタイルを完全に把握した。リーチで13センチ長い相手の距離を封じて的確に右のノーモーションのパンチなどを決めた。

ディフェンス力の差が出た。井上は頭と首と体による上下の巧みな動きで、那須川のパンチを外す。逆に那須川は持ち前の反射神経を重視したディフェンス。非常に高い技術だが、見極められない時に、何度かパンチをもらっていた。

本人に聞かないとわからないが、井上にはボクシング一本できたものとしての意地もあったはず。兄の尚弥、父真吾トレーナーを含めた井上家の結束力もメンタルの強さにつながっていたように感じた。

ジャッジの2人が4ポイント、1人が6ポイント差と開いたが、実力差はそれほどあったわけではない。戦前に井上の5・5対那須川の4・5、わずか0・5ほどの差で井上の勝ちと予想した。まさにその通りで、両者ともに最高に仕上げてきた中で、ボクシングの経験の差が出た。（元WBC世界スーパーフライ級王者）